麻薬の恐ろしさを本当に理解していますか?【社会】

麻薬の恐ろしさを本当に理解していますか?


 最近、大学生や人気タレントなど、若者による覚醒剤や違法ドラッグの乱用、大麻の不正栽培や所持といった事件が頻繁に報道されています。マスコミに大きく取り上げられない事件も、全国的に数多く発生しており、若者の麻薬・ドラッグ乱用は今や大きな社会問題となっています。
 こうした事件を起こす人々の中には、他の面では犯罪とは無縁の、ごく普通の学生も多く含まれています。さまざまな事件報道を目にするたびに、「ごく普通の若者が、どうしてこんな重大事件を起こすのだろう?」と疑問に感じている人も多いのではないでしょうか。これらの犯罪の背景には、麻薬や違法ドラッグの違法性・危険性が、若者たちにまだ十分に理解されていないという状況があると思われます。
 そこで麻薬・違法薬物とは何か、それらを使用することの何がいけないのかについて考えてみました。


 - 「麻薬」とは、一体何なのでしょう? - 
 「薬」あるいは「薬物」とは、人体のさまざまな組織に作用して、何らかの影響を及ぼす物質(化合物)のことです。薬物の中には、特に脳を中心とする「中枢神経系」に働きかけ、精神の働きに大きな影響を与えるものがあります。そうした薬物には毒性が強く、過度に摂取すると健康を著しく害するものや、依存性、つまり一度摂取すると、それなしではいられなくさせる性質が強く、依存症(薬物中毒)に陥りやすいものがたくさんあります。あるいは毒性や依存性はそれほど強くなくても、それを使用すること自体が、社会に重大な悪影響を与えるものも多くあります。
 ここではそうした薬物のことを「麻薬」と呼ぶことにします。


 - 「麻薬」と人類との長い歴史 - 
 「麻薬」には多くの種類がありますが、なかでも古くからよく知られたものはアヘン(阿片)でしょう。これはケシの実から抽出される物質(アルカロイド)を合成した薬物です。アヘンは服用者に夢の中にいるような酩酊感や、望みが何でもかなうような多幸感をもたらす一方、強力な依存性を持ち、服用者をアヘン中毒(依存症)にしてしまう危険な薬物です。これをきっかけに、かつて中国で「アヘン戦争」が起こったことは、皆さんもよく知っていると思います。
 アヘンのほかにも、コカインの原料となるコカ、マリファナの原料になる大麻、ある種のキノコやサボテンなども、麻薬的な性質をもつ植物としてよく知られています。こうした天然の麻薬の他にも、現在ではLSDや覚醒剤をはじめ、人工的に合成された数多くの麻薬物質が存在します。
 太古の昔から、人類はこうした精神に作用を及ぼす植物を、宗教的な儀式などに利用していました。現在でもケシや大麻、コカ、キノコ、サボテンなどを使って特殊な精神状態に入ることにより、神への祈りや精霊との交信などの宗教儀式を行っている民族や宗派は世界各地に存在します。

麻薬の恐ろしさを本当に理解していますか? 【麻薬の「悪」をしっかりと認識しよう!】
 このように、ある種の文化の中や医療の現場において、一定の役割を果たしている麻薬ですが、近代国家では麻薬の使用は厳重に管理され、一般人がこれを使用することは、厳しく禁じられています。
 日本においても、医療分野での使用を除けば、個人が麻薬を使用することはもちろん、それを無断で合成・栽培したり、譲渡・販売したり、あるいは単に所持しているだけでも重大な犯罪と見なされます。
 麻薬が国家によって禁じられているのは、それが国民にとって大きな害悪をもたらすからです。では何が「悪」なのでしょうか。麻薬問題を考えるときには、まずそれをしっかり認識することが重要です。

 - 心身を蝕み、命を落とすことも - 
 麻薬のもたらす「悪」の第一は、それを使用する自分自身の健康被害です。
 天然物・人工物を問わず、麻薬の働きの本質は「精神の働きを歪ませる」ことにあります。麻薬は中枢神経に作用し、現実とは無関係の「幸福な気分」や「興奮状態」を作り出します。幻覚性の麻薬の場合は、方向や距離・時間などの感覚も狂わせ、「自分が自分である」という感覚が失われたり、幻覚や妄想、音が「見える」、色が「聞こえる」といった異常知覚を起こすこともあります。
 単に精神状態が一時的に「ハイになる」程度ならまだ問題は軽いのですが、大量の麻薬の摂取は、極めて深刻な憂鬱状態をもたらし、本人を自殺に追い込んだり、極度の被害妄想をもたらして、他人を傷つけたりする事件につながることも珍しくありません。

