日本の明日を決める「衆議院総選挙」【社会】

日本の明日を決める「衆議院総選挙」


■知ってるようで、知らない国会と選挙の仕組み■
 連日のように、衆議院選挙に関する報道が流れています。多くは「麻生総理はいつ解散を決断するのか?」、「解散に追い込むと意気込む野党」「このままでは、任期切れまで解散はなさそうだ」といった報道です。
 前回の第44回衆議院議員総選挙が行われたのが2005年9月11日。当時の小泉純一郎総理が、「郵政選挙」と名付けた衆議院選挙から今年9月で4年が経過します。9月になると現在の衆議院議員は4年の任期満了となり、衆議院選挙が行われます。ひょっとすると、それまでに衆議院が解散され、皆さんがこのハイスクール・タイムスを手にする頃に総選挙が行われているかも知れません。
 日本の選挙の仕組みについては、すでに学校などで学習してきたと思います。選挙権を得るまであと数年となった今日、近づく総選挙を控え、国会や選挙の仕組みをおさらいしておきましょう。思わぬ発見があるかも知れません。

日本の明日を決める「衆議院総選挙」 【「衆議院」と「参議院」はどう違う?】
 - 国会は国権の最高機関 - 
 日本では、日本国憲法で定められているように、立法権(国会)、行政権(内閣)、司法権(裁判所)と国家権力を三つに分けています。これを三権分立といって、三権の均衡と抑制によって権力の濫用を防ぎ、国民の自由と権利を守る仕組みになっています。
 国会は、「国権の最高機関であって、国の唯一の立法機関である」と憲法で規定されています。国のさまざまな機関のうち最も重要であり、法律をつくる唯一の機関であるということです。
 これらを審議する国会議事堂は、東京霞ヶ関に威風堂々と聳えています。正面向かって左が「衆議院」、右が「参議院」で、国会議員が熱い議論を戦わせています。
日本の明日を決める「衆議院総選挙」  - 国会を構成するのは「衆議院」と「参議院」 - 
 法律をつくるとともに、国の予算を決めることも大きな仕事です。法律や予算を決めることは、国の根幹にも関わる重大な問題です。このため、国会を構成する「衆議院」と「参議院」の両議院で審議されます。両院はそれぞれ独立して運営されているため、同じ問題を二度議論することになります。
 このように、「衆議院」と「参議院」の二院があり、提出された議案について二度議論する制度を「二院制」と呼んでいます。両議院が独立して意思決定を行い、両議院の意思が一致することで国会の決定となります。
 二院制の利点として、国民に選ばれた多くの議員によって審議されるため、国民の多様な意見や利益を幅広く反映させることができます。また、両議院が互いに慎重に審議できることで、一方の行き過ぎを抑制するとともに、不十分な点を補うメリットなどが挙げられます。
 「二院制」を採用しているのは主要国首脳会議(サミット)を形成する8カ国はもとより、世界の多くの国で採用されています。

 - 最大の相違点は、衆議院にだけある「解散」 - 
 「衆議院」と「参議院」の違いは表にあるように、構成や役割、権限についていくつかの違いが見られます。なかでも、最大の違いは解散があるか否かでしょう。
 衆議院議員の任期は4年ですが、総理大臣が「解散」を宣言すると、480名の全議員は衆議院議員という職を失います。衆議院は参議院の6年に比べ、4年間と任期も短く解散もあるので絶えず選挙を意識しなければなりません。
 しかし、衆議院は予算・条約・内閣総理大臣の指名、法案の議決など、参議院より強い権限が与えられています。つまり、両議院の意見が異なる場合、衆議院の意向が優先されます。なぜかというと、総理大臣が必要なとき「衆議院」を解散させ、選挙で国民の意見を聞き、それを早く国政に反映できるからです。
日本の明日を決める「衆議院総選挙」  - 「ねじれ国会」が解散総選挙を急がせる? - 
 現在の国会は、「ねじれ国会」と呼ばれ、自民党と公明党の与党議員が多数を占める衆議院と、民主党など野党議員が多い参議院で意見が異なるケースが目立ちます。
 現在の一番大きな争点は、深刻化する経済問題にどう対処するかということです。与党は定額給付金などの景気対策を推進し、早期に金融不安、景気後退を解消したい。そのため、選挙という空白期間を設けることは望ましくないと主張します。一方、野党は、現在の麻生政権は選挙で選ばれたものでなく、国民の意向を反映した政権ではない。国民が納得する政策を打ち出すには、国民の真の意見を聞くべきだと「解散総選挙」を要求しています。
 衆議院議員の任期は4年で、今年の9月には任期満了となって衆議院の総選挙が行われます。それまでに、麻生総理大臣が衆議院の解散総選挙を行なうかどうか、マスコミの報道は熱を帯びる一方です。
日本の明日を決める「衆議院総選挙」 【「解散」はどんな時に行われる?】
 - 「解散」の決定権は総理大臣の手に - 
 現在、景気対策を中心に「衆議院」や「参議院」で議論されていますが、各政党の意見が食い違い、思うように審議が進んでいません。法案や予算案の審議の結果「衆議院」と「参議院」で異なった判断が出されたとき、衆議院の優越性によって衆議院3分の2以上の議員が賛成すれば案は成立すると憲法に定められています。となると、選挙は任期満了まで待って、わざわざ途中で解散する必要はなさそうです。
 しかし、今の政治のやり方でいいのかどうか直接国民に問いかけ、判断を得る手法として解散総選挙は欠かせません。多くの国民の支持を背景にした政権が打ち出す政策は、国民に対してより説得性を持つことは言うまでもありません。
 この「解散」を行うのが内閣総理大臣であり、内閣総理大臣だけが持つ特権となっています。




