増え続ける世界の人口 水と食料は大丈夫なのか?【社会】

増え続ける世界の人口 水と食料は大丈夫なのか?

 昨年10月末に世界の人口は70億人を超えました。21世紀末には100億人を突破するそうです。人口が増えて心配なのが食べ物と水です。すでに地球上で10億人が食糧難に苦しみ、12億人が安全な飲料水を確保できないでいます。限られた地球上で、私たちはいかにして必要な水や食糧、エネルギーを確保していけばいいのでしょうか?人口問題と密接に結びついている食糧問題、水不足の問題を考えて見ましょう!

増え続ける世界の人口 水と食料は大丈夫なのか? - 今、世界の人口は1年で7800万人、1日に約21万人が増えている -
 今から約2000年前、世界人口は約2億人でした。それから1800年経って、フランスのナポレオン皇帝が活躍した頃の世界人口は約10億人でした。その後200年足らずの間に5倍増となり、世界人口は1987年に50億人を超えました。12年経った99年に60億人、さらに12年後の2011年10月末に70億人を突破したのでした。
 国連人口基金の推計によると、今後も世界の人口は増え続け、2050年には93億人、2100年までに100億人を突破すると予測しています。世界の人口は今、1年に約1億4000万人が生まれ、約6000万人が亡くなっています。つまり1年間で約8000万人が増えている勘定です。1日に約21万人、1分間に約150人というペースで増え続けているのです。

- 1800年から200年弱で10億人から50億人へ。15年後インドが人口世界一へ -
 70億人を超えた世界人口ですが、国別で見ますと1位が中国で13億5410万人。2位がインドで12億1450万人。3位アメリカの3億1760万人で、日本は1億2700万人で10位です。そして、2026年には2位のインドの人口が14億7000万人となり、中国を抜いて世界第1位になると予測されています。急テンポで進む人口増加ですが、人口の増加と経済、産業活動は密接な関係にあります。
 1800年からわずか200年足らずの間に世界の人口は10億人から50億人へ急増しましたが、それには「4つの革命」がきっかけになったといわれます。農業革命、産業革命、輸送革命、医療革命がそれです。
増え続ける世界の人口 水と食料は大丈夫なのか? - 農業、産業、輸送、医療の4つの革命で世界人口が急増 -
 まず18世紀から西ヨーロッパを中心に始まった農業革命では、輪作という新しい農法によって耕作地の高度利用が進み、囲い込み(エンクロージャー=高度な集約農業)による農業経営の近代化で、畜産や農作物の生産性が格段に向上しました。
 さらに19世紀の産業革命で、農業の機械化や農業技術が発展し、新しい肥料の開発なども含めて農作物の生産は飛躍的に増大しました。また、鉄道や船舶、自動車などによる輸送革命は、農作物などの食糧を世界中に供給できるようになりました。そして、農業革命に続く産業革命で科学技術が急速に発展し、医学や薬学の進歩は医療革命を起します。これによって飢えと疫病から多くの人々が解放され、人口増に拍車がかかりました。
 世界の人口は1959年以降、12年から15年の短い間に約10億人もの増加となっています。今、1年間に約7800万人というピッチで世界の人口が増大しているのです。

- 途上国の乳幼児死亡率の低下が人口爆発の主な原因 -
 現在、人口が急増している地域の大半は、アフリカや西アジアなどの発展途上国です。とくにサハラ砂漠から南のアフリカで人口増が著しく、国連人口基金によりますと、2000年に6億7000万人だったサハラ以南のアフリカの人口は、2010年には27・9%増えて8億5632万人となりました。2050年には倍以上の19億6000万人になる見通しです。
 どうしてこんなに人口が増えているのでしょうか?
 もともと西アジアやアフリカの発展途上国では乳幼児の死亡率が非常に高かったのです。乳幼児死亡率の高い地域では、多くの赤ちゃんが病気や栄養失調で死ぬことを前提に、たくさんの子供を産む傾向にあります。こうした一方、薬や医療技術の進歩、とくに予防接種の拡大や保健衛生の改善、貧困や飢餓をなくすための初等教育の普及などで、生まれてきた赤ちゃんの多くが元気に育ち、発展途上国で乳幼児の死亡率が減少しました。これが人口爆発の主な原因で、生まれる数が増えたというより、乳幼児の死亡率が減少して人間の寿命が延びたことによるものです。

