動物の所有者に「終生飼養」を義務付け【社会】

動物の所有者に「終生飼養」を義務付け


【17万匹を超えるペット(犬・猫)が殺処分に!!】
 犬や猫といったペットは、古くから飼い主の生活に潤いや安らぎ、喜びを与える存在として可愛がられてきました。社会が複雑化する近年では、その傾向がより顕著になっています。
 反面、動物に対する虐待行為や動物取扱業者や飼い主による不適切な扱いで、放棄される動物は少なくありません。また、鳴き声や臭気などで周囲に迷惑をかけてしまう問題も依然として数多く起こっています。
 動物取扱業者や飼い主から放棄された犬や猫は、各自治体の動物愛護センターに集められて新たな飼い主を待ちます。しかし、このセンターから引き取られる犬猫は10%にも満たず、多くはガス室で殺処分されます。2011年度の犬・猫の殺処分総数は17万4742匹にも達しています。
 こうした状況を受け、昨年9月から改正動物愛護管理法が施行され、飼い主は動物が命を終えるまで適切に飼養する「終生飼養」の責任が明記されました。

動物の所有者に「終生飼養」を義務付け - ペットは命ある生き物 -
 ペットには命があり、ペットを飼うということはペットに適した環境を維持し、生涯にわたって飼い続けることが飼い主の責務です。このため、飼い主は動物の健康と安全を守り、他人に迷惑をかけず、感染症などの病気の知識を持ち、万一の時を考えて飼い主が誰か分かるようにしなければなりません。さらに、ペットの健康を保つために、自宅の近くに獣医師がいるか確認することも必要です。
 予期しないアクシデントに遭遇し、ペットを手放さなければならない時は、代わりに飼ってもらえる人を探さねばなりません。動物愛護センターなどの行政機関に犬猫の引き取りを申し出ても、引き取り先が見つからなければ1週間程度の間に殺処分されるのが現実です。

- ペット(犬・猫)に関する法律 -
 ペットに関する法律として、動物に関する基本的な事項を定めた動物愛護管理法。飼育している動物が他人に被害を与えた時の損害を原則として賠償しなければならないと定めた民法718条。犬の登録やワクチン接種を義務づける狂犬病予防法などがあります。さらに、環境省が定める省令や各自治体が定めるペット条例などがあります。
 動物愛護管理法(動物の愛護及び管理に関する法律)は、1973年に制定された法律で、その後改正が重ねられ、一昨年9月に改正動物愛護管理法が公布され、昨年9月から施行されています。動物愛護管理法の基本原則は、すべての人が「動物は命あるもの」であることを認識し、みだりに動物を虐待することがないようにするだけでなく、人間と動物が共に生きていける社会をめざし、動物の習性をよく知ったうえで適性に取り扱うように定めています。
 法律では飼い主の責任、動物取扱業者の規制、家庭動物や展示動物、実験動物などの飼育や保管などについて細かく規制され、飼養環境の変化に伴なって改正されてきました。

動物の所有者に「終生飼養」を義務付け 改正動物愛護管理法の主なポイント
- 終生飼養の徹底 -
 今回の改正で、飼い主は動物の寿命の限り飼い続けることが明記されました。動物取扱業者も、販売が困難になった動物であっても終生飼養を求められています。都道府県は、終生飼養に反する引き取り(動物取扱業者からの引き取り、繰り返しての引き取り、老齢や病気を理由とした引き取りなど)を拒否できるようになりました。また、これまでも行われていましたが、自治体が保護したり引き取った犬猫は飼い主に返還、あるいは新しい飼い主に譲渡する努力が義務付けられました。
 この結果、ペットショップで衝動買いし、途中で飽きたからと手放したり、引っ越しなどで放置することはできなくなります。どうしても手放さなければならない時は、代わりに飼育してくれる人を探さなければなりません。

