新聞から学ぶ。こうすれば文章がうまくなる!【社会】

新聞から学ぶ。こうすれば文章がうまくなる!


 本を読んだり文章を書いたりするのが苦手な人。とくに作文やリポートを作成したり、授業の要点をノートにまとめたりするのがおっくうな人。毎日、少しずつでもいいですから新聞記事をじっくり読んで下さい。文章に興味がわいてきます。文章を読んだり書いたりすることが楽しくなります。
 新聞はみなさんの身近な、便利で分かりやすい教材です。文章を読んだり書いたりすることが好きになり、きっと成績もよくなることでしょう。

新聞から学ぶ。こうすれば文章がうまくなる! - 新聞は手軽で分かりやすい教材。読めば宝、読まなければゴミ! -
 みなさんの家では、いずれかの新聞を購読していると思います。毎朝配達される朝刊には、政治、国際、経済、スポーツ、社会などのニュース面のほか、家庭の暮らしや教育、芸能・文化のページ、映画や旅行、グルメ情報、ラジオ・テレビの番組欄、健康医療、イベントや催し物の紹介など盛りだくさんの情報が載っています。
 その新聞ですが、ニュースや解説記事を一度じっくりと読んでみて下さい。作文やちょっとした文章を、あまり苦にすることなく、思いのほかスラスラと書くことが出来る〝ちょっとしたヒントやノウハウ〟が隠されています。
 新聞記事を注意深く読み解くことで、読みやすい文章がうまく書けるようになります。新聞や本を読むことが楽しくなって、自然にさまざまな言葉や表現法を学んで国語力が身に付きます。
 そして何より、現代人として必要な教養が身につき、物事の見方、考え方、判断力がグーンと身について、自分が大きく成長していくことが実感出来ます。

- 新聞記事には、目に見えない頭の栄養素がいっぱい詰まっている -
 普段はあまり意識しませんが、実は新聞は大変便利な、そして最も分かりやすい教材なのです。毎日少しずつでもいいですから、新聞記事を注意深く読む習慣を付けてください。
 流し読みではなく、一つでも二つでも興味や関心のある記事を、教科書や参考書を読むようにじっくりと、ていねいに読んでください。これを半年、1年と続けていくと、たったそれだけで、ニュース感覚だけでなく、文章力や理解力、総合的な国語力が、新聞を読まない人に比べて大変な差が付いてきます。
 何より、これからの学生生活や進学、就活などで非常に大きな武器となり、パワフルに自分の能力を発揮することが出来るはずです。
 新聞記事の文章には、注意して読む人にこうした力を与える、目に見えないさまざまな頭の栄養素が詰まっているのです。その秘密をこれから説明していきましょう。
新聞から学ぶ。こうすれば文章がうまくなる! - 新聞記事は、誰にも分かる文章で報道と解説をするやさしい読み物 -
 新聞を手に取れば分かりますが、だいたい1面から順番に、政治、国際、解説、経済、特集、文化、健康、家庭、地域、社会そして終面のテレビ欄という形で編集されています。(一部の新聞はテレビ欄が中面にあります)
 新聞は社会的な事件や、政治、経済の出来事を知らせるだけでなく、その意味や背景、影響などを解説してくれる時事問題のテキストです。 
 テレビやインターネットなどでもニュースを知ることはできますが、新聞は自分の都合の良い時間と場所で、好きな記事だけを読むことができ、いつでも何度でも読み返したり、切り取って保存することが出来ます。
 新聞記事は雑誌や一般書籍の文章と違って、読者対象を「義務教育終了程度の水準」に設定して作られています。中学卒業程度の学力や見識があれば、誰でも理解できるように書かれているやさしい読み物であり、一般常識のすぐれたテキストでもあるのです。
新聞から学ぶ。こうすれば文章がうまくなる! - 新聞記事は4段階の厳しい目と手が加わった完全な文章 -
 新聞の記事は、「主見出し」「脇(袖)見出し」「前文(リード)」「本文」の順にだんだん詳しく書かれています。忙しい人で時間がなければ、見出しや前文を読むだけで大まかな内容が分かるようになっています。
 新聞の記事は、事実や意見(主張)を正確に分かりやすく伝えることに最大の注意を払っているため、わかりやすい言葉で理解しやすい文章に組み立ててあります。
 つまり、新聞記事は記者や編集者など何人もの人が手を加えて、正確で、誰にでも分かりやすい文章になっているので、毎日注意深く読むことで、自然に文章のまとめ方や、分かりやすい表現法、文章の構成力が身に付いていきます。
 新聞の原稿は、記者、編集者(デスク)、見出しを付ける整理記者、文章の間違いや誤った表現を修正する校閲記者の最低4人の厳しい目でチェックされ、手を加えられた素晴らしい、完璧な文章になっています。
 影響力のある話題の記事や特集記事、解説原稿や特ダネ原稿になると、新聞全体を編集する編集長や担当部長、場合によっては編集局長などがチェックします。
 新聞社内では、こうした完璧な原稿を「完全原稿」と呼びます。新人記者などは、先輩記者やデスク(編集者)などから毎日、「完全原稿を出せ!」と厳しく指導されます。
新聞から学ぶ。こうすれば文章がうまくなる! - 新聞記事の「3つのC」 ―正確に、分かりやすく、簡潔に- -
 ところで、新聞記事を作成する時には、基本となる秘密のノウハウがあります。それは、「3つのC」と、「逆三角形」、そして「5W+1H」です。新聞記者は新入社員の間に、これを徹底的に叩き込まれます。みなさんもこのノウハウを身に付けて、文章に強くなってください。
 まず「3つのC」です。繰り返しますが、新聞記事を書く上で、記者や編集者(デスク)が最も重要視しているのが正確さと分かりやすさです。これを新聞記事の「3つのC」といいます。
 「3つのC」とは、まず第1のCがCORRECT(コレクト:正確)のCです。真実性と正確性を持った文章であることです。
 第2のCは、CONCISE(コンサイス:簡潔)のCです。簡潔で読みやすい文章であることです。
 第3のCが、CLEAR(クリアー:明快)のCです。やさしく分かりやすい文章です。
 つまり、正確で簡潔、やさしくて分かりやすい文章ということになります。正確で分かりやすい文章であると同時に、簡潔でなければなりません。
 新聞記事で嫌われるは、だらだらと長い文章です。文章は「分かりやすく、短く、簡潔で」が鉄則なのです。
 簡潔で分かりやすい文章は、新聞記事だけでなく、ほとんどの文章にも要求されていることです。読みやすい文章でなければ、相手は読んでくれません。みなさんもぜひ心がけて下さい。

