日本の空・空港が大変なことに!!【社会】

日本の空・空港が大変なことに!!


■日本各地に「98」もの空港が!!■
 ――― しかし、大半の空港は赤字に悩む

 「日本の空」が大変なことになっています。現在、日本の航空会社は、日本航空(日航・JAL)、全日本空輸(全日空・ANA)、日本貨物航空(NCA)、国際航業ホールディングス(日本アジア航空 JAA)、スカイマーク(SKY)などがあり、多くのビジネス客や旅行客を運んでいます。ところが近年、航空機による旅客需要が減少し続け、航空会社の経営が悪化しています。この結果、効率の悪い航空路線の廃止や削減が行われ、さまざまな分野に大きな影響を及ぼしています。
 航空会社と同様に飛行機が発着する空港も、減便や路線廃止などで着陸料などが減少し、大幅な赤字を抱え悲鳴を上げています。現在、日本には98の空港があり、今年3月に開設する茨城空港を加えると99空港にも達します。国土面積に対する空港の数で見ると、イギリス、ドイツに次いで世界で3番目という多さです。数多くの飛行場があるにも拘らず、減便や路線廃止で飛行機が飛んで来ないという事態が心配されています。
 2010年は、東京代々木練兵場(現代々木公園)で、わが国初の動力機による公開飛行が行われてから丁度100年目。航空100年という記念すべき年に、日本の空には暗雲が立ち込めているのは何故でしょう?

日本の空・空港が大変なことに!! 【大空を飛び交う航空会社の現状は?】
 - 日本を代表する日本航空と全日本空輸 - 
 日本の空はもとより世界中を飛び交う飛行機は、グローバル社会に大きく寄与し、私たちの可能性を限りなく拡大させてくれました。
 日本には日本航空と全日本空輸の2社が、日本を代表する航空会社としてよく知られ、互いにしのぎを削ってきました。両社の年間の売上高は表にあるように3兆3000億円を上回り、全航空会社の90%以上のシェアを誇っています。
 日本航空は1951年に、国が出資する特殊法人として設立されたという経歴を持っているため「ナショナル・フラッグ」とか、多くの国際路線を持つことから「国際線の日航」と呼ばれてきましたが、1987年に完全民営化しています。
 一方、純民間航空会社として1952年に誕生したのが全日本空輸。国内のローカル航空運輸から出発しましたが、現在では153の国内線、33の国際線も持つ航空会社として成長し、日航とともに日本の航空輸送を支えてきました。

 - 経営危機で大きく揺れる日本航空 - 
 世界の航空旅客数は、戦後の経済成長と歩調を合わせるように順調な伸びを示してきました。ところが、2001年9月に起こったアメリカの同時多発テロをきっかけに利用者は激減し、世界中の航空会社はかつてない不況に見舞われることになりました。さらに、インフルエンザの流行や世界同時不況が追い討ちをかける結果になりました。
 日本では国際線を会社の看板とし、国内線の約6割を占める日航への影響は大きく、経営危機にまで発展しています。このため、政府が支援を打ち出しているものの、具体策がまだ固まっていません。その原因を検討していく中で、日本の航空行政のあり方にも多くの問題が浮かび上がってきました。

 - 完全民営化後も、色濃く残す依存体質 - 
 なぜ、日航だけが経営危機という事態に陥り、国の支援が必要になったのでしょうか?
 日航はその生い立ちに見られるように、約30年にわたって「半官半民会社」として運営されてきました。このため、社長などの人事、機種選定や航空路線の開設など多くの面で、国の意向が大きく反映してきたという歴史があります。この結果、完全民営化した後も政府依存的体質を残し、各航空会社が激しくしのぎを削る国際競争に立ち遅れたのではないかと見られています。
 さらに、政治家や官庁などの行政機関からの圧力も見逃がせません。開港時点から収益があまり見込めない地方空港にも路線の開設を求められ、多くの空席を抱えた飛行機を運航することも珍しくありません。このため、収益率が下がるだけでなく、着陸料などの負担が増え赤字に拍車をかけています。

