急ピッチで進む 少子高齢化社会【社会】

急ピッチで進む 少子高齢化社会

 厚生労働省の政策研究機関である国立社会保障・人口問題研究所が今年1月、平成22(2010)年の国勢調査を受けて将来の人口推計をまとめました。これによると、現在1億2806万人の人口が、2030年には1億1662万人になり、2048年には1億を割って9913万人になると推計されています。今後50年の間で、日本の人口は4132万人(当初人口の32・3%)の減少が見込まれているのです。
 また、高齢化に拍車がかかり、2060年には65歳以上の人が占める割合は39・9%に達すると見られています。こうした少子・高齢化社会は、将来の日本社会に大きな影響を及ぼします。この問題に正面から向き合い、将来の日本の在り方を考えてみましょう。

急ピッチで進む 少子高齢化社会 - 出生数はピークの269万人から105万人と大幅減 -
 厚生労働省の調べによると、2011年の出生数は105万7000人と推定され、前年の107万1304人より約1万4000人減少し、長期減少傾向が続いています。
 第1次ベビーブーム(1947~1949年)期の出生数は約270万人で、団塊の世代とも呼ばれています。団塊の世代の子供たちの出産で迎えた第2次ベビーブーム期は、200万人を超える出生数を記録しています。しかし、それ以降毎年減少し続け、1984年には150万人を割り込みました。1991年以降は、増加と減少を繰り返しながらも全体としては緩やかな減少傾向を示し、2005年から総人口の減少が始まっています。
 合計特殊出生率(出生率)で見ると、第1次ベビーブーム期には4・3を超えていましたが、1950年以降急激に低下しています。1989年にはそれまで最低だった1966年(丙午:ひのえうま)の数値を下回る1・57を記録し、2005年には過去最低の1・26まで落ち込みました。
 合計特殊出生率とは、女性が生涯に産む平均の子どもの数を指し、代表的な出生率の世界的指標となっています。日本ではこの数値は2・08前後とされ、この水準以下になると人口が減少するとされています。
急ピッチで進む 少子高齢化社会 - 21世紀半ばには4分の1が高齢者に -
 日本の総人口は、明治以降全体として増加を続け、2010年には1億2806万人に達しています。しかし、先程の出生率に見られるように、今後は長期にわたって減少傾向を示し、国立社会保障・人口問題研究所の人口推計によると、2048年には1億人を割り込む99
13万人になり、2055年には8993万人になると推計されています。
 出生数の減少は、人口の年齢構成に大きな影響を及ぼします。2005年時点の年齢構成は、総人口に占める子ども(15歳未満)の割合は14%、15~64歳の働き盛りの人が66%、高齢者(65歳以上)が20%となっています。この割合が2055年になると、子どもの割合は8%と大幅に減少し、働き盛りの人も51%になり、高齢者人口は41%にも達する見通しです。
 つまり、現在の国民5・0人に1人という高齢者の割合が、21世紀半ばには2・5人に1人という超高齢者社会になってしまいます。

- 少子化が原因で発生する社会的問題とは? -
 少子化がこのまま進むと、社会にどのような影響を与えるのでしょうか?
 元気一杯の若年労働者が減少することで、経済成長に多大な影響を及ぼします。日本経済を支える労働力人口の絶対的な減少とともに、高齢者の占める割合が増加することで、労働力供給が減少し、社会全体のダイナミズムが損なわれます。さらに、貯蓄を取り崩す高齢者の増加によって貯蓄率の低下を招き、投資や労働生産性の上昇が抑制され、経済成長の低下が懸念されます。また、年金や医療、福祉などの社会保障分野で若年層の負担が増大し、所得の減少が考えられます。
 社会面での影響も見逃せません。子どものいない世帯が増えることで、社会の基礎的単位である家族の形態が希薄になり、時には崩壊につながることも考えられます。さらに、少子化の影響で子ども同士の交流が減少し、子どもの社会性が育ちにくいといった問題もあります。保護者の過保護による弊害も指摘され、現実の問題として今日さまざまな分野で問題になっていることは周知の通りです。
 地域社会でも大きな影響がでると考えられます。人口の減少や高齢化で、各自治体では住民に対するサービスが十分に行えるのか心配されます。森林や河川、田畑などの社会資本の継承、自然環境の維持管理の困難さが予想されます。

- 日本政府や産業界が進める少子化対策 -
 日本政府では、少子化社会に対応した社会保障制度の改正や経済政策などを打ち出しています。
 育児休業制度の整備や傷病児の看護休暇制度の普及促進、保育所の充実など子育ての環境整備、乳幼児や妊婦への保健サービスの提供などの対策を行っています。政府は2003年に「次世代育成支援対策推進法」を成立させ、出産・育児環境の整備充実を図っています。
 産業界においても、育児休暇制度などの制度を導入し、働く人々が子育てしやすい環境整備に力を注いでいます。このように国や産業界などが少子化対策を実施していますが、少子化現象は依然として進行しているのが現状です。
急ピッチで進む 少子高齢化社会 - 人間の「生き方」に何処まで踏み込めるか -
 少子化の原因は、すでに紹介した通り多岐に渡っています。複雑・多様化する一方の現代社会を受け、個々人の考え方も多様化しています。結婚・出産という人間の本来的な営みに、国がどこまで踏み込めるのかという大きな問題が横たわっています。なかでも、結婚についての介入は不可能で、既婚者を対象に、出産・子育てに適した環境整備の充実が強く求められています。少子化社会対策基本法でも、その前文に「結婚や出産は個人の決定に基づく」と明記されていることでも明らかです。
 また、少子化対策として「出生率の増加だけに目を向けていていいのか」という指摘もあります。将来を見据えて、いかに生きるのかという「生き方」が、少子化社会の中でこれまで以上に厳しく問われてくると思われます。

- 欧米を中心とした先進国の少子化の現状と対策 -
 欧米の先進国では、いずれの国も時期は異なりますが少子化を経験しています。アメリカでは1990年以降、出生率が2・0付近で落ち着いています。しかし、ヒスパニック系、アジア系、白人、黒人といった人種ごとに出生率が異なっていることが特徴です。
 フランスは、2006年に出生率を2・1まで回復させました。「保育ママ制度」や、子どもが多いほど税金が低くなる制度の導入、育児手当を20歳まで引き上げる制度などが功を奏したようです。しかし、婚外子(結婚していないカップルの子ども)の割合が非常に多く、日本とは価値観が大きく異なります。
 早くから少子化を経験したスウェーデンでは、女性の社会進出支援や低所得者でも出産しやすい各種制度を導入するとともに、婚外子にも法的に同等の扱いを行う法制度を整備しました。こうした対策を受け、1990年代には先進国では世界最高水準となる2・0を上回る出生率を記録し、スウェーデン・モデルとして多くの国が参考にしました。
 ロシアでは、ソ連の崩壊後の死亡率の上昇や、他国への人口流出などで人口が減少しています。現在、約1億4500万人の人口が21世紀半ばには1億人程度に減少するという予測も出されています。
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