- 短い簡潔な文章は、生きいきした読みやすい文章のこと -
 「3つのC」をマスターすると、文章が生きいきと、メリハリのある読みやすいものとなります。そして自分の思ったこと、相手に伝えたいことを、スムーズに表現することが出来るようになり、文章を書くことが楽しくなります。
 一昔前まで、新聞記事は1行が15字詰めでした。活字も小さく読みづらいものでした。今、みなさんが手にする新聞の記事は、1行が13字、12字、あるいは10字詰めとなっていて、文字もずいぶん大きく読みやすくなっています。
 これは、お年寄りに配慮したためですが、一般の読者にとっても、読みやすく、分かりやすい記事を提供していく、という編集方針に沿ったものです。

- 論文やレポートは、序論→本論→結論の正三角形の構造 -
 論文やレポートなどでは、最初に「はじめに」や「序論」という導入部分があります。ここでは、この論文やレポートを発表する理由や狙い、自分の考え(仮説)を述べます。
 次に「本論」で、できるだけ多くのデータや事例研究、関連する資料の参照などを行って、自分の考え(仮説)を証明する方向性や、法則性、傾向を見出していきます。こうして、導き出された傾向や法則性を精査して、「結論」付けていきます。
 序論から本論、結論へと、文章の内容は徐々に広がっていって、正三角形の構造になります。正三角形構造の論文やリポートの文章は、「起承転結」という構成になっています。
 起承転結の「起」は問題の提起(仮説に当たる)です。「承」はそれを受けて問題を詳しく述べます。「転」で、問題の別の側面、別の見方を示し、「結」で全体を総括して結論に導いていきます。
 正三角形構造の論文やリポートの文章には、始まりがあり、やがて徐々に盛り上がりを見せ、壮大な結末があって完結する、ひとつのドラマを形成しています。

