4月から消費税は5%から8%へ【社会】

4月から消費税は5%から8%へ


【消費税増税で暮らしや経済はどうなる】
  今年4月から、消費税が5%から8%に引き上げられます。増大する社会保障費の財源不足をカバーするのが大きな理由です。しかし、国民の家計を圧迫して消費が落ち込み、景気の足を引っ張ると批判する声も強いようです。来年の秋にはさらに2%アップが予定されていますが、私たちの暮らしや経済にどう影響するのでしょうか。


4月から消費税は5%から8%へ - 消費税は間接税の一種 -
 私たちがコンビニやスーパーでモノを買うと、定価の5%の消費税を含んで支払います。消費税とはモノやサービスを「消費」した時にかかる税金で、代表的な間接税です。
 間接税とは、税金を支払う人と納める人が異なる税金のことです。消費税を支払うのは消費者ですが、納めるのは消費者から税金を預かったお店や事業者です。このほか関節税には、酒税やたばこ税、揮発油税などがあります。
 これに対して所得税や法人税、住民税などのように個人や会社が直接税務署に納める税金を直接税といいます。

- なぜ今、消費税を上げるのか? -
 消費税は現在世界のほとんどの国で実施していますが、日本では1989年(平成元年)4月に初めて導入されました。
 当時は3%でしたが、9年後の1997年4月から現在の5%となりました。5%の消費税の内訳は4%が国税、1%が地方税となっています。
 消費税は「高齢者福祉対策のため」という名目で導入されました。今度の消費税率の引き上げは、「年金や医療など社会保障の安定化と充実のため」といわれています。なぜ今、消費税のアップが必要なのでしょうか?
4月から消費税は5%から8%へ - 日本は10数年間デフレ不況が続いている -
 日本は1990年代の終わりごろから長期のデフレ不況に突入しました。デフレというのは市場にモノがあふれて供給過剰になり、物価が継続的に下落する状態をいいます。
 商品やサービスの価格が下落すると企業の売上が低下して収益は悪化します。このため企業は経費を切り詰めるために賃金をカットしたり、リストラ(人員整理)を行ったりします。
 企業もそこで働く人も収入が減り、失業者は増えて庶民の暮らしは苦しくなっていきます。モノはますます売れずに経済は縮小し、企業や国民が納める税金も減って、国や自治体の財政も苦しくなっていきます。この繰り返しをデフレスパイラルといいますが、日本は10年以上もこうした状態が続いています。

- 社会の高齢化で年々増大する社会保障費 -
 一方、少子高齢化が進んで年金や医療などの社会保障費(社会保障給付金)は年々増大しています。2010年には初めて100兆円を突破しました。
 社会保障給付金は主に個人と事業主が支払う社会保険料と、国や地方の税金で成り立っています。
 しかし、長期の不況で保険料収入は横ばいで推移し、増大する給付金と保険料収入の差は毎年1兆円規模で拡大しています。その分、国や地方の負担が増えています。
 2012年度の社会保障費は約110兆円で、国の負担分の約30兆円の多くが借金でまかなわれています。
4月から消費税は5%から8%へ - 消費税増税分約8兆円を社会保障費に -
 厚生労働省では、団塊の世代(1947~49年生まれ)がすべて75歳以上となる2025年には、社会保障給付金が150兆円近くになると予測しています。
 これを支える現役世代は減少の一途をたどるため、現在の社会保障制度を持続するにはほかに安定した財源の確保が必要となります。それが消費税率のアップです。
 今年4月から8%となる消費税の増税分は約8兆1000億円となる見通しです。政府はこれを年金、医療、介護、子育ての社会保障4分野の維持・強化に充てようとしています。

- 消費税増税は家計を圧迫し景気の悪化を招く -
 野党の多くも社会保障制度を維持・強化するためには消費税のアップもやむを得ないという考えですが、実施時期や内容について多くの批判が上がっています。
 その最大の理由は、今年4月から消費税を上げれば、長いデフレ不況で苦しんでいる国民の家計をさらに圧迫し、一層景気の悪化を招くというものです。
 調査会社などの試算では、夫婦と子供2人で年収500万円前後の一般的な家庭で年間約7万円の負担増になるといいます。
 食費をはじめとした生活必需品に一律にかかる消費税のアップは、所得が低い人ほど負担が増大し、年金生活者など老齢者の生活を直撃します。

