税金とは? 税金はいつ、 どうして生まれた【財政】

税金とは? 税金はいつ、 どうして生まれた


 みなさんは「税金」の話をよく耳にすると思います。社会生活を送るうえで、私たち国民はさまざまな税金を納めています。いったい税金とはどういうものでしょうか。いつからあるのでしょうか。私たちの暮らしに身近な税金について考えてみましょう。


【私たちの暮らしと税金について考えよう】

税金とは? 税金はいつ、 どうして生まれた - 税金とは豊かな社会生活を送るための『会費』 -
 私たちが健康で豊かな生活を送るために、国や地方自治体は病院や学校などいろいろな施設を作り、さまざまな公共サービスを行っています。
 身近な公共サービスとしては、教育や医療・介護、警察や消防、上下水道や道路建設、ゴミの収集などが挙げられます。これらの公共サービスを行うには多くの費用が必要です。その費用は私たちが納める税金でまかなわれています。
 人間はひとりでは生きていけません。多くの人々が助け合って社会の中で生きています。税金とは、国や地域社会を支え、そこで暮らす人々が豊かな社会生活を送るための〝会費〟と言えるでしょう。
 それでは税金はいつからあったのでしょうか?

- 古代エジプトやシュメールなど5000年以上も前からあった -
 税金(税)の始まりは労役(労働)の分担だと言われます。狩猟採集生活をしていた原始時代、人類は外敵の襲撃を防いだり、猛獣などから身を守ったり、さらには大きな獲物を仕留める時には力を合わせて行動していたと考えられます。つまり、共通の目的のために労役を分担していました。
 農耕時代になると集落が生まれ、分業化が進んでそれぞれの労役負担は物納となり、やがて共同社会(コミュニティ)や国を維持するための租税に進化していったと考えられます。
 古代エジプトのパピルス文書には、農民に対する厳しい税の取り立てや、神官などの特権階級は税を免除されていたことなどが記されています。
 紀元前3000年頃にシュメール人は都市国家を形成して神権政治を行っていましたが、守護神をまつる神殿には租税を保管する倉庫があったといわれます。

- 日本で最初の統一的な税制は701年の大宝律令による租庸調 -
 日本で税に関する最も古い記録は、3世紀ごろの中国の魏志倭人伝(ぎしわじんでん)で、「女王卑弥呼が支配する邪馬台国では、種もみや絹織物を貢物として納められていた」と記されています。
 日本で全国統一的な税制がスタートしたのは701年の大宝律令で、唐の税制をまねた租・庸・調という税のしくみができました。
 班田収授の法で6歳以上の男子に2段(2300㎡)、女子にその3分の2の土地が与えられ、収穫の約3%が税として徴収されました。これが「租」です。
 「庸」は都で年間10日間労働するか、もしくは成人男子1人当たり2丈6尺(約8m)の布を納めなければなりませんでした。
 「調」は布や絹織物、海産物など各地方の特産物を納める税です。このほか、地元で60日間、土木工事などで働く雑徭(ぞうよう)というものもありました。

- 室町時代に土地や家屋に税金。関所では通行税 -
 平安時代には大きな寺社や貴族の私有地である荘園が各地にでき、農民は荘園領主から年貢や夫役(労働)を課せられました。鎌倉時代になると幕府は荘園に地頭と呼ばれる土地管理の役人を派遣し、厳しく年貢を取り立てました。
 また経済が発達して商工業者の間で座(同業組合)が組織され、独占的に製造販売ができる代わりに座役という税を納めました。
 室町時代に入ると商業活動が活発になり、土地や家屋に対して地子(じし)、棟別銭(むねべつせん)と呼ばれる税が課せられるようになりました。街道に設けられた関所では、関銭と呼ばれる通行税がかけられました。
 江戸時代になって、税は田畑に課せられる年貢が中心となり米で納めました。町人には清酒や醤油の製造、牛馬の売買などに免許料、それに営業税のような運上金や冥加金(みょうがきん)などが課せられました。

- 日本の近代税制の始まりは明治6年の地租改正。20年に所得税が新設 -
 明治に入って日本は近代国家にふさわしい税制が整備されました。明治6年(1873年)に地租改正が実施され、地主や自作農など土地の所有者に地券を発行しました。土地所有者は、地券に記載された土地の価格の3%を税金(地租)として現金で納めました。
 また、江戸時代に1500種以上もあったさまざまな雑税を整理し、大きく国税と地方税に分けました。
 明治20年(1887年)には、農民と商工業者の税負担を公平にするため所得税が導入されました。年間300円以上の所得のある人に所得税が課せられましたが、当時対象者は全人口の0.3%しかいなかったので「名誉税」とも呼ばれました。

