海外で活躍の場を広げるために【社会】

海外で活躍の場を広げるために


 急激に進展する国際化社会で活躍するには、語学力はもとより、新たな価値を創出する想像力、世界に向けて自らの考えを積極的に発信していける能力が強く求められています。しかし、近年「若者の内向き志向」の高まりで、海外への関心が低下しています。これを裏付けるように、日本人の海外留学者数は2004年を境に減少し続けているのが現状です。その原因を探るとともに、留学のあり方について考えてみることにしました。

海外で活躍の場を広げるために - 2004年以降、日本人留学生は減少 -
 日本人の海外留学者数の推移を見てみましょう。文部科学省が、OECDなどの調査によってまとめた昨年の統計では、表にあるように2009年に海外に留学した日本人は5万9923人で、前年より6910人の減少となっています。グローバル化が急速に進展しているにも関わらず、2004年以降、日本人の海外留学生の数は減少し続けています。留学先はアメリカが2万4842人で約4割を占め、次いで中国となっています。
 ちなみに、日本で学ぶ外国人留学生は、東日本大震災の影響もあってか2011年5月現在で13万8075人(前年比3699人減)と減少しています。国際交流の重要性が叫ばれる中、日本では時代の流れに反して、日本人の海外留学者も海外からの留学生の受け入れも減少しているのです。
 政府はこうした状況を踏まえ、国費による日本人学生の海外派遣制度や留学生交流支援制度を実施し、日本のグローバル化や国際競争力の強化を図っています。海外留学の大半を占める私費留学については、日本学生支援機構を通じて留学希望者に対して必要な情報を提供しています。
海外で活躍の場を広げるために - 日本人留学生減少の原因は? -
 留学する学生が減少している理由として、いわゆる「失われた20年」に生まれ、青春時代を過ごす学生の前に、就職氷河期などといったネガティブな問題が立ちふさがっていることです。この結果、多くの学生が内向き志向に陥っていることがあげられます。
 具体的には、長引く不況で保護者の収入が減り、留学を希望してもそれにかかる費用の捻出が困難になっています。また、留学による就職活動や卒業への悪影響を考え、留学に踏み切れない学生も少なくありません。さらに、情報通信網の整備であらゆる情報が簡単に入手できるため、留学に持別な価値を見いだせない学生も増えているようです。
 政府や自治体、各教育機関ではさまざまな奨学金制度の充実を図り、留学を希望する学生を支援しています。就職問題では、経団連などの経済団体に就職活動の繰り下げを要望しています。これを受けて各経済団体も前向きに検討を進め、就職時期を心配することなく海外で学べるように現在の制度的問題の解決を図っています。
 秋入学を検討している大学も目立っています。欧米の大学のように秋入学の導入で、日本人の海外留学生の派遣や優秀な留学生を受け入れやすくなり、教育の国際化や活性化を図ろうというものです。また、大学など多くの教育機関では、「知の国際化」をめざしてさまざまなカリキュラムを用意し、積極的に留学を推奨しています。
- 留学で陥りやすい問題点 -
 留学の目的はさまざまですが、その基本は学問・研究を通じて国際社会で幅広く活躍できる人材になることです。ところが、英語を中心としたコミュニケーション能力が高まったことで、国際人になったと勘違いするだけでなく、エリート意識を持つ人も少なくないようです。
 留学を経験することで世界を知り、日本をより深く理解する、外国人と接することで自分を顧みるという思考方法を構築しなければなりません。このため、自分を育んでくれた日本の歴史、その政治・経済の仕組み、言語やさまざまな文化などについて学び直す必要があります。こうした学びの過程で日本を再評価し、日本人としてのアイデンティティーを高めることができます。

- 活躍の場を大きく広げる留学経験 -
 留学を経験することで、外国語でのコミュニケーション能力は向上します。多くの外国人と接することで、現代社会が多文化共生社会であることなどを実感するでしょう。その中で、日本人としての自分の立ち位置について真剣に考えるようになります。その結果、学びに対する意欲は高まります。とかく日本人は内向きだとされますが、自ら考えまとめた意見であれば、物怖じすることなく外国人に発信することができるようになります。
 留学経験は、帰国後も多方面で生かされます。ビジネスの場でもグローバル化は進展し、日本企業の競合する相手は全世界となっています。この流れに即して、各企業の採用基準は語学力重視など大きく変化しています。学生時代に養われた「留学経験」や「コミュニケーション能力」は、以前にも増して高く評価されています。
 また、国際交流という視点では、海外青年協力隊に見られるように国際ボランティアとしての活躍の場は大きく広がっています。グローバル社会とは、互いの理解の下に政治・経済・文化など多分野で相互交流していく社会です。それを担う世界市民の育成が強く求められています。留学経験は、その大きな第一歩となるでしょう。
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