「わかりやすい文章」を書くために!!【社会】

「わかりやすい文章」を書くために!!


 「最近の若者は作文能力が低下している」とよく言われます。インターネット時代になって、メールやブログ、ツイッターなど、文章を「書く」機会はむしろ昔より増えているはずです。皆さんの中にも、「メールはよく書くけどレポートや小論文はどうも苦手...」という人は多いのではないでしょうか。
 そもそも文章を「書く」とはどういうことなのでしょう。どうすれば、言いたいことをうまく「書く」ことができるのでしょうか。わかりやすい文章を書くためのポイント、そして「書く」ことの大切さについて考えてみましょう。

「わかりやすい文章」を書くために!! - 「書く」と「話す」はどう違う? - 
 大人でも「人と話すのは苦にならないけど、文章を書くのは苦手」という人は、意外に多いものです。話すのも書くのも、同じ「ことば」を使ったコミュニケーションなのに、なぜこうしたことが起こるのでしょう。実は「話す」と「書く」の間には、かなり大きな違いがあります。
 まず、大きな違いは相手です。ふつう「話す」相手というのは目の前にいて、自分の話をその場で聞いてくれます。これに対し「書く」相手は目の前にはおらず、自分の書いたことば(文字)を後で読みます。文字とは、「その場にいない相手」に伝えるための手段なのです。
 さらに、「話す」相手は一人か多くても数人で、多くは自分の知り合いです。これに対して「書く」相手は、はっきりと定まっていません。「でも、手紙やメールは相手が決まっているよ」と、反論されるかも知れませんが、今話題にしているのは読書感想文やレポート、論文といった一般的な「文章」のこと。これらの文章には、手紙のような定まった読み手はおらず、不特定多数が対象です。読み手のことを「読者」ともいいますが、「読者」が特定できる手紙やメールは、書きことばの中でもかなり特殊な存在なのです。

- 書いた「ことば」だけで伝えることの難しさ - 
 「話す」と「書く」は、その伝え方(伝達方法)もかなり違います。もちろん基本は「ことば」ですが、私たちが「話す」ときに使うのは、実はことばだけではありません。友達と話すときを考えてみてください。身振りや表情、声の大きさや抑揚、そして沈黙までも含め、多様な方法・手段を使用しています。この手段の豊かさのおかげで、多少ことばの使い方がまずくても、複雑な物事や微妙な感情が伝えられます。また、ことばを間違えても、その場で補足や言い直しができます。
 これに比べて「書く」、つまり「文章で伝える」場合は、手段がずっと限定されます。身振りも表情も、声の抑揚も使えません。読まれるのはすべて書き終わった後ですから、言い直し(書き直し)も不可能です。だから「話す」ときよりもよほど注意してことばを使わないと、思うように伝わらない恐れがあります。
 文章を書くときは、このような書きことばの特殊性を、よく踏まえておく必要があります。「話すのが上手いから、文章も上手いはず」というのは大きな誤解です。書きことばには、書きことば特有の「技術」があり、話しことばの「技術」とは、大きく異なります。

- メールだけでは文章力は鍛えられない - 
 書きことばの中でも、特殊な「手紙」や「メール」について触れておきましょう。
 不特定多数の読者に向けた一般の「文章」とは違い、手紙やメールの相手は一人、しかもその多くは知り合いです。このため、「書きことばの特殊性」があまり気になりません。皆さんも「話す」のとほとんど同じ感覚でメールを打っているのではないでしょうか。
 メールと話しことばはかなり似た面があります。メールは一般の「文章」とは違い、書いてから読まれるまでの時間のずれ(タイムラグ)がほとんどなく、会話のようにリアルタイムでやりとりができます。さらに、微妙なニュアンスを補う「顔文字」や「絵文字」をはじめ、書きことばの不自由さを補う色々な機能を備えています。
 メールという便利な伝達手段の登場で、「書く」という行為が身近になったのは確かです。メールの他にもネットの掲示板への書き込み、チャットやブログ、ツイッターなど、現在では多くの人々が毎日気軽に「書きことば」でのコミュニケーションを楽しんでいます。おそらく「書く」ことがこれほど日常的になった時代は人類史上はじめてだと思います。
 しかし、それによって若者達に「文章」を書く力がついたか、というと大いに疑問です。言いたいことを「文章」でうまく伝えるには、それなりの技術が必要なのですが、「話すように書くメール」に慣れてしまうと、この技術の大切さが見えなくなってしまい、いざまともな「文章」を書こうとすると、その難しさに頭を抱えてしまうのです。