- 新聞記事は「まず結論ありき」の逆三角形の構造 -
 これに対して新聞記事は、真っ先に結論を書き、その後に重要性の高い順に説明を書き加えていきます。そして重要度の低いことがらを最後に書き加える逆三角形の構造になっています。
 これによって、まずニュースのポイント(結論)を明確に読者に伝えることができます。新聞を編集するとき、紙面のスペースが限られて原稿を短くする場合でも、後ろから削っていけば、重要な結論部分をカットせずに済みます。
 新聞記事は、主見出し(メーンの見出し)、脇(袖)見出し(サブメーンの見出し)、前文(リード)、本文という構成になっています。
 見出しは、記事の内容を一目で伝えるタイトルです。そして前文(リード)は本文の内容を簡潔にまとめた小文です。
 新聞記事は、見出しと前文(リード)にさっと目を通すだけで、記事の大まかな内容をつかむことが出来るようになっているのです。

- 文章作成に欠かせない5つのWと1つのHの6つの要素 -
 新聞記事には、「5つのWと1つのH」と呼ばれる最も大切な6つの要素があります。いいかえれば、この6つの要素が満たされなければ新聞記事としては不完全なのです。
 それはみなさんが、これから受けるいろんなテストの小論文や作文。さらに、大学や社会人になって作成するリポートや論文、報告書、企画書などの文章にもいえることです。
 今から説明する6つの要素がきちんと整っていれば、その文章は要点がまとまった、分かりやすいよくできた文章という評価を得られます。
 5つのWとは、When(いつ…年月や日時)、Where(どこで…場所など)、Who(誰が…人物など)、What(なにを…目的、行為など)、Why(なぜ…原因、理由など)のWです。そして1つのHとは、How(どのように…様子、状態、方法など)を指します。
 新聞記事は、内容を正確に読者に伝えなければなりません。そのためには、「いつ、どこで、だれが、なにを、なぜ、どのように」の6つの要素を念頭において記事を書くことで、大切なことを書き損じることなく、正確な記事を作成することができるのです。
 今、ハイスクールタイムスのこの原稿を執筆している私(筆者)は、30年以上にわたって新聞社の編集記者を経験してきましたが、今でもこの6つの要素を頭に叩き込んで原稿を書いています。
新聞から学ぶ。こうすれば文章がうまくなる! - 読者にインパクトを与える「マクラ」「サワリ」「オチ」とは -
 新聞記事の文章には、「マクラ」や「サワリ」「オチ」といった、文章表現の勘どころがあります。これらをうまくマスターすると、読者を「ウ~ン」とうならせる、一味違ったパンチの効いた文章が誕生します。
 「マクラ」というのは、本文に入る前の導入文章です。
 例えば「水の都ともアドリア海の真珠とも称されるイタリアの観光都市ベネチアでは…」といった文章がそうです。これは、ベネチアに掛かるマクラ言葉となっています。
 次に、「サワリ」というのは本論のハイライト部分で、筆者が一番書きたい想いを表したキラリと光る文章のことです。
 例えば男女7人組ユニットのAAA(トリプル・エー)が、昨年末のNHK紅白歌合戦出場と日本レコード大賞優秀作品賞を獲得しました。彼らの活躍を紹介する新聞記事に、「サワリ」と見られる次の文章表現がありました。
 「路上ライブを行なっていた少年少女は…デビュー5周年でビッグアーチストへと成長。ステージで華麗なパフォーマンスを披露する7人が、未来をリードすべく、いま大きく羽ばたこうとしている…」
 筆者のAAA(トリプル・エー)の成功をたたえるひとしおな想いが伝わってくるようです。

- 新聞を注意深く読むだけで、ビックリするほど文章力が身に付く! -
 そして「オチ」とは、落語のオチと同じように文章の最後に、ちょっと茶目っ気のある『落とし言葉』のことです。駄洒落ではありません。
 さきほどのAAA(トリプル・エー)の原稿で言えば、「さらなる高みへ。目指すはその名のごとくAAA(最高水準)だ!」という文章です。
 この「オチ」は、ユニット名のAAA(トリプル・エー)と、彼らの健闘をたたえた結びの言葉として、品質や信用の最高の評価を表すAAAを掛けたオチとなっています。
◇   ◇   ◇

 普段何気ない新聞の記事も、毎日、少しずつでもじっくり、注意深く読んでいくことで興味が湧いていきます。そして、知らず知らずのうちに文章を読んだり書いたりすることが好きになって、ビックリするほどさまざまな能力が身に付いていきます。
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