株価の動きで 景気の動向を判断【社会】

株価の動きで 景気の動向を判断


 -「株」って一体何だろう?-
 安倍政権が誕生後、株価が上昇して日本経済に明るい兆しが見え始めています。新聞やテレビの経済ニュースで必ず報道される「日経平均株価」や「TOPIX(トピックス)」といった株価指数がこれを証明しています。しかし、こうした経済用語や数字に接すると、「お手上げだ」という人も少なくないようです。毎日報道される株価指数は、景気の動向を知る上での大切な指数です。この株価指数の基礎になるのが、日々上下する株の価格です。経済に大きな影響を及ぼす「株」とは何かを考えてみました。


株価の動きで 景気の動向を判断 - 「株」はお金を集めるためのツール -
 新しく会社を立ち上げる時や、新しい事業を展開しようとすれば多くのお金が必要になります。大金持ちならいざ知らず、一般的には事業を始めるための資金集めからスタートします。しかし、銀行で新事業の将来性や事業計画を詳しく紹介しても、銀行は成功の保証が見込めない会社や事業計画に簡単にお金を貸し出すことはありません。こうした時、「株」という仕組みがあります。
 会社は新しい事業に賛同してくれる人にお金を出してもらい、その受け取り証明として「株」を発行し、儲けがでると「配当」として出資者に配分します。このように「株」を発行して集めたお金で事業を行う会社を「株式会社」、出資者を「株主」と呼んでいます。
 株式会社は多くの人に株を買ってもらうことで事業資金を集め、これをもとに幅広く事業を展開していきます。一方、株と引き換えに出資した株主も、会社があげた利益に応じて配当を手に入れることができます。もっとも、会社経営が上手くいかず、倒産するようなことになれば株券が紙屑になってしまうリスクもあります。

- 多くの配当が見込める株に人気 -
 会社がより多くの利益を出すと、株主は多額の配当を受け取ることができます。このため、株主は高配当が見込める会社の株を求めるようになります。高配当が見込める会社の株は、最初に売り出した値段に関係なく値段が上がっていきます。最初に買った値段より高く売ることができれば、株主にとってその差額が利益になります。株主は配当による利益とともに、株の売買による利益も見込めるのです。
 株主は、会社に魅力を感じなくなれば持っている株を売ることができます。しかし、いくら売りたくても買ってくれる人がいなければ売ることはできません。このように株を売ったり買ったりして株式市場が成立します。実際には証券取引所が仲介となって株の売買を行い、この結果株価が決まっていきます。

- 売買できるのは上場会社の株 -
 日本に初めて証券取引所が誕生したのは、日本の資本主義の父とも称される渋沢栄一が1878年5月(明治11年)に東京株式取引所の設立を出願したことが始まりです。日本には東京、大阪、名古屋、札幌、福岡の5つの証券取引所があります。今年1月1日付で、東京証券取引所と大阪証券取引所が経営統合され、持ち株会社として上場企業数世界3位の日本証券所グループが誕生し、7月16日に統合後初めての取引がスタートしました。
 証券取引所で株の売買が行われますが、どの会社の株でも売買できるわけではありません。売買の対象になるのは、株式数、株主数、純資産など一定の基準を満たした会社に限られます。資格を満たした会社は、市場に上がることができたという意味で「上場」と呼ばれ、上場会社は財務内容などの会社情報を投資家に公開することが義務付けられます。
株価の動きで 景気の動向を判断 - 株式市場にもいろんな種類が -
 東京証券取引所、大阪証券取引所、名古屋証券取引所には第一部と第二部があり、他にも新興企業を対象とした「マザーズ」や「ジャスダック」などがあります。一部上場企業は、さまざまな厳しい条件をクリアした企業が入っています。 なかでも、東京証券取引所の一部上場企業は、条件が厳しいことから日本を代表する企業が名を連ねています。二部は一部に比べて条件が緩いため、まず二部に上場し、会社の事業規模が拡大するにつれて一部に昇格するのが通例となっています。
 東京証券取引所が開設する「マザーズ」や大阪証券取引所の「ジャスダック」、さらに名古屋証券取引所の「セントレックス」、札幌証券取引所の「アンビシャス」、福岡証券取引所は「Q−Board」を開設し、新興企業の株の売買を行っています。
 新興企業向け市場に上場している企業は、大きな可能性を秘めている半面、急に失速してしまう可能性もあります。このため新興企業の株の売買はハイリスク、ハイリターンの取引と言われています。

