増え続ける非正規労働者 広がり続ける経済格差【社会】

増え続ける非正規労働者 広がり続ける経済格差

 日本の働く環境は年々厳しくなり、昨年の新卒者の就職率は過去最低を記録するなど、多くの問題を抱えています。特に、パート・アルバイト・契約社員・派遣社員など「非正規労働者」の増加で経済格差が広がり、社会に大きな影響を与えています。これは、近い将来社会に出る皆さんにとって、決して他人事では済まされません。なぜ、私たちの労働環境はこんなにも深刻なものになってしまったのでしょうか。

増え続ける非正規労働者 広がり続ける経済格差 - 時代を反映した雇用形態の移り変わり -
 1960年代、高度成長期の日本は人手不足となり、労働者を囲い込むために「正規労働者」と呼ばれる正社員の雇用が定着していました。しかし、バブル崩壊後に企業のグローバル化が進み、諸外国との価格競争が激しくなったため、企業は労働コストの削減に取り組み始めました。その結果、雇用形態の多様化が進み、パート・アルバイト・契約・派遣など有期で企業に従事する「非正規労働者」が増えたのです。非正規労働者はフルタイム勤務の正規労働者と異なり、自分の都合に合わせて仕事や時間を調節することが可能で、現代人のライフスタイルに適した雇用形態といえます。一方、企業側にとっても正規労働者を雇うより人件費が少なく済み、雇用を生み出しやすくなるというメリットがあります。1990年代後半には、厳しい労働市場に対応するために労働や雇用においてさまざまな規制緩和が進められ、こうした雇用スタイルは拡大していきました。
増え続ける非正規労働者 広がり続ける経済格差 - 不況のリスクを一身に受ける非正規労働者 -
 こうした中、2008年秋に起こったリーマンショックをきっかけに、世界中が不況に見舞われました。日本でも輸出依存度の高い企業を中心に、非正規労働者の大幅な人員調整が行われ、不安定な雇用形態の問題が浮き彫りになりました。
 最悪の状況を抜け出した現在も雇用の拡大に慎重な企業が多く、非正規労働者は増え続けています。平成22年度の統計によると、全企業で雇用されている労働者約5111万人のうち、非正規労働者は約1756万人とおよそ3・5割に上ります。
 雇用スタイルを選べるというのは本来労働者達にとって好ましいものですが、この不況下では「派遣切り」など、契約期間内にも関わらず解雇される例も珍しくありません。さらに、非正規労働者は正規労働者と同様の仕事を任されても賃金は少なく、非正規労働者の4人に3人は年収200万円以下ともいわれ、経済格差は広がり続けています。
 昔に比べて生活は豊かになっていますが、生活困窮者のニュースは連日流れており、うつ病にかかる人や自殺者も後を絶ちません。また、不安定な雇用により結婚や出産をためらう人が増えたことが、少子化を加速させている一因とも考えられています。

- 止まない将来への不安。若者の社会生活はどうなる? -
 厚生労働省の白書によると、昨年の15~29歳の子ども・若者人口は2023万人で、そのうち現役の労働力人口(15歳以上の就業者と完全失業者を合わせた人口)は1190万人といわれています。非正規労働者は3割を超え、失業者数は96万人、フリーターは2年連続の増加で183万人となり、ひきこもりはおよそ70万人と上げ止まり状態です。
 内閣府が行っている国民生活に関する世論調査では、不安や悩みの原因で「老後の生活設計に不安や悩みがある」が8年連続で首位を独占し、「今後の収入や資産について」をあげる人も4割を超えています。年金制度の崩壊など、日本の先行きに不安を覚えて若いうちから海外に移住する人も増えてきました。
 若者が日本で夢や希望をもって働けるように、社会全体の見直しが求められるとともに、職業訓練などの求職者支援制度の充実や、自立支援のための対策が急がれています。

- 非正規労働者の支援強化が進む -
 今年2月、厚生労働省は非正規労働者への支援を強化する方針を固めました。企業への助成金の拡充などにより、正社員雇用への転換を促して雇用の安定を図るほか、賃金などを正社員と同額にするように求めて格差の解消をめざすものです。
 さらに同月末、同じ職場で5年を超えて働く非正規労働者に対して、無期雇用への転換を義務付ける「労働契約法改正案」を同省が発表しています。労働基準法では有期雇用について、1回の契約で働ける年数を原則3年以内と定めていますが、契約更新を重ねた場合は上限の規定が設けられていません。そのため、契約更新を繰り返しながら正社員同様の仕事をさせるといった実情が問題となっていました。
 法案が改正されると通算の雇用期間の上限が5年となり、これを超えた場合、企業は労働者の申し出によって無期雇用への転換を認めなければなりません。ただ、こうした雇用の固定化や環境の整備は企業にとっても大きな負担であるため、5年の契約満了前に契約を打ち切られるのでは、という意見もあります。
 景気そのものを押し上げる抜本的な改革と、厳しい経済環境下での雇用や生活安定の確保、さらに「ディセントワーク(働きがいのある人間らしい仕事)」の実現に向けた取り組みが待ち望まれています。
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