お金とは何なのか? お金の値打ちはどうして決まる【社会】

お金とは何なのか? お金の値打ちはどうして決まる


 何でも欲しいものが手に入るお金。お金はすべてのものと交換できますが、それはお金に価値があり、大きな信用があるからです。そんなお金はどのようにして生まれたのでしょう。そしてお金はどんな働きをするのでしょうか。改めてお金について考えてみましょう。


- 自給自足から物々交換、そして物品貨幣へ -
 買い物をするとき、私たちが当たり前のように使っているお金は、いつごろどのようにして生まれたのでしょうか。
 お金がなかった太古には、人々は欲しいものを手にいれるため物々交換をしていました。山で採れた野菜や果物と、海で捕れた魚とを交換するという具合です。
 しかし、お互いに交換したいものが一致しないとき、物々交換は成立しません。そこでよりスムーズに交換ができるように、まず自分の持ちものをお米や塩、布、珍しい石(宝石)や砂金など、だれもが欲しがるものに替えておきます。それを相手の持ち物と交換するのです。これを「物品貨幣」といいます。
 古代の中国では、貝殻がお金の代わりに使われていたので、お金や財産に関係する漢字には「貝」という字がよく使われています。例えば「資」「財」「貨」「買」「賭」「贈」「貯」「購」「賑」「費」「賃貸」などです。

お金とは何なのか? お金の値打ちはどうして決まる - BC640年ごろ古代ギリシャで最初の鋳造貨幣 -
 それでもお米や塩などの物品貨幣だと持ち運びに不便ですし、長期間保管できません。そこで、これに代わって次第に金、銀、銅など貴重な金属を使ったお金=貨幣が作られるようになりました。
 つまり、お金は物と物を交換する手段として、また物の価値を共通の尺度で表すツールとして、必要に応じて生まれたのでした。
 紀元前640年ごろ、古代ギリシャのリディア王朝で、世界最古の鋳造貨幣(エレクトロンコイン)が、金と銀の天然の合金によって作られたといわれます。
 中国では、紀元前700年ごろの春秋戦国時代に円形の円銭、刀の形をした刀貨などの貨幣が使われていました。

- 日本でお金が全国に流通したのは江戸時代 -
 日本最古の貨幣は683年頃作られた「富本銭」ですが、実際に流通した最初の公的な鋳造貨幣は708年の「和同開珎(わどうかいちん)」だといわれます。
 さらに日本で最初の金貨は、金山の開発に熱心だった戦国大名の武田信玄が、1567年に作った「甲州金」です。豊臣秀吉の「天正長大判」は世界最大の金貨として知られています。
 日本で本格的にお金が作られるようになったのは江戸時代で、徳川幕府が独占的に「金貨」「銀貨」「銅貨」の貨幣を作って全国に流通させました。
 同時にこの3つの貨幣を両替する「両替商」という、後の銀行のルーツとなる専門の店が生まれました。
お金とは何なのか? お金の値打ちはどうして決まる - 1882年にお金を発行する日本銀行が設立 -
 現在私たちが使っている「円」という単位のお金は、明治初期に決まりました。1871年(明治4年)に公布された新貨条例で、円の下に銭、厘という単位を置き、1円=100銭、1銭=10厘という10進法の通貨単位がスタートしたのです。
 その後、産業が発展したこともあって、明治政府は全国に153の国立銀行を設立して、一定の条件の下で紙幣を発行する権限を与えました。やがて1882年に日本銀行が設立され、日本銀行が発行する紙幣「日本銀行券」だけが唯一の紙幣として扱われるようになりました。

- 戦後までの紙幣は金と交換できる兌換紙幣 -
 現在のお金は、昔のようにそれ自身に価値のある金貨ではありません。紙幣のように価値のない紙きれでできているお金に、どうして値打ちがあるのでしょうか。
 銀行が発行するこれらのお金は、銀行へ持っていくとお金の値打ちを保証する「金」に交換することができました。いつでも金に交換できるということで、紙幣の価値を裏付けていたのです。
 こうした紙幣を「兌換(だかん)紙幣」といい、この通貨制度のことを「金本位制」と呼びます。日本では終戦直後まで金本位制を採用していました。

- 金本位制から米ドルを基軸とした金ドル本位制へ -
 ところが第二次世界大戦後、世界の富がアメリカに集中し、戦後全世界の70%(約2万2000トン)の金が米国に集まりました。そこで米国のドルだけが、1オンス(28・3495グラム)の金=35ドルの比率で金と交換することができると決められました。
 他の国の通貨は金と交換できませんが、米国のドルと交換できるという「金ドル本位制」が採用されました。このため、米国のドルは世界の基軸通貨と呼ばれます。
これをブレトン・ウッズ体制といい、1945年12月からスタートしました。日本は1949年からブレトン・ウッズ体制に加わりました。このとき円とドルとの交換比率は、1ドル=360円と定められました。
 金と交換できる強いアメリカのドルといつでも定められた比率で交換することができるということで、円をはじめ各国の通貨はその値打ちが保証されたのでした。ドルとの交換比率が一定に決められていることを固定相場制といいます。

