株価はどうして決まる?【社会】

株価はどうして決まる?


 経済ニュースで株の値動き、という言葉をよく耳にします。刻々変わる株価は、経済の動きを反映する鏡ともいわれます。株式会社が発行する株を売買することを証券取引といいますが、一体株式や証券取引はどういう仕組みになっているのでしょうか。資本主義の基本となる株式や株式会社、証券取引のメカニズムと経済との関わりを学んでいきましょう。

株価はどうして決まる? - 株は株式会社が資金集めのために発行する証書 - 
 テレビのニュースを見ていると、必ずといっていいほど気象情報と並んでマーケット情報がアナウンスされます。このマーケット情報というのは、円やドル、ユーロなど通貨の取引情報と株(証券)の取引情報のことです。刻々変化していく通貨と株の取引価格の動きは、世界の経済の流れを示すバロメーターなのです。
 そこで、まず株式の基本的な知識を押さえておきましょう。一般に株あるいは株式(証券)は、株式会社が資金集めのために発行する証書なのです。何か事業を行うとすれば元手、つまり資金が必要です。資金を外部から調達するため、出資者に発行するのが株式です。
 株を購入して株式会社に出資した人を株主といいます。株主が集まって会社経営の重要な意思決定を行いますが、普通年2回(上期・下期)の株主総会で役員人事や決算、予算などの重要事項を決定します。
 日常的な会社の運営は株主総会で選出された複数の取締役が担当します。また、会社は株式を発行して集めた出資金で工場を建てたり、機械を買ったりして、事業を行うために投資します。これを設備投資といいます。
 以上が株式会社の大まかな仕組みですが、株式会社が発行した株式(証券)は、どれでも、いつでも自由に売買できるというものではありません。

- 株の売買は証券会社が代行して証券取引所で行う - 
 株式の売買(取引)は証券会社が代行して行い、売買は全国に5ヶ所ある証券取引所で行います。しかも、売買できる株は、証券取引所に株式を公開(上場といいます)した企業が発行した株に限られます。
 証券取引所に株式を上場していない会社(非上場企業といいます)の株は市場に出ていない非公開株といわれて自由に売買できません。最近、個人で株の売買をWeb上で行う「ネット取引」が盛んですが、これはあくまで売買データーをネットで証券会社に送信して依頼しているわけで、基本的な証券取引の仕組みに変わりはありません。

- 株の売買で資金を運用する金融機関を機関投資家という - 
 たとえば、ある人が1株350円の値が付いている上場企業のA社の株を1万株購入したとします。一週間後A社は画期的な新製品を開発して話題を集め、A社の株を購入する人が殺到して、株の値段(株価といいます)が倍の700円になりました。
 一週間前に350円で購入した1万株を700円で売った場合、差し引き350万円の利益(儲け)が出たことになります。逆の場合は350万円の損失となります。これが証券取引所での株の売買です。
 一般に株主は、個人が株を保有する個人株主と、会社や団体、自治体や政府機関などが保有する法人株主とに分けられます。また、巨額の資金を株の売買で運用して利益を追求していく機関投資家と呼ばれるグループがあります。国内外の保険会社や投資銀行、信託銀行などがそうです。
 銀行の預金や生命保険の掛け金など多額の資金を預かって、株の売買で利益を生み出していきます。これを株式運用と呼んでいます。
 海外の機関投資家が日本の証券取引市場で株を売買することを証券用語で「外人買い」や「外人売り」といいます。取引の規模が大きく株価を左右する有力なファクターとなっています。
株価はどうして決まる? - 全国5ヶ所に証券取引所。他にベンチャー対象のジャスダック - 
 かつて日本には証券取引所が8ヶ所ありましたが、現在は東京、大阪、名古屋、福岡、札幌の5ヶ所に集約されています。東京証券取引所には主としてベンチャー企業の株を取引するジャスダック証券取引所(JASDAQ)が併設されています。
 このほか、5つの取引所には大企業でなくても、将来性のある中堅・中小企業の資金調達を助けて経営を育成する目的で、新興企業を対象とした株の取引所が設けられています。経済ニュースなどでよく出てくる、東京証券取引所のマザーズや、大阪証券取引所のヘラクレスなどがそうです。
 今、日本の証券取引所で上場している企業はどのくらいあるのでしょうか。5つの証券取引所とベンチャー企業対象のジャスダックを含めて合計で約4900社です。
 ジャスダックを除くと株式を公開している上場企業と呼ばれる企業は約4000社。うち東京証券取引所が約2100社で過半数を占め、次いで大阪証券取引所の約1000社と続きます。日本の証券市場は東京を中心に動いていることが分かります。
 それでは、株の値段はどうして決まるのでしょうか。