- 給料から税金を天引きする源泉徴収制度は昭和15年に誕生 -
 昭和に入って戦争の時代になると物品税、法人税、電気ガス税、入湯税といった新たな税が生まれ、盛んに増税が行われました。
 日中戦争が激しくなった昭和15年(1940年)には、戦費調達のため税金を確実に徴収できるように、あらかじめ給料から税金を天引きする源泉徴収制度がスタートしました。また、会社に対する法人税も設けられました。
 戦後日本では1947年に、会社や個人などの納税者が自分の納める税金を自主的に計算して申告する申告納税制度がスタートしました。法人税や所得税、相続税など国に納めるほとんどの国税が申告納税制度を採用しています。
 これに対して固定資産税や自動車税、住民税などの地方税は、役所が税金の額を決定する賦課課税制度を採用しています。
税金とは? 税金はいつ、 どうして生まれた - 消費税は「間接税」、所得税や住民税は「直接税」 -
 現在の日本の税金のしくみはどうなっているのでしょうか?
 私たちがスーパーで買い物をしたり、CDや本を買ったりすると、その代金に含まれている「消費税」を負担しています。働いている人は所得に応じて給料から差し引かれる形で「所得税」や「住民税」を納めています。
 一口に税金と言ってもさまざまな種類がありますが、税金の納め方によって「間接税」と「直接税」に分かれます。
 間接税というのは、税金を納める人と負担する人が異なる場合の税金を指します。皆さんが買い物をするとその代金の5%を消費税として負担します。しかし実際に役所に消費税を納めるは商品を販売している事業者です。消費税やタバコ税、酒税、関税などもそうです。
 一方の直接税とは、税金を納める人と負担する人が同じ場合の税金です。給料から差し引かれる所得税や住民税。事業を営む会社が納める法人税や不動産にかかる固定資産税。遺産を相続したときに納める相続税などがこれに当たります。

- 国に納めるのが「国税」、都道府県や市町村に納めるのが「地方税」 -
 税金はどこに納めるかによって「国税」と「地方税」とに分かれます。
 国に治める税金を国税、地方公共団体に納める税金を地方税といいますが、地方税はさらに都道府県税と市町村税に分かれます。
 国税には所得税、法人税、相続税などの直接税のほか、消費税(5%のうちの4%)、酒税、タバコ税、関税などの間接税があります。
 地方税は都道府県税、市町村民税、地方消費税(消費税5%のうちの1%)、自動車税、固定資産税などがあります。
 今消費税の増税が話題になっていますが、商品を販売するスーパーや商店の事業者は、消費者から受け取った消費税と商品を仕入れた時に支払った消費税の差額を納税します。
 現在の消費税は代金の5%ですが、2014年4月から8%へ、さらに2015年10月から10%に引き上げられる予定です。
税金とは? 税金はいつ、 どうして生まれた - 国の予算の約半分を税金でまかない、残りは国債を発行して借金 -
 国や地方自治体の公共サービスは税金でまかなわれますが、日本の国全体の収入と支出のバランス(財政といいます)を見ると、税金だけでは必要な費用の約半分しかまかなうことができません。
 足りない残りの半分は国債を発行して資金を集めています。つまり国債という証文を発行して借金をしているのです。
 平成24年度の国の財政規模(当初予算)は90兆3339億円ですが、このうち約49%の44兆2440億円が国債の発行(公債金収入といいます)による借金でやりくりしています。
 税金で足りない分を埋める(借金する)ための国債を赤字国債といいます。すべてを税金でまかなうことができる財政の健全化に向けて、国や地方自治体では税収の拡大に努めています。
税金とは? 税金はいつ、 どうして生まれた 【大切な税金の機能】
- 税金は富の格差是正や景気の調整などに使われる -
 税金は国民が健康で豊かな社会生活を送るための「会費」みたいなものですが、その税金には大きく3つの機能があります。
 まず一つが公共サービスの資金調達機能です。税金は、警察や消防、公共事業や国の安全保障、医療や教育など国民の暮らしを支える公共サービスの資金源という機能を果たしています。
 二つ目は所得(富)の再分配機能です。これは国民一人ひとりの所得格差(不公平)を是正する役割です。具体的には累進課税制度や社会保障制度などがあります。
 累進課税制度というのは、所得の多い人には多く税金を納めてもらい、所得の少ない人には税金を少なくするしくみです。こうして所得の格差是正に努めています。
 一方の社会保障制度とは、失業したり、けがや病気、あるいは高齢のため働けなくなって生活が困窮した場合、安心して暮らせるように生活を保障するしくみです。
 職を失った人に失業保険から社会保険給付金を支給したり、生活の苦しい人に生活保護を行う公的扶助などがあります。
 三つ目は景気の調整機能です。景気が悪い時には減税して、使えるお金(可処分所得)を増やして景気を刺激します。
 逆に景気が良すぎてインフレ(物価上昇)が急ピッチで進んでいる時は、増税によって使えるお金を減らして過熱した景気を抑える働きをします。
 このほか、輸入品に税金(関税)をかけて国内産業を保護しています。
 今話題のTPP(環太平洋パートナーシップ)は、アメリカ、オーストラリア、シンガポールなど太平洋を取り巻く国々が、お互いに関税をゼロにしてより自由に経済活動を行おうというものです。
 関税がなくなると輸入品が安くなるため消費者には歓迎ですが、日本の産業は海外製品との厳しい価格競争に見舞われます。このため「日本がTPPに参加するのはプラスかマイナスか」を巡って盛んに議論が行われています。
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