【私たちの暮らしを円滑にするお金】
お金とは何なのか? お金の値打ちはどうして決まる - ニクソンショックでドルと各国通貨の交換は変動相場制へ -
 しかし、その後長期にわたるベトナム戦争で米国の財政は悪化し、強かったドルの値打ちが下がってしまって金を買い支えることができなくなりました。
 このため、1971年8月に当時のニクソン米大統領は、ドルと金との交換を中止しました。これをニクソンショックといいます。
 これによって、金とドルとの交換を前提に構築されてきた戦後のブレトン・ウッズ体制(金ドル本位制)が崩壊してしまいました。
 こうして、世界の基軸通貨であるドルと一定の比率(固定相場制)で交換されていた世界各国の通貨とドルとの交換比率は、その時々の両者間の力関係(市場の需給バランス=相場)にゆだねられることになりました。これを変動相場制といいます。現在、日本を含めた世界の通貨は変動相場制によって交換されています。最近の円とドルとの交換比率は1ドル=80円弱となっています。40年前までの固定相場制時代は1ドル=360円でしたから、日本の円はドルに対して4・5倍も値打ちが上がった(円高になった)のです。
お金とは何なのか? お金の値打ちはどうして決まる - お金には交換・保存・価値尺度の機能がある -
 ざっとお金の歴史を振り返ってきましたが、お金には一体どんな働きがあるのでしょうか。
また、世の中のほとんどすべての物と交換することができるお金の値打ち(価値)は、どうして決まるのでしょうか。
 欲しいものを手に入れる手段としてのお金には、3つの大きな機能があります。それは、「交換機能」、「保存機能」、「価値尺度の機能」です。
 この3つの機能を持つお金を使うということは、それ自体が立派な経済活動なのです。それではこのお金の機能を詳しく見ていきましょう。

- 欲しいモノと交換でき、お金に換えて価値を保存 -
 まずお金の交換機能とは、自分が欲しいモノやサービスをお金と交換する仕組みのことです。皆さんはお金を払ってジュースやCDを買ったり、ボウリングを楽しんだり映画を見たりしますが、これは欲しいものを手に入れるための、お金の交換機能が働いているためです。さらに保存機能とは、お米や果物、野菜、魚やガソリンなどのモノをお金に換えることで、そのモノの価値をいつまでも保存することができる機能をいいます。
 例えば農家が大量のお米を生産し、漁師が多くの魚を獲っても、長期間保存できません。カビがはえたり腐ってしまえば価値が無くなります。しかし、これらをお金に換えておけば、モノの価値はいつまでも保つことができ、いつでも必要なモノに替えることができます。これをお金の保存機能といいます。

- モノの値打ちは需要と供給のバランスで決まり、お金で表示される -
 モノやサービスの「価値」をお金に換算して「値段」をつけることができるのも、お金の持つ大きな特徴です。
 値段を知ることによって、モノやサービスの価値を知り、他のモノやサービスと比較することができます。
 みなさんが買い物をするとき、モノやサービスには値段(価値)が付いています。ではこの値段や価値は、だれがどのようにして決めるのでしょうか?それは需要(消費者=買う人)と供給(生産者=売る人)のバランスによって決まります。供給者が生産するモノやサービスを、消費者がお金で交換する場を「市場」と言います。
 モノ(供給)が少なく、消費者(需要)が多い時は、値段(価値)が上がります。需要が少ないのに供給が多いと、モノの値段(価値)は下がります。こうしたモノの値段(価値)は、取引する市場の需要(買い手)と供給(売り手)のバランスによって決まります。これをお金の「価値尺度の機能」といいます。
 このように、モノの値段が市場における需要と供給で決まる社会を「市場主義経済」といいます。私たちの住んでいる日本は、基本的に市場主義経済の社会です。
「お金は社会の潤滑油」
- モノ不足のインフレ、モノが売れないデフレ -
 お金があるのにモノが不足して、モノの値段が連続して上がることをインフレ(インフレーション)といいます。需要(消費)に供給(生産)が追い付かないわけで、物価はどんどん上昇し、お金の値打ちが下がっていく状態です。
 終戦間もないころの日本は、戦災で工場が焼失し、日本国中が極端なモノ不足となっていました。わずか1、2年の間に物価が何十倍にも上昇するすさまじいインフレで、人々は苦しい生活を強いられました。
 しかし、緩やかなインフレは景気を向上させる働きがあります。インフレが起こるとモノの値段は上がりますが、モノが高くよく売れるため会社の利益は向上して、働く人の給料も上がります。給料が上がればモノを多く買うようになり、たくさんのお金が勢いよく回って経済が活性化します。
 一方、モノはあるのに消費者の手元にお金が少ないため、モノが売れなくなって値段が下がることをデフレ(デフレーション)といいます。
 モノの値段が下がれば、消費者にとって一見良いように思われますが、モノを作って販売している会社にとっては、儲けが減って経営が苦しくなります。そこで給料をカットしたり、リストラで社員を首にしたりします。
 このため消費者の収入は減少して生活は苦しくなります。失業者が増えてモノを買う意欲や力が無くなります。モノはますます売れなくなって値段が下がります。そして景気はさらに悪化していきます。
 この悪循環をデフレスパイラルと言いますが、今の日本はちょうどこの状態に陥っています。
 まさにお金は社会生活を支える潤滑油の役割を果たしているといえます。
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