- 株価を左右するのは、企業の業績と将来性、そして景気の動き - 
 市場で取引される株は、買い(需要)と売り(供給)のバランスで価格が決まります。買い注文が多ければ株価は上がりますし、供給(売り注文)が多ければ下がります。そして需要と供給のバランスを変化させて株価を左右させているのが次の3つの要因です。
 まず一つは企業の業績です。利益を多く出して業績のいい会社は赤字を出して業績の悪い会社に比べて当然高く評価されます。それが株価に反映されて、業績のいい会社の株価は高くなります。これを業績相場といいます。
 二つ目は景気の動き、金利や為替レートなどによって株価は大きく左右されます。景気がよければ企業の業績が向上して株価は上がる傾向にあります。株価はこうして景気の動きを敏感に『予感』して実際の業績に先行して動きます。株とは大変そそっかしいものです。
 この予感の材料となるのが、為替レート(通貨の取引レート)や日経平均株価、TOPIXなどの「株価指数」です。この指数については後ほど説明したいと思います。
 つまり指数で示される景気の風向き、気配、予兆が株価に大きく反映されるのです。政府の景気見通しや、倒産情報、さまざまな物価指数や、円高ドル安など通貨レート(為替レート)の動き。また、米大統領の景気に関する観測や国際情勢の推移などすべてが「材料」となって株価が影響されます。
 そして三つ目は、海外の機関投資家による「外人売り・外人買い」によるものです。日本の証券市場での株売買の傾向を見ると、外国人の売買は過半数に達し、端的にいえば外国人の売り買いによって日本の株価が動いていると言えます。
 とくにアメリカの機関投資家やファンド(金融資本)が、巨額の資金をバックに日本の株式市場で売買に出れば、その影響力で株価は激しく上下することになります。
株価はどうして決まる? - 株価は通貨レートと金利に大きく影響される。 - 
 株価は通貨レート(為替レート)の動きに大きく影響を受けます。円が高くドルが安くなれば、自動車や電気製品などの輸出産業は儲けが減って業績が悪くなります。逆に石油や電力などのように海外から原料の多くを輸入している業種は有利に左右します。こうした流れを受けて株価は変動します。
 また、日本やアメリカの公定歩合、金利によっても大きく左右されます。一般に金利が上がると企業は事業を大きくするためのお金が借りにくくなり、会社は消極的になって株価は下がります。
 逆に金利が下がれば設備投資のための資金が借りやすく、会社は活発となって株値は上がるといわれます。
 そして株価は、その日の証券市場の取引結果を傾向的に表す日経平均株価やTOPIXといった「株価指数」に大きく影響されます。つまり、その日の取引の水準を参考にして、翌日の取引の大まかな株価が決まるのです。
 まず、日経平均株価とは、東京証券取引所の第1部に上場している1685社(4月現在)の中から、取引が活発で売買が盛んに行われる225の会社の株(銘柄といいます)を選びます。日経新聞社が独自の算出法で225銘柄の平均株価水準を指標化したものです。

- 日経平均株価、TOPIXは1日の株の動きを総括した数値 - 
 また、TOPIXというのは、東京証券取引所の1部上場会社すべての株式(全銘柄)の売買価格(時価)の総額を、1968年1月4日を基準日とした時価総額を比較して、その日取引が行われた市場全体の株価の動きを示したものです。
 つまり基準日の全銘柄の時価総額を100として、株価の水準や動きを判定します。例えばTOPIX980.52(12.45ポイント高)とあれば、時価総額は基準日の9.8倍で、前日比12.45ポイント高くなったということです。
 新聞の証券欄に必ず掲載されているので、一度確認してみてください。


- 金融・証券の自由化で激しくなる欧米ファンドとの国際競争 - 
 皆さんはM&Aという言葉を耳にしたことがありませんか。会社の買収・合併を指しますが、今、世界中で巨大企業のM&Aや経営統合が盛んに行われています。
 金融・証券の自由化が当然のように言われますが、言い換えれば海外の大手金融資本が株式の売買によって、日本の優れた企業を買収したり経営権を支配することが自由にできるということです。しかも巨大な資金力を誇る欧米のファンドの攻勢は、日本の企業にとっては大きな脅威となります。
 このため、日本の大手企業は、有力な企業とスクラムを組んで提携したり、合併して傘下に収めてより大きく、より強い企業集団を形成しようとしています。

- 合併・買収、経営統合で規模の拡大を追求する大手企業 -  
 外資(=外国資本)の攻勢に対抗し、国際市場での競争に打ち勝とうという狙いです。パナソニックが三洋電機をグループの傘下に収めたのはその典型例です。
 このように、優秀な企業を買収したり自分の企業グループに引き入れたりすることをM&Aといいます。また合併を視野に入れて、経営を一本化することを経営統合といいます。
 最近では、三越と伊勢丹が経営統合した三越伊勢丹ホールディングス、大丸と松阪屋が一緒になったJ・フロントリテイリング、新日本石油と新日鉱ホールディングスが統合したJXホールディングス。さらに4月から損害保険ジャパンと日本興亜損害保険が統合してNKSJホールディングスが発足するなど、ここ数年、目まぐるしい動きがありました。
 これらはいずれも、株式の売買を通して行われます。株価の流れや株取引の動きは、生の経済をリアルに映し出す鏡なのです。
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