- 「読者の視点」で書いた文章を読み返そう - 
 自分の言いたいことを「文章」でうまく伝えるには、どんな技術を身につける必要があるのでしょう。
 その技術論を紹介する前に、覚えてもらいたい〝大原則〟があります。それは「『読者』の視点で考えて書かないと、うまく伝わる文章にならない」ということです。相手(情報の受け手)の視点に立つという事は、書きことばに限らず、あらゆるコミュニケーションの基本です。
 何かを他人に伝えようとするなら、前もって自分の方で「伝えたいこと」を整理しておく必要があります。ただし、書くべきことを整理できたからといって、それをそのまま書けば即伝わるかというと、そう簡単にはいきません。自分の中ではつながっていることや、わかりきっていると思えることの多くが、不特定多数の「読者」にとってはそうではないからです。
 だから文章を書く時は、書いたものを常に「読者」の視点で読み返し、「これで伝わるだろうか?」とチェックする必要があります。「読者の視点」を持つことは、技術以前の最も大切な基本姿勢です。
「わかりやすい文章」を書くために!! ――――――――――――――――――――――――――――――――――
【「わかりやすい文章」を書くためのポイント】
- 一つの文には一つのことだけを書く - 
 ここからは「文章でうまく伝えるためのポイント」をいくつか紹介しましょう。といっても、「名文」の書き方ではありません。「わかりやすい文章」を書くためのコツのようなものです。
 美しい文章、面白い文章、かっこいい文章など、文章にも色々なタイプがありますが、作文が苦手という人が、まず身につけるべきは「わかりやすい文章」を書く力でしょう。この力は、社会に出ても大いに役立ちます。「美しい文章」が必要な仕事はそう多くはありませんが、「わかりやすい文章」を書く能力は、どのような仕事にも求められるからです。
 わかりやすい文章を書くコツは、逆に考えてみることです。つまり「わかりにくい文章」を書かないこと。まずは一つの文(単文)で考えてみましょう。単文なら誰でもわかりやすく書けるように思えますが、実は気をつけないと、単文でもわかりにくくなるケースはよくあります。たとえば左のような文はどうでしょう。
 この文がわかりにくいのは、単に長いからではありません。長くてもわかりやすい文はたくさんあります。この文をわかりにくくしている最大の理由は「一つの文に言いたいことを詰め込みすぎている」ことです。人は何かを言おうとすると、それに関連して色々な思いや考えが浮かんできます。それらをそのまま一つの単文に盛り込むと、読者にとってわかりにくい文になってしまいます。
 これを避けるには、「一つの文に一つのこと」を基本にすることです(これを「一文一義」といいます)。これが「わかりやすい文章」を書くための非常に大切なポイントです。例文1には「言いたいこと」がいろいろ盛り込まれていますが、これらを整理して、いくつかの単文に分け、つなぎのことばを補ってみるとわかりやすくなります。
「わかりやすい文章」を書くために!! - 関係する単語同士はできるだけ近づける - 
 単文をわかりやすく書くには、単語の順番つまり「語順」や、読点「、」も大切です。左の文を見てください(例文2)。
 長い文ではないのに、一読しただけではわかりにくい単文です。その大きな原因は「関係する単語同士が離れすぎている」ことにあります。この文には「私→おかしいと思う」「彼→嘘だと言う」「彼女→言う」という3つの関係(主述関係)が含まれています。しかし、最初の2つを構成する単語同士が離れ過ぎているので、関係がつかみ難くなっています(図解1)。
 これをわかりやすくするために、関係するそれぞれの単語同士を近づけるように並べかえてみます。
 これで少しわかるようになりました。さらに読点やカギ括弧「」を使って書き直すともっとわかりやすくなります。
 この例に見るように、読点やカギ括弧をうまく使うと文章はぐんとわかりやすくなります。ただし、考えなしに読点を打つと、かえって文章をわかりにくくしてしまう場合もあるので注意が必要です。
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「わかりやすい文章」を書くために!! - 「段落」の組み立ては文章の基本設計図 - 
 一つの文だけなら、ある程度気をつければ、誰でもわかりやすくできます。しかし、「文章」はたくさんの単文が集まって成り立っています。どんな単文を、どう並べる(つなげる)か非常に重要です。
 ところが、文章の構成要素である個々の単文がわかりやすければ、「わかりやすい文章」になるとは限りません。「一つひとつの文の意味はわかるが、何が言いたいのかよくわからない」という文章をよく目にします。これを避けるには、個々の単文よりも大きな視点で、文章全体の組み立てを考える必要があります。
 文章を構成する単位のうち、最小のものを個々の単文とすると、その上にくる単位は単文の集まった「段落(パラグラフ)」です。ある程度長めの文章を書くときは、まずどんな段落をいくつ作り、それをどう並べるかを考えます。この「段落構成」が文章全体の骨組み、いわば基本設計図になります。ここをいい加減にすると、あとで個々の単文をいくら推敲しても「わかりやすい文章」にするのは困難です。