 - 機種選定の見直しなど問題が山積 - 
 日航と全日空が運航する飛行機を比較してみると面白いことがわかります。日航の保有する航空機はリースを含めて279機で、このうち大量輸送を行うジャンボ機は51機となっています。かつて、世界最多のジャンボ機保有を誇った日航の歴史は今でも生きているようです。一方、全日空は210機を保有していますが、ジャンボ機は15機しかありません。
 ジャンボ機とは、従来のジェット機と比べて太い胴体と2倍以上の重量を持つ画期的な輸送機で、最大乗客数は500人を上回ります。しかし、旅客数が減少すると、大量輸送に適するジャンボ機のメリットは生かされず、空席を抱えて高価なジェット燃料を大量に消費する非効率な飛行機に変身します。さらに、日航のジャンボ機の多くは老朽化しているので燃費が悪く、整備費も余分にかかるなど日航の悩みは尽きません。

 - 国が主導する日航の再建策の行方 - 
 日航は昨年10月、官民が出資する「企業再生支援機構」に支援を求めました。国は経営危機に陥った日航の支援に乗り出しましたが、まだその具体策はまとまっていません。ただ、どのような支援策をまとめるにしても、他の企業に比較して高額とされる人件費や企業年金の削減、さらにジャンボ機に見られるように運航機種の見直しなどを強く求めています。
 国が民間会社の一つに過ぎない日本航空の再建に乗り出しているのは、日航の持つ公共運輸機関としての航空運輸が大きな理由となっています。
日本の空・空港が大変なことに!! 【発着回数の減少で、閑古鳥が鳴く空港が急増!?】
 - 高度経済成長期から拍車がかかる空港建設 - 
 日本で99番目となる茨城空港が、総事業費約220億円を投じて3月に開港します。空港建設は高度経済成長期を迎えた60年代以降、利用客がさらに伸びるという想定のもと、建設ラッシュを迎えました。バブル崩壊後に見舞われた不況時にも、公共事業の一環として高速道路や新幹線建設などと同様に空港建設が続けられました。大型公共事業は計画が長期にわたり、巨額が投じられることから途中で中止できないという側面を持っているためです。2000年代に入ってからも05年に中部国際空港、06年には神戸空港や北九州空港、そして昨年6月に静岡空港がオープンしました。

 - 空港建設のカギ握る「需要予測」 - 
 空港収入の大半は、航空会社が支払う飛行機の着陸料でまかなわれているため、飛行機の安定した離発着が空港経営の前提になります。このため、工事の着工前に空港周辺の将来の人口増減、経済の成長率の予測、就航する路線や便数、利用客が支払う運賃などを専門の調査機関に依頼して需要を予測します。しかし、ここ10年で開港・拡大した30の空港のうち、予測通りの旅客数を確保した空港は2割程度に過ぎません。
 米同時多発テロ、インフルエンザ、世界同時不況など想定外の出来事があったとしても、空港の需要予測は甘いと言わざるを得ません。茨城空港という地方空港でも総事業費は約220臆円にも達するように、空港建設には巨額を必要とします。空港建設は航空輸送による利便性という本来の目的のほか、地域振興や公共事業という色合いも強く、どうしても空港建設を望む地域にとって都合のいい数字を採用する傾向があるからです。
 空港が赤字になれば、それを補填するのは国民や地元住民の税金であることから、調査結果を吟味しながら無理のない数値を採用しないと大変なことになります。

