進化する広告の姿【社会】

進化する広告の姿

 インターネットは、私たちの生活やビジネス社会において、もはやなくてはならないものとなっています。瞬時に欲しい情報を引き出せるYahoo!などのポータルサイトやGoogleといったサーチエンジン、FacebookやmixiといったSNS(ソーシャル・ネットワーク・サービス)など、これらの多様なサービスやサイトの運営を支えているのが「広告料」です。テレビ、新聞、雑誌、ラジオといった主軸メディアの広告市場がすべて不況の中で、インターネット広告市場は成長を続けており、広告業界再編の担い手として期待が高まっています。
 インターネット広告市場の背景を辿りながら、その課題や可能性について考えてみましょう。

進化する広告の姿 - インターネットが広告業界第2位のメディアに! -
 広告代理店・電通の調査によると、2010年度の日本の総広告費は前年比97・7%の5兆7096億円。不況により企業の広告予算削減が進み、テレビ(前年比99・5%)、新聞(前年比93・7%)、雑誌(前年比93・0%)、ラジオ(前年比96・0%)など、既存のメディア広告はいずれも減少傾向にあります。嗜好の多様化やライフスタイルの変化により、これまでお茶の間の団欒に欠かせなかったテレビは存在感を弱め、新聞や雑誌の購読率は軒並み低下。これまで存在感を放っていた既存メディアの価値が揺らいでいるともいえます。
 こうした中、インターネットの利用者の増加とともに、着々と伸びてきたのがインターネット広告です。2004年にラジオ広告を、07年には雑誌広告を、09年には新聞広告を抜いて、現在ではテレビに次ぐ業界第2位のメディアへと成長しました。
 2010年のインターネット広告費は8062億円(前年比104・1%)で、10年前と比べて10倍以上の数字となっており、今後規模は1兆円を超えると試算されています。

- 市場の地位を押し上げたYahoo! -
インターネットに初めてバナー広告が登場したのは、1994年10月。アメリカのオンラインマガジン「HotWired」のサイトに、14社のロゴが掲載されたものが最初といわれています。インターネット広告の歴史は他メディアに比べてとても浅く、テレビ広告のわずか4分の1ほどです。この短期間で、インターネット広告市場はどのように広がっていったのでしょうか。
 インターネット広告は、当初から有望なビジネスになると期待されていました。インターネットが普及するにつれて魅力的なWebサイトが増え、広告メディアとして有望なサイトの囲い込みが始まりました。こうした中、すべての人が欲しい情報へ素早くアクセスするための、玄関口となる「ポータルサイト」をいち早く確立したのが、Yahoo!です。便利な無料サービスを自社開発、あるいは買収や提携などで提供し、幅広く利用者を囲い込んでいきました。
 その後、現在ではインターネット広告の覇者ともいわれるGoogleが、1998年にロボット型サーチエンジンとしてデビュー。現在も企業買収を繰り返しながら、質の高いサービスを無料で提供しています。2000年前後には、月額定額・高速通信が可能なADSLなどのブロードバンドが本格的に普及し、インターネットの利用者数が増加。ネット広告も静止画中心から、音声や動画を使った表現力豊かなものへと姿を変えていきました。
進化する広告の姿 - インターネット広告の魅力は種類の豊富さ -
インターネット広告の魅力の一つに、種類の豊富さがあげられます。広告主が目的や予算に応じて選ぶことが可能なため、企業にも個人にも取っ付きやすいといえるでしょう。
 なかでも、インターネット広告の躍進を支えているのが「検索連動型広告」です。これは、興味関心が高いユーザーへ直接広告を届け、潜在的な見込み客を集めることが可能です。例えば、Yahoo! やGoogleといったサーチエンジンで、利用者が入力したキーワードに連動して検索結果画面に広告が表示され、広告がクリックされると広告主が広告代を支払う仕組みです。
 総務省情報通信政策研究所が行った調査によると、08年度におけるインターネット検索エンジンの月間延べ利用者数は4775万人、PC向け検索連動型広告の市場規模は1254億円。これは、ラジオ広告市場を凌ぐ市場となっています。この広告を主力とするGoogleは、2012年4月に発表した同年1〜3月の売上高が、前年同期比24%増の106億4500万ドル(約8600億円)と、四半期ベースで過去最高額を記録しています。
 そのほかにも、王道商品の「バナー広告」や、メールマガジンなどの「メール広告」、広告から一歩踏み込んだ成功報酬型の「アフィリエイト」、動画も配信できる「Flash広告」、FacebookやmixiなどのSNS参加者をターゲットとした「SNS広告」、有料でブログに記事を書いてもらう、口コミ型の「ブログ広告」など、時代とともにさまざまな広告が生み出されています。