 - 「薬物依存症」の恐ろしさ - 
 さらに麻薬には、使用者を薬物依存症(中毒)にしてしまうという問題もあります。一般に人体には薬に対する「耐性」というものがあり、最初は少量で効果が得られたものが、耐性ができることで同じ効果を得るためにより多くの量が必要になっていきます。
 このため、いったん薬物依存に陥ると、どんどん強い薬が必要になり、依存症がさらに進むという悪循環が生まれてしまいます。特にコカインやヘロイン、覚醒剤はこうした依存症を起こしやすい薬物として知られ、重度の覚醒剤中毒では、幻覚状態や妄想・錯乱状態に陥って周囲の人間に暴力を振るったり、時には殺人などの重大犯罪を引き起こすケースも珍しくありません。また、薬物の購入資金を得るために、強盗などの犯罪の常習者になるケースもよくあります。
 薬物依存症に陥ると、そこから抜け出すのは非常に難しいと言われます。特に覚醒剤中毒は深刻です。いくら反省して「もう止めよう」と決心しても、使用時の精神状態の再発(フラッシュバック)が起こり、薬のない生活に耐えきれなくなり逆戻りしてしまうのです。本当に依存を断ち切るには何年もの辛い努力が必要になります。

麻薬の恐ろしさを本当に理解していますか?  - 「医療に使われているから安心」ではない - 
 医療に使われている薬物についても、決して安心はできません。たとえば鎮静剤や催眠剤は、本来は気持ちを安定させるための薬ですが、医師の処方なしに多量に乱用すれば、知覚異常や呼吸機能の低下、場合によっては死につながる危険もあります。精神安定剤や抗うつ剤も過度に摂取すれば、ショック状態や情緒不安、行動異常、強迫観念などを引き起こします。
 こうした医療用の薬の多くにも依存性や耐性があり、専門医師によるしっかりしたコントロールがないと次第に摂取量が増え、健康を害する危険が高くなります。
 依存性がそれほどない場合でも、中枢神経に作用する薬物を長期にわたって服用すると、脳の正常な働きを狂わせてしまう可能性があります。このため、多くの向精神薬は「麻薬及び向精神薬取締法」によって製造や輸出入を厳重に規制されています。
 これは薬全般に言えることですが、基本的に「薬物」とは、正しく使用しなければ人体に害を与える「毒物」なのです。「医療で使われているから安全」では決してありません。医師は明確な治療目的を持ち、容量・用法について充分に配慮した上で薬を使用しています。医学や薬学の知識のない一般人が、そうした薬物を興味本位で使うことは、非常に危険な行為なのだということを肝に銘じておくべきです。
麻薬の恐ろしさを本当に理解していますか? 【「自分一人だけの問題ではない」という認識を】
 - 大麻は持っているだけでも罪になる - 
 麻薬による個人・社会に対する深刻な害悪の拡大や、社会治安の崩壊を防ぐために、世界の国々では、麻薬の不正な製造や流通が法律で厳しく禁じられ、警察による厳しい取り締まりが行われています。
 特に依存性や毒性の強いアヘンやコカイン、覚醒剤に関しては、世界のほとんどの国で製造・所持・使用が厳しく規制されています。
 日本では「麻薬及び向精神薬取締法」「覚せい剤取締法」「あへん法」「大麻取締法」といった法律によって、違法麻薬の所持や譲渡・製造、医療目的以外の輸出や輸入が厳しく規制されています。麻薬の原料になる特定種のケシや大麻については、栽培することも違法となり、処罰の対象になります。さらに、大麻については「所持または共同所持」も禁止されています。大麻は「単に持っているだけで罪になる」ということをよく認識しておくことが重要です。
 日本よりもさらに厳しい規制をしている国もあります。スリランカやマレーシア、シンガポール、中国などでは、麻薬の密売などに関わった犯罪者に死刑を含む重い罰が科されるケースも珍しくありません。

麻薬の恐ろしさを本当に理解していますか?  - 安易な考えで手を出さないように - 
 昨今、「一回だけなら大丈夫だろう」「個人で楽しむだけなら構わない」といった安易な考えで、薬物に手を出してしまう若者が後を絶ちません。
 法律的には、各々の「物質」が規制対象になっているため、この法の網の目を逃れるために新たに合成された化合物、いわゆる「脱法ドラッグ」と呼ばれる薬物も数多く出回っています。「これはまだ規制対象になっていない新しいクスリだから罪にならない」と言われ、興味本位で試してみるようなケースも増えているようです。
 しかし、問題は「何が規制物質か」ではありません。法律で規制されていようがいまいが、中枢神経系に作用する薬物というものは、常に脳や神経を侵し、心身の健康を害する危険性を持つ物質だという認識を持つべきなのです。
 そして薬物を乱用することは、決して自分一人だけの問題ではなく、社会全体に害をなす行為、すなわち「犯罪」なのだということを、しっかり認識してほしいと思います。
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