- 政府は「景気の腰折れ」防止に5兆5000億円の経済政策 -
 増大する社会保障費の赤字を補てんするために消費税を上げても、これによって景気が悪化すれば企業経営も国民の暮らしもさらに苦しいものになります。
 このため、政府は景気の「腰折れ」を防ぐために5兆5000億円規模の経済政策を打ち出しました。東京五輪に向けた物流や交通網の整備、インフラの老朽化対策、震災復興などの公共事業が中心です。
 このほか、住宅購入者への現金給付(所得に応じて最大30万円まで)や、低所得者に対する一時的な現金の支給(1人あたり1万円~1万5000円)などを予定しています。
4月から消費税は5%から8%へ - 国家予算の半分以上は借金(国債)で -
 しかし、こうした経済政策はあくまで一時的な景気の下支えにすぎません。
 日本の財政を見てみましょう。2013年度の一般会計の国家予算は約92兆6000億円です。支出の部(歳出)で最も多いのが社会保障費の約30兆円で全体の31%、次いで国債の償還(借金返済)が約22兆円で同24%、自治体への地方交付金が約16兆円で同18%となっています。
 これに対して主たる収入(歳入)である税収は、長期のデフレ不況で減少を続けて43兆960億円(46.5%)しかありません。
 その他の収入を除いて足りない分(赤字分)の42兆8510億円(46.3%)は、国債の発行による借金でまかなっています。

- 日本はGNP比で世界最大の「借金大国」 -
 歳入の不足分をまかなうために発行する国債を赤字国債といいますが、国債は期限が来れば利子を付けて返済しなければなりません。
 日本は1966年以来赤字国債を発行し続けてきた結果、2013年3月で借金総額(国債残高)は1240兆円に上っています。
 この額はGDP(国内総生産)473兆円の2倍以上(2.24倍)で、GDP比ではアメリカの1.13倍、イギリスの1.1倍を大きく引き離して世界最大の〝借金大国〟となっています。

- 消費増税でどうなる景気回復と財政再建 -
 長引くデフレ不況を脱却するためには、一日も早い景気の回復が急がれます。また、年々赤字が膨らむ一方の国の財政を早急に立て直さなければ、医療や年金、教育などの行政サービスに支障が出てきます。
 消費税は今年4月に8%となり、来年10月にさらに10%へ引き上げられる予定ですが、安倍首相は「景気の状況を見極めて決断したい」と慎重な姿勢を見せています。
 現在、政府は景気の回復を図りながら財政赤字を是正するという非常に難しい課題に直面しています。消費税率のアップがどう影響するのかを注意深く見守っていきたいと思います。
【世界の消費税は?】
- 欧米では生活必需品の消費税を減免 -
 消費税は世界各国で実施していますが、実態はどうなのでしょうか。
 EU先進国ではイギリスが20%、ドイツは19%、フランス19・6%、イタリア21%などとなっています。中国は17%、韓国は10%、ロシアは18%です。また、北欧のスウェーデン、デンマーク、ノルウェ―は25%、フィンランドは24%と高くなっています。
 日本と同じ5%というのはカナダ、台湾、ナイジェリアで、1けた台もスイスの8%、タイやシンガポールの7%といったところです。税率だけを比較すれば、日本の消費税は8%となっても世界的には低いといえるでしょう。
 しかし、ヨーロッパの多くの国では教育費や医療費が無料で、年金や医療などの社会保障が充実しています。デンマークを例に取れば、すべての医療費は無料で、入院も出産もお金はかかりません。また、大学まで学校の教育費も無料で、国民すべてに平等な教育の機会が与えられています。
 さらに65歳以上の人は掛け金無しで年金が支払われるなど、日本では考えられない高度な福祉政策がとられています。それは25%の消費税や、収入の半分近い45%もの高い所得税によって支えられています。
 日本の消費税は不動産や郵便、医療などの1部を除いてすべての商品に一律に課税されます。しかし、先進国の多くは食料品などの生活必需品とそうでない商品では税率を分けて設定しています。
 これを軽減税率といい、イギリスやメキシコ、カナダなどでは食料品や医薬品などの生活必需品は、無税かもしくは低い税率になっています。アメリカは州によって消費税率が異なりますが、ほとんどの州で食料品や医薬品には税金がかかりません。
 日本政府も低所得者の負担を軽減するため、消費税が10%の時点で、生活必需品への課税を減免する軽減税率の導入を検討しています。
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