- 通販市場では9割超の企業が利用 -
 日本通信販売協会「第29回通信販売企業実態調査報告書」によると、2010年度の通販市場規模は、調査開始以来最高額となる4兆6700億円を記録しました。このため、通販各社が利用するメディア広告が注目されています。上位5つを見ると、「インターネットPC」が93・6%と最も多く、続いてDM66・0%、インターネット携帯55・3%、カタログ54・5%、チラシ46・4%と続きます。
 顧客のインターネット活用が進み、店頭で見た商品をネットで確認してから購入する人が増えています。テレビや新聞などで「詳しくはWebへ」などの検索バナーをよく目にするように、カタログからサイトへの誘導も多く見られます。
 インターネット広告は、ユーザーに能動的な行動を促すことが可能であり、顧客により有効なアプローチを意識した、新しいビジネスモデルの確立が模索されています。
進化する広告の姿 - 生き残りをかけて進化する既存メディア -
 総務省が公表した「インターネット検索エンジンの現状と市場規模などに関する調査結果」では、企業のメディア利用目的の違いが見て取れます。テレビや新聞といった既存メディアはブランド力向上に、インターネットは特定の層に向けた認知度の向上に利用している企業が多く、とりわけブログやメールマガジンはその傾向が強いようです。
 こうした中、メディア広告のシェア第4位である「新聞への折り込みチラシ」が、機能強化に向けた新しい試みとして「電子チラシ」への移行を始めています。折り込みチラシは近年、若者の無購読者の増加や不況による節約で新聞の発刊部数が減少していますが、購読層への効果の高さに定評があるメディアです。
 デジタルのチラシであればクリック数での効果測定が可能で、紙のメディアには書ききれない情報を余すことなく伝えたり、視力の落ちた人でも拡大縮小が容易に行えるといったメリットが注目されています。そのほか、新聞の非購読者へのチラシ配布サービスも行われるなど、既存メディアの生き残りをかけた戦いが始まっています。

- インターネット広告が抱える課題とは? -
インターネット広告の効果を高めるために行われてきた手法が、利用者に不快感を与えることがあるのも事実です。例えば、Amazonが早くから導入している「レコメンド(推奨)機能」のように、利用者の購買履歴やページ閲覧履歴をデータベース化し、似た傾向を持った人の購買履歴と比較して、自動的におすすめを表示するという仕組みがあります。
 このように、インターネット広告はターゲットに合わせた「広告の最適化」が可能なのです。しかし、仕組みを知らない人には「プライバシー情報が漏れているのでは」という不安感を抱かせることがあります。同様に、消費者に広告であることを気付かせずに広報を行う「ステルスマーケティング」に対しても、不快感を持つ人が多いとの調査結果もあります。
 また、バナー広告や検索連動型広告に見られるクリック保証型広告では、「無駄なクリックが多い」「不正クリックが心配」などの本質的な課題も浮き彫りとなっています。
 そのほか、レストランなどの大幅割引クーポンを発券するネットサービスで、イメージとかけ離れたおせち料理の販売が問題となったのは、記憶に新しいでしょう。大手口コミサイトでもやらせ問題が取りざたされるなど、偽りのイメージで人を呼び込み、利用者に商品やサービスを購入させるといったニュースも後を絶ちません。
 利用者の不安感を取り除くための工夫は、インターネット広告の大きな課題といえるでしょう。
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