- 景気が回復すると株価が上がる? -
 安倍政権が誕生以来、株価が上昇しています。株価は景気のバロメーターとも言われ、昨今の株価上昇は低迷し続けた日本経済に明るい期待を抱かせます。
 株価が上昇すると株を持つ企業や投資家の資産価値や財務内容が良くなり、株を売れば儲けとなります。この結果、新たな投資や購買力が高まります。景気が良くなり、購買力が高まると各企業の業績は向上し、さらに生産の拡大、設備投資、雇用の拡大に結び付きます。投資家は各企業の動向を見ながら、値上がりが見込める企業の株を買い求めます。新たな事業資金を得た企業はさらに業績を高め、投資家は株の買い増しや他の有望株に投資し、株価は上昇していきます。
 つまり、景気が良くなるから株価が上がり、株価が上がるから景気が良くなるという相関関係が成り立つのです。株価が下がれば、これとは逆の関係が生じます。企業と投資家の関係を紹介しましたが、この関係は国の経済政策についても同様のことがいえます。

- 安部政権の経済政策 -
 安部政権が掲げた経済政策(アベノミクス)は、大胆な金融政策、機動的な財政政策、民間投資を喚起させる成長戦略が骨子となり、デフレを脱却して景気の回復を図ろうというものです。
 金融政策では、独立性が重視された日本銀行に対し、日銀法の改正まで視野に入れた上で2%の物価目標を掲げ、目標達成まで市場に資金を供給する量的緩和策。財政政策では、過去2番目の規模となる13兆円を超える補正予算。そして、成長戦略として産業競争力会議でテーマごとに具体策をまとめ、民間投資を喚起させるというものです。
 政府はこうした経済政策を通して、円高を修正・株価上昇を図り、輸出企業の利益増加、雇用拡大・所得増、消費拡大、物価上昇、内需産業の利益拡大というシナリオを描いています。反面、補正予算のための大量の国債発行や消費税増税などによる景気減速、税収減を心配する声も聞かれます。
 いずれにせよ、景気と株価は大きく関係し、株価の変動で景気の動向を把握することができます。

- 日経平均株価とTOPIX -
 日経平均株価は、日本経済新聞社が東京証券取引所一部上場会社の中から、業種のバランスを考えながら選び出された225社の平均株価を毎日計算して発表しています。いずれも日本を代表する有名企業で、それらの平均株価を指数にすることで日本全体の株式市場の値動き、さらに日本の景気動向を把握しようというものです。この225社は、毎年見直しが行われ少しずつ入れ替わっています。
 TOPIXとは、Tokyo Stock Price Indexの頭文字をとったもので、東証株価指数とも呼ばれています。東京証券取引所一部上場企業の株価の時価総額(各企業の株価×発行株数)を、基準日の1968年1月4日を100とした場合の時価総額の変化を示す指標で、市場全体の動きを反映しています。
 日経平均株価やTOPIXで示された数値は、株式相場全体の流れを読み取り、株価変動の傾向や景気の動向を判断する目安となるのです。
株価の動きで 景気の動向を判断 【株式会社の歴史】
 株式会社のルーツは、1602年に設立されたオランダ東インド会社にまで遡ります。
 当時のヨーロッパは大航海時代を迎え、イギリスを始めとするヨーロッパ各国は東南アジアを中心に香辛料などを中心とした貿易を行っていました。
 東南アジアへの航海には莫大な費用がかかります。このため、何人かの人が資金を出し合い、航海が成功して持ち帰った香辛料などで得た利益を分配していました。オランダ東インド会社は、航海ごとに資金を集め、利益を分配するという方法から永続的に続く方法として株式会社を設立したのです。その都度行われる利益配分から、現在の株の配当の仕組みの原型を作り上げました。
 日本で最初の株式会社は、1873年に渋沢栄一らによって設立された「第一国立銀行(現みずほ銀行の前身)」です。第一国立銀行が国立銀行条例に基づいて設立されたのに対し、一般会社の法規である「商法」に基づいて最初に誕生した会社が「日本郵船」で、実質的には日本郵船が日本初の株式会社といえます。
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