 - 「解散」には二つのケースが - 
○内閣不信任決議が可決したとき
 解散には、二つのケースが考えられます。まず、衆議院で審議が行き詰まり、野党が提出した「内閣不信任」が可決したとき。内閣不信任決議が衆議院で過半数を占めると、内閣総理大臣は10日以内に衆議院を解散しない限り、総辞職しなければなりません。解散するということは、衆議院議員すべてが議員を失職することで、大変重い判断といえます。

○国民の審判を仰ぐための解散
 もう一つのケースは、総理大臣が行ったことや行おうとしている大切な問題について、国民の審判を仰ぐ必要が出た場合です。選挙結果で、総理大臣の政策に対する国民の考え方がはっきり分かります。このケースでは、解散する時期を総理大臣が決定できるので、総理自身や所属する政党にとって都合のいい時期を選んで解散することができます。
 現在、解散をめぐって与野党の攻防と報じられるのは、互いに都合のいい時期を模索しているためです。
 解散されると、新しい衆議院議員が選ばれるまで衆議院は空白となります。もし、国内外で緊急の出来事が発生すれば、参議院議員が参議院の緊急集会を求め対応します。
日本の明日を決める「衆議院総選挙」 【衆議院選挙は「小選挙区比例代表並立制」】
 - 選挙で大きな役割を果たす「政党」 - 
 衆議院議員を選ぶ選挙は「小選挙区比例代表並立制」で行われます。この制度を説明する前に、「政党」について説明しておきましょう。現在、国会議員の多くは、衆議院・参議院とも自民党、公明党、民主党、社民党、共産党などの政党に所属しています。同じ考えを持つ人たちが集まって「政党」をつくることで、自分たちの考えや意見を政治に反映しやすくなるからです。所属議員が増えると、いろんな議案の質問時間や活動費の確保、多数決で決定されるさまざまな議案に対して有利に働くからです。
 この「政党」が、「小選挙区比例代表並立制」で行われる衆議院選挙にも大きな影響を及ぼします。

 - 「小選挙区比例代表並立制」が導入された背景 - 
 名前が示すように、「小選挙区制選挙」と「比例代表制選挙」を並立して行うものです。選挙制度については、国民の意見を十分に反映させる制度をつくることが難しく、各国それぞれが自国の事情に見合った選挙制度で選挙を行っています。
 衆議院選挙は、戦後からずっと中選挙区制で衆議院選挙を行ってきました。中選挙区制とは、選挙区ごとに3~5人の国会議員を選ぶものです。この間、人口の増減などで不平等な選挙区が出て最高裁判所がこれを違憲と判断し、定数の配分の変更などが行われてきました。さらに、同一政党の候補者の重複による弊害などといった問題も起こり、1994年に公職選挙法を改正して、より国民の意向を反映できる選挙制度として「小選挙区比例代表並立制」を導入しました。


 - 二つの投票を同時に行う選挙 - 
 小選挙区比例代表並立制で行われる今回の選挙では、有権者は「小選挙区制選挙」と「比例代表制選挙」の二つの投票を同時に行います。
 小選挙区制とは、全国を300の選挙区に分け、1選挙区に一人の議員を選ぶ選挙で、誰でも立候補できます。一方、比例代表制では、政党に所属していないと立候補できない制度となっています。このため、比例代表制の投票は「政党」の名前を書いて投票します。比例代表制の当選者は、各政党が事前に当選させたい人の名前を書いた名簿を発表し、得票率に応じて名簿順に当選していく仕組みになっています。名簿には、小選挙区制に立候補している人を載せていいので、小選挙区制で負けても比例代表制で当選することもあります。

 - どうして複雑な選挙制度になったのかな - 
 小選挙区制は選挙区が狭いため、立候補者の考えが有権者に届きやすいというメリットがある反面、社会環境の変化などでブームのようなものが起きたとき、同じ政党の候補者だけが当選する可能性があります。これでは、落選した候補者に投票した票が国会に届きません。これを防ぐため、比例代表並立制を同時に導入して、個人では選挙に勝てない小政党からも、議員を国会に送りこめる制度を採用することにしました。
 選挙は、国民の声を国会に反映させる唯一のものと言っても過言ではありません。このため、小選挙区比例代表並立制という選挙制度は、多くの人が知恵を絞って国民の声が国会に届くように考えられています。もっとも、時間の経過とともに社会も変化し、この制度にも改良が加えられていくものと思われます。
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