「奨学金」について詳しく知りたい!!【社会】

「奨学金」について詳しく知りたい!!


 景気がなかなか回復しない中、「大学には進みたいけれど、ウチは家計に余裕がなさそうだし......」と悩んでいる人は、かなり多いようです。そんな経済的に苦しい学生を応援してくれるのが「奨学金制度」。読者の中には「実はすでに奨学金を受けて高校に通っている」という人もいるかも知れません。
 ひとくちに奨学金といっても、その内容や仕組みは多種多様で、実施する団体も個々の学校から民間の団体、国・地方公共団体までさまざま。奨学金にはどんな種類があって、どんな人が利用できるのか、利用にあたって注意すべきことは何か等々、周りの人には聞きにくい「奨学金のあれこれ」についてまとめました。

「奨学金」について詳しく知りたい!! - 奨学金は「借りる」?「もらう」? -
 奨学金は、大きく2つのタイプに分けることができます。
 第一のタイプは「貸与奨学金」で、読んで字の通り、勉強に必要なお金を「貸し与える」もの。学生の側からいえば「借りる」タイプの奨学金です。一般に奨学金と呼ばれているもののほとんどは、この貸与奨学金です。
 ここで注意しておかなければならないのは、貸与奨学金というのは親や保護者ではなく、「学生自身が借りる」ということです(保護者は学生の保証人になります)。つまり貸与奨学金とは、学生本人にとっての「借金」なのです。貸与奨学金には、借りたお金に利息が付くものと無利子のものがありますが、いずれの場合も、この借金はいつか必ず返さなければなりません。もちろんすぐには返せませんから、大学を卒業し、自分である程度の収入を自分で稼げるようになったら、少しずつ返していくのが奨学金の基本ルールです。制度や機関によって違いはありますが、多くは卒業後6カ月を過ぎてから返済がはじまり、たいていは年1回か2回のペースで何年かかけて返済していくことになります。
 奨学金のもう一つのタイプは「給付奨学金」です。これは返済の必要のない、すなわち「もらう」タイプの奨学金です。このタイプの奨学金制度は、企業や自治体などによく見られ、多くは大学を通じて募集されています。ただし、募集人数は「貸与奨学金」に比べるとごく少数です。給付金額は機関によってさまざまです。また、一般に奨学金は経済的に苦しい学生へのサポートが目的ですが、給付奨学金の中には「優秀な学生」に対して、経済的なことを問題にせずに給付されるものもあります。
 いずれにせよ、奨学金制度の目的は「学業に励みたいが、経済的な理由で学校に通うのが難しい学生に教育の機会を与え、社会に貢献できる立派な人材を育てる」ことにあります。制度の利用を考えている人は、まずこのことを、しっかりと理解しておいてください。
「奨学金」について詳しく知りたい!! - 大学進学で利用できる主な「奨学金」 -
 大学への進学にあたってみなさんが利用可能な「奨学金制度」、あるいはそれに準じた進学サポート制度は、数多くあります。ここでは、そのうちでも代表的なものを紹介しましょう。


~日本学生支援機構~
 数ある奨学金制度の中でも最も利用者数の多いのが、日本学生支援機構による奨学金です。現在の大学生だけでも、利用者は70万人以上に上っています。以前は「育英会」と呼ばれていた団体で、現在は文部科学省が所管する独立行政法人となっています。みなさんのお父さん・お母さんの世代にも「学生時代は育英会のお世話になった」という人が大勢いるはずです。
 日本学生支援機構の奨学金には2種類があります。
 ひとつは「第一種奨学金」で、これは無利子で借りられるものです。返済が楽な分、採用基準はとても厳しく、特に「学力」が重視されます。学力の参考資料としては、主に入学前の成績(大学進学の場合は高校時代の成績)が使われます。
 もう一つは「第二種奨学金」で、これは利息がかかります。利息というのは毎年変動しますから、返済金額が大きくなってしまうリスクがありますが、その分、申し込み基準はゆるやかで、保護者の年収などの一定条件を満たしていれば、ほぼ全員が採用になっているようです。
 「第一種」「第二種」ともに奨学金を受けられるのは大学4年生までで、この間は大学から成績や生活状況についての報告が日本学生支援機構に送られます。かりに成績不振などがあれば大学から指導を受けたり、場合によっては奨学金の停止・廃止もあるので注意が必要です。
◎日本学生支援機構の公式ホームページ
http://www.jasso.go.jp/を参照

~地方公共団体の奨学金~
 各都道府県や市町村などが設けている奨学金制度です。ほとんどが貸与タイプの奨学金で、大学卒業まで支給されます。多くの場合は本人(あるいは保護者)がその地域に住んでいるか、その出身者であることが必要条件となります。
 応募資格や募集時期、支給内容などは自治体ごとにさまざまですが、たいていの場合、成績などの応募基準は日本学生支援機構に比べてゆるやかなことが多いようです。
 利用にあたっては、当該都道府県・市町村のホームページなどで概要をチェックした後で、詳細については役所の担当窓口に問い合わせてみるのが一番の近道になります(自治体の窓口では直接受けつけず、大学経由で募集するものもあります)。
 なお、自治体によっては日本学生支援機構の奨学金や他の奨学金との重複利用を認めないケースが多いので、事前によく確認することが必要です(日本学生支援機構の側では「他の奨学金との同時利用」を認めています)。