- 読者の「疑問」を想定して段落をつくる - 
 文章の骨格となる「段落」を作る方法は色々考えられますが、基本はこれも「読者の視点」が大切になります。
 たとえば、ある物事に対する自分独自の考え方を説明する場合、まず「全体としての考え」を示し、次にその考えを支えるいくつかの理由を並べ、最後にもう一度、最初の考えを結論として置いて締めくくる、という段落の並べ方がよく使われます。
 最初に未知の情報(ユニークな考え方)を示されると、読者の側には「なぜ?」という疑問がわきます。そうした疑問への答えとして、あとの段落を並べていくわけです。こうして読者の疑問が解消された段階で、もう一度最初の情報を示すことで、読者に「わかった」と感じさせることができます。
 単文の場合と同じく、段落についても「一つの段落に一つの内容」が基本原則です。これを守るには、読者の頭に起こる「疑問」を想定して段落を構成するやり方が有効です(コラム参照)。これは文章を書き慣れていない人にもおすすめできる方法です。「読者の疑問」を想像することは、文章を書く基本姿勢のチェックにも役立ちます。

- 「書く」ことは「考える」ことから始まる - 
 「わかりやすい文章」を書くため、いくつかのポイントを紹介してきましたが、実のところ「わかりにくい文章」を書いてしまう最大の原因は「言いたいことがはっきりしていない」ことです。
 自分の言いたいことですから、当然自分にはわかっていそうなものです。しかし、「思い」や「考え」というものは、頭の中にあるうちはそれほど明確にならないことが多いのです。そのため、実際に書いてみると「自分でも何が言いたかったのかわからない」という事はよくあります。
 「わかりやすい文章」を書くには、まず自分の中で言いたいこと、伝えたいことを明確にさせなくてはなりません。先に「読者」は不特定多数だと言いましたが、実は第一の「読者」は自分自身なのです。まず自分自身に「わからせる」ことが、文章づくりの第一歩と言ってもいいでしょう。
 文章を「書く」というのは、頭の中のばく然とした思いや考えを、文字という形で頭の外に出すことです。「書く」ことで人は自分の考えをはっきりさせ、深めることができます。その意味で「書く」ことは「考える」ことと深くつながっています。一つ一つの単文、それぞれの文のつなぎ方、段落の構成など、さまざまなレベルで工夫を凝らし、頭の中にあるものを自分も含めた「読者」に伝わる「文章」という形にしていくプロセスは、みなさんの「考える力」を鍛えてくれます。それだけでも文章を「書く」ことには大きな意味があります。ぜひ大いに書いて、そして、考えてみてください。
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