- 世界の平均寿命は68歳。日本は83歳(男80歳、女86歳)で世界一 -
 途上国の人口急増は、これまでの多産多死から多産少死になったためです。
 世界の乳児の死亡率は、1950年代には1000人当たり133人でしたが、最近では約3分の1の46人に減少しています。世界人口白書によりますと、世界の平均寿命は乳幼児の死亡率が減ったことによって、1950年代に48歳だったものが、現在では68歳(男性66歳、女性71歳)に伸びました。ちなみに、日本の平均寿命は83歳(男性80歳、女性86歳)で世界第1位です。
 世界の平均寿命が延びたことは、それ自体歓迎すべきことですが、それは、世界全体が高齢化社会に移行していくことを意味しています。

- 進む世界の高齢化。2050年に高齢者は3倍増の15億人へ -
 すでに欧米先進国では少子高齢化が進んでいます。世界一の高齢国家である日本の場合は、4人に1人が65歳以上の高齢者で占めています。世界人口は2050年には今の1・3倍の93億人となりますが、この間に65歳以上の高齢者は3倍増の15億人に増加すると予測されています。ざっと6人に1人が高齢者となる勘定です。
 高齢化が進むとお年寄りが増大し、その生活を支えるために働く若い人の数が少なくなります。経済力は弱くなって社会全体が活力を失っていきます。やがて世界は、高齢者の医療や介護など、現在日本で論議を呼んでいるさまざまな高齢化問題への対応を迫られることになります。

- 人口問題は、世界のさまざまな問題が凝集された地球的問題だ -
 発展途上国を中心に急激な人口増が続くと、無理な食糧増産や資源争奪が環境破壊や政情不安を招き、原油や農産物の価格上昇を招いて深刻な食糧問題が発生します。
 それは新たな貧困層を拡大させ、深刻な食糧危機が社会不安を増大させて、テロや内戦の温床となっていきます。さらに、高齢化の進展で社会全体の活力が減少し、ヨーロッパの経済危機のように、経済活動が沈滞して国の財政は悪化していきます。そして、国民生活はますます苦しくなっていきます。
 人口問題は、水・食糧問題、資源エネルギー問題、地球環境問題、高齢化問題といった現代社会のさまざまな深刻な問題と密接に関連している、地球規模の問題なのです。

- 飢餓人口は約10億人。3・6秒に1人が飢えて死亡。大半は子供たち -
 増え続ける人口。このまま世界の人口が増えていって、今後も人類の生存は大丈夫なのでしょうか。一体、地球上には何人くらいまで生存することが出来るのでしょうか。
 元国立社会保障・人口問題研究所所長の阿藤誠早大特任教授は、「富を分かち合って食糧、エネルギーの過剰消費を抑えれば100億人程度は何とか地球上で支えられる」と述べています。
しかし、この瞬間にも世界ではおよそ7人に1人、約10億人が飢餓に苦しんでいます。
 国連世界食糧計画(WFP)によりますと、地域別に見た飢餓の状況は、アジア・太平洋地域が5億7800万人、サハラ砂漠以南のアフリカが2億3900万人、中南米5300万人、中東・北アフリカ3700万人などとなっています。そして飢餓に苦しむ人の約75%が、スラム街など発展途上国の大都市周辺の貧しい地域に住んでいます。しかも、世界のどこかで3・6秒に一人の割合で餓死しており、その75%が5歳以下の子供たちなのです。
増え続ける世界の人口 水と食料は大丈夫なのか? - 大規模な自然災害や内戦。
               疫病、森林破壊、砂漠化などが食糧難の原因 -

 飢餓にはさまざまな原因があります。ひとつは、地震や津波、洪水、干ばつなどの自然災害です。こうした自然災害が発生すると、農作物は大きな被害を受け、人々は家や田畑、仕事など生活基盤の多くを失っていきます。
 気候変動の影響からか、昨年のタイの大洪水に代表されるように、最近世界的に大きな自然災害の発生が目立っています。また、紛争や内戦が起こると多くの人々が家や農地を捨てて難民となり、食糧の確保はますます困難となります。HIV/エイズ、乱開発による森林破壊と砂漠化も飢餓の原因となっています。

- 世界の経済危機が食料高騰を招き、貧困と飢餓を再生産。人口・食糧問題は政治問題 -
 ギリシャから始まった欧州の財政危機や、長期間にわたる米国の経済不振、日本のデフレ不況など、先進国を中心とした世界的な景気停滞が、食糧問題をより深刻なものにしています。今、世界の金融不安や経済危機、景気の悪化によって、原油や食糧の価格が高騰しています。このため、経済力の弱い発展途上国、とくに貧困層の暮らしをますます苦しいものとしています。
 人口問題、食糧問題は極めて政治的な問題です。世界経済が落ち着きを取りもどし、発展途上国の政情が安定し、雇用が拡大して経済が成長し、国内の貧富の差が是正されない限り、人口問題と密接に結びついた食糧問題の根本的な解決は難しいといえます。
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