~各大学の支援制度~
 ほとんどの4年制私立大学や短期大学や専門学校では、学校独自の奨学金制度や経済的サポートのための制度を設けています。内容は学校ごとにさまざまで、中には1つの学校で数十種類の奨学金制度を設定しているケースもあります。
 よくある制度としては、「入学時に必要な入学金や授業料の全額または一部を貸与してもらえるもの」、「2年生以降の授業料などの一部を貸与してくれるもの」などで、多くは無利子か低金利で借りられ、長期間にわたって分割で返済していくものが多く、学生の負担が少なくてすみます。さらに最近では、入試の成績が優秀な学生については、学費を免除してくれる学校も増えています。
 このほかにも、経済的な理由で学業を続けることが難しくなったときに利用できる「短期貸し付け制度」や、保護者が病気になったり、災害にあうなど、突発的な事情で家計が窮地におちいったときに、お金を貸してくれる「家計急変時の貸し付け制度」など、各大学がいろいろなケースに対応した制度をもうけていますので、自分が進学を希望する学校のパンフレットやホームページなどでよく確認してください。

~あしなが育英会~
 あしなが育英会は、災害や事故、病気などで親を亡くしたり、重度の障害などで親が働けなくなった子供達を支援する民間の非営利団体です。高校や大学に進学を希望する子供たちを対象に、奨学金の貸し出しをしています。大学・短期大学の場合、貸出し金額は月額4~5万円です。
 また、医学・薬学・看護学を専攻する大学生のための奨学金として「オンコセラピー奨学金」があり、これは貸与される月額5万円のうち、2万5千円が給付になります。
 これらのあしなが育英会奨学金の返済は「学校を卒業して半年後から20年以内」とされており、利息はかかりません。
◎「あしなが育英会」ホームページ
http://www.ashinaga.org/index.phpを参照

~新聞奨学制度~
 入学金や授業料の一部または全額を新聞社から借り入れ、入学後にその新聞社の新聞配達をして奨学金を返すという制度です。主に都市部の大手新聞社が実施していますが、地方紙の中にもこの制度をもうけているところがあります。
 基本的に「卒業後に返済がない」ことが、新聞奨学制度と他の奨学金制度との大きな違いです。毎月の給料から返済金が差し引かれるので、卒業時には返済が終わっているわけです。
 新聞配達店には無料の寮があったり、朝夕の食事を格安で提供してくれるところも多いので、「親に頼らず自分の力だけで大学に進みたい」という人には魅力のある制度でしょう。ただし、毎日の新聞配達の仕事と学業のバランスをとることがとても難しく、自由な時間が確保しにくい、途中でやめられないといったデメリットもあるため、制度の利用者には強い意思と精神力が求められます。
「奨学金」について詳しく知りたい!! 【制度を守り続けるためにも、しっかり返済していくことが大切】
- 「奨学金は自分の借金」という自覚を -
 はじめに話したように、奨学金とは、親ではなく「学生自身の借金」です。親が子供のために教育費を借りる「教育ローン」とは、そこが大きな違いです。
 奨学金の審査においては、教育ローンの審査などと違って、保護者が多額の借金を抱えていたり、債務整理をしているような場合でも認められることが多いのですが、それは借りるのが学生本人であり、本人が卒業後社会に出て、仕事に就いてから返していく、という前提があるからです。
 このため審査の基準は収入や返済能力ではなく、何よりもまず「学業に対して積極的であるかどうか」になります。だからこそ奨学金制度を利用する場合は、「これは自分自身が勉強するために、お金を借り入れるのだ」という強い自覚を持って、入学後は借りたお金を無駄にしないように、学生の本分である勉学に打ち込むことが大切です。

- 借りたお金はきちんと返そう -
 もうひとつ「借りた奨学金は、きちんと返す」ことも重要です。
 借りたお金を返すのはあたりまえだ、と思うかも知れませんが、実は奨学金を受けていながら返済をとどこおらせている人が最近増えており、これが大きな社会問題になっているのです。
 返済が遅れると、借りるときに協力してくれた連帯保証人にも迷惑をかけるだけではなく、自分の後輩たちにも迷惑がかかってしまいます。自分が返したお金は、そのまま後輩たちのための奨学金として活用されていきます。つまり、自分がお金を返さないと、その制度自体が続けられなくなってしまいます。
 自分たちがこうした制度を利用できるのも、過去に奨学金を受けた多くの学生たちが社会に出て、しっかりと返済してきたからこそ、そうした先輩たちへの感謝の気持ちを忘れず、次の世代のために、そして社会全体のためにも「卒業後には奨学金をしっかり返済していく」という決意を持って、この制度を利用してほしいと思います。
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