「円安」・「ドル高」ってどういうこと?【社会】

「円安」・「ドル高」ってどういうこと?


 テレビやラジオ、新聞で毎日報道される円相場。外国為替相場とも言われますが、円が安い、高いというのはどういうことなのでしょうか。世界の通貨の値打ちはどうして決まるのでしょうか。そしてそれは世界の経済や私たちの暮らしにどう関わっているのでしょうか?

「円安」・「ドル高」ってどういうこと? 【円高になると輸出産業が打撃を受ける】
- 為替レートは国際通貨間での交換比率 - 
 私たちが普段使っている通貨は円です。外国と商売する場合、例えばアメリカで車を売ったとします。相手からドルで支払いを受けますが、これを円に換えて国内に送金します。この時ドルと円との交換比率が外国為替レート(この場合は円相場ともいう)です。
 現在は1ドルが約90円(3月8日現在)、ですが、円の値打ちが高くなって1ドルで80円しか円に換えてもらえなくなると、ドルで商売(ドル建て・外貨建てともいいます)をすると1万ドルで売った車は、90万円だったものが80万円にしかならず、10万円の損となります。
 つまり、円高になると外貨で支払いを受ける輸出産業は大きな打撃(損失)を受けることになるのです。
 逆に石油や鉄鉱石のように海外から購入する場合は、1万ドルの商品だとこれまで90万円支払っていたものが80万円の支払いでよく、10万円得することになります。為替レート(通貨価値)の変化によって儲けが増えることを「為替差益」。逆に儲けが減ることを「為替差損」といいます。
 
【日本の主要産業は輸出依存度が高い】
- 異常な円高はデフレ不況を招く - 
 わが国の輸出入の比率は、2008年統計で見ると 輸出が約81兆181億円。輸入が78兆9547億円で、輸出が上回っています。円高が続くと、日本産業の〝ドル箱〟である自動車や家電、電子部品、農業・建設機械、工作機械といった輸出産業が軒並み大きなダメージを受けることになります。
 日本の製造業の多くはアメリカや中国、ヨーロッパ、東南アジアを中心とした海外市場、つまり輸出への依存度が極めて高いのです。従って円高傾向が続くと企業の売上が減少し、経営は苦しくなる。このため企業は一斉に人件費をはじめとした経費の削減に必死となります。
 賃金は減少し、人員も削減します。つまりリストラが始まり、派遣切りや採用を手控えるなどで雇用不安が増大し、景気は大きく落ち込んでしまいます。
 景気が落ち込むと買い控えからモノが売れない。企業は生産を縮小し、輸出(海外市場)だけでなく、国内市場も縮小し、賃金はさらに減少してお金の流通が減ってしまいます。これをデフレ不況といい、今の日本はデフレ不況の真ん中で苦しんでいるのです。
 また、企業経営が悪化すると支払う税金(事業税や法人税)も減少し、地方自治体や国の歳入(税収入)も減少し、財政赤字の要因となるのです。
「円安」・「ドル高」ってどういうこと? 【「ブレトン・ウッズ体制」で1ドル=360円に】
- 73年のニクソンショックで変動相場制へ - 
 世界には円やドルのほかにユーロや中国の元、ロシアのルーブル、インドのルピーといったように国ごとに様々な通貨があります。この通貨を時々のレートで交換することを変動相場制といいます。
 一方、常に交換レートが一定なのを固定相場制といいます。現在の世界通貨は変動相場制を取っていますが、かつては固定相場制でした。
 第二次大戦中の1944年、米国ニューハンプシャー州のブレトン・ウッズで、戦後世界の経済復興について話し合われました。そのなかで自由貿易を促進させ、国境を越えて資本(お金)の移動を容易にするため、IMF(国際通貨基金)が創設され、これまでの金(ゴールド)だけを国際通貨とする金本位制を改めました。
 つまり、米国のドルを金と並ぶ世界の基準通貨とし、唯一ドルだけを金との交換(1オンス金=35ドル)を認め、世界の通貨は金=ドル体制の固定相場制としたのでした。これを「ブレトン・ウッズ体制」といい、このとき日本の円は1ドル=360円に決められました。
 ところが60年代になると、ベトナム戦争への膨大な出費からアメリカはインフレに悩み、ドルの信用が低下し、ついに当時のニクソン大統領が、ドルと金との交換を停止しました。
 これによって金とドルとの交換を前提としていた戦後の固定相場制(ブレトン・ウッズ体制)が崩壊し、世界経済は「ニクソンショック」という名の混乱に見舞われたのでした。
「円安」・「ドル高」ってどういうこと? 【貿易赤字、赤字財政で米国は純債務国に転落】
- 85年9月のプラザ合意で円高ドル安が加速 - 
 こうして1973年には、世界は完全に変動相場制に移行し、日本の円は70年代後半から85年ごろまで1ドル200円~250円で推移しました。
 その後アメリカは貿易収支の大幅な赤字、インフレの増大とそれによるドルの威信低下に悩みます。そしてレーガン大統領の時代に米国は財政赤字と貿易赤字の「双子の赤字」が恒常化し、第一次大戦後初めて純債務国に転落しました。
 ついに米国は自国の財政危機を挽回するため、なりふり構わずドル安による貿易赤字の削減、アメリカの輸出競争力向上を図るため、先進5カ国(日・米・英・仏・独)の大蔵大臣と中央銀行総裁をニューヨークのプラザホテルに呼びつけて、ほぼ強制的なドル安のための通貨レートの調整に合意を迫ったのでした。
 この会議は秘密で行われ、85年9月23日の合意発表で外国為替市場は朝から猛烈なドル売りが殺到し、円ドル相場は史上最高値を更新し続けました。金融史上に名高い「プラザ合意」と呼ばれるものです。

【未曾有のデフレ不況にあえぐ日本経済】
- 世界経済の動き、景気動向を注視しよう - 
 一昨年秋のリーマンショックによる金融不安と世界同時不況は、まだ回復には至っていません。それどころか、米国も日本も景気低迷から脱し切れず、とりわけ日本は今なお、世界で唯一デフレ不況にあえいでいます。
 円高は1ドル90円を前後するという異常事態がほぼ日常化して、日本の輸出産業は当面回復のめどが立っていません。経営不振→人件費抑制・人員整理→景気(消費)の冷え込み→デフレ不況→経営不振という「負のスパイラル」がトンネルの出口をさらに遠いものにしています。
 私たちは、円相場や貿易収支など、世界と日本の経済の動きに決して無関心ではいられません。
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