 - 多額の借金を抱え、悩み深い関西国際空港 - 
 長引く不況で航空会社は、採算性の悪い路線の廃止や減便を行っています。1994年に24時間離発着できる国際空港として華々しく開港したのが関西国際空港。1兆1200億円もの借入金で建設したものも、空港収入の中心となる着陸料が高く、多くの航空会社に敬遠され、計画通りの便数を確保できないのが現状です。このため、空港会社は着陸料の減額に踏み切りましたが、路線廃止や減便に歯止めがかからないのが現状です。関西国際空港を支える関西地区には、他にも伊丹空港や神戸空港があり、これらの空港との整合性も問題になっています。
 地方空港も旅客の減少が目立ち、定員の2~3割の乗客しか乗せていない飛行機が離発着している空港も少なくありません。このまま放置すれば、廃止や減便は避けられそうもありません。

 - 赤字に解消に向けて努力する空港 - 
 こうした中、佐賀空港では北九州という立地を生かし、旅客便のほか航空貨物便に力を注ぎ、航空貨物の拠点空港として機能しています。
 また、能登空港では全日空と搭乗率保証を結び、目標を上回れば全日空から、反対に下回ると地元が全日空に保証金を収めるというシステムを採用。これを受けて地元では、観光PRなどに力を注ぎ目標を上回る搭乗率を達成しています。
日本の空・空港が大変なことに!! 【空の国際競争に取り残される「日本の空港」!】
 - アジアの拠点空港(ハブ空港)はどこ? - 
 日本の航空会社・空港が置かれている現状は、紹介してきたように困難な問題が山積しています。
 一方、国外に目を転じると、さらに厳しい現実に直面させられます。中国や韓国などアジア諸国は、空の国際化に対応するため、官民一体となって空港整備や安い着陸料の設定など、国際競争力を高める取り組みを進めています。この結果、これらの空港に多くの国際路線が乗り入れるようになりました。その代表が韓国の仁川国際空港です。
 2001年に開港した仁川空港は3本の滑走路を持ち、現在では旅客数・貨物量とも成田空港を上回っています。また、日本の24もの空港と直接結ばれているので、成田や関西空港から外国に飛び立つより、路線数が多く安価な仁川空港を乗り継ぎ空港として利用する日本の利用者が増加しています。
 ハブ空港としては、アメリカのJ・F・ケネディ空港やフランスのドゴール空港などが有名ですが、アジアでは韓国の仁川国際空港が大きくリードしています。



 - 航空路線の「軸」、ハブ空港 - 
 ハブ空港のハブとは、車輪の「軸」のこと。車輪の軸から放射線状に線が伸びている様子と、空港から各地の空港を結ぶ放射線状の路線が似ていることから、その中心になる空港をハブ空港と呼ぶようになりました。
 ハブ空港になれば、世界中からヒトやモノが集まり、流通や観光が活発になって町は潤います。さらに、国際会議などが頻繁に行われるとともに、企業活動も盛んになり国全体が活性化します。経済大国「日本」を自負する我国にとって、ハブ空港を目指すのは当然です。
 アジア地区のハブ空港としては、仁川国際空港のほか香港国際空港、国際会議の都市として成長著しいシンガポールのチャンギ国際空港、世界最大級のターミナルビルを持ち、着陸料が安いタイのスワンナプーム空港などがよく知られています。
日本の空・空港が大変なことに!!  - 「羽田空港」を軸に空港の再編を目指す - 
 ハブ空港になる条件は、大型機が発着できる複数の滑走路、恵まれた経済地区を背後に持つ、着陸料が割安、世界中の航空機を受け入れるため24時間使用などの条件をクリアしなければなりません。
 前原誠司国土交通大臣は、制限の多い成田空港に変わって羽田空港をアジアのハブ空港として、アジアの他の空港に対抗していく考えを明らかにしました。羽田空港には今年4本目の滑走路が完成し、発着回数が飛躍的に増大し、深夜・早朝から使用できるようになるからです。
 これに伴って、全国の99にも空港の再整備も検討されると見られています。問題含みの「日本の空」が、すっきり晴れ渡る日が一日も早いことが望まれます。
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