動物の所有者に「終生飼養」を義務付け - 動物取扱業者による適正な取り扱い -
 これまでの「動物取扱業」は、「第一種動物取扱業」という名称に変更されました。犬猫を販売する第一種動物取扱業者は、飼養する犬猫の飼養状況について記録し、登録している都道府県に毎年報告することが義務付けられました。
 また、幼齢動物の販売も規制されました。幼齢のうちに子犬や子猫を親元から引き離すと、吠え癖や咬み癖がつき、攻撃的になるなどの問題行動を起こす可能性が高まります。今回の改正で、犬猫の販売に関しては生後56日(当面は45日)を経過しない犬猫の販売は禁止されました。飼い主にとっても、生後一定期間は親兄弟と一緒に過ごし、社会性を身に付けた犬猫の方がしつけやすく長い目で見ると得策といえるでしょう。
 販売にあたっては対面販売が義務化されています。店員が動物を販売する時は、購入者に直接その動物を見せながら、適切に飼養するために必要な情報を説明することが義務付けられています。この規定のため、インターネットなどによる犬猫などの販売は事実上不可能になりました。
 さらに、夜間展示販売も禁止されました。ペットショップの販売時間は午前8時から午後8時までとなりました。これまで繁華街などでは深夜まで営業が続けられ、動物は狭いショーウインドーの中で煌々と照明に照らされて十分な休息が取れず、動物愛護などといった観点から問題が多いと指摘されていました。

動物の所有者に「終生飼養」を義務付け - 第二種動物取扱業の届出 -
 今回の改正動物愛護管理法により、新たに「第二種動物取扱業」が設けられました。非営利であっても飼養施設を持ち、一定頭数以上の動物を取り扱う団体(動物愛護団体などの動物シェルター、公園などでの非営利展示など)は、あらかじめ都道府県への届出が必要となりました。
 一定頭数以上とは、馬・牛・ダチョウなどの大型哺乳類や鳥類は3頭以上、犬・猫・うさぎなどの中型の哺乳類・鳥類・爬虫類などは10頭以上、それ以外の動物については50頭以上を飼養する場合が対象となります。

- 災害時の対策 -
 私たちは東日本大震災によって甚大な被害を受けましたが、動物たちにとっても大きな悲劇を引き起こしました。その経験を未来に生かすために、災害時に動物の適正な飼養及び保管に関する施策を、都道府県が策定する動物愛護管理推進計画に追加されました。
 飼い主は万一の災害に備えて、事前に各自治体に同行避難の可能性や方法などについて確認しておくことが必要です。

悲しい犬・猫の殺処分の現状
- 飼い主の無責任さと行政の対応 -
 日本では2011年度に、17万4742匹もの犬や猫が自治体の施設で殺処分されました。このところ減少傾向にはあるものの、これだけ多くの犬猫が飼い主の身勝手さや無責任な扱いで尊い命を絶っています。
 この背景には、ペットブームを反映してペットショップが増加するとともに、ネット販売でもペットを安易に入手できるようになったことがあげられます。しかし、年月を経るに従って、安易な理由で捨てられてしまう例が後を絶ちません。そして、自治体が設けている動物愛護センターも、手間や費用がかかる保護や譲渡よりも、殺処分を選ぶことが通例となっています。大量の殺処分の背景には、このような現実が横たわっています。

- ペットを飼う前に考える -
 今回の改正動物愛護管理法の根幹は、「終生飼養」の義務を飼い主に求めていることです。動物は種類によって寿命が異なります。動物の寿命と、それを見送る頃の自分の年齢を考えてみましょう。また、その間に引っ越しで飼えなくなったり、仕事や子育てなどで忙しく飼育が困難になったり、病気で世話が難しくなったり、予想外に大きくなりすぎた、鳴き声などで近隣に迷惑などといった問題が起こるかもしれません。こうした問題が発生しても、最後まで責任を持って飼えるでしょうか。
 将来の見通しも立てずに衝動的にペットを手に入れると、後で困った事態に陥り、結果として放棄につながります。放棄した者は100万円以下の罰金が科せられますが、捨てられた動物は近隣住民に迷惑をかけるとともに、野生から切り放たれたペットには帰るべき自然がなく、衰弱して悲しい死を迎えてしまうのです。

- 保護したペットの譲渡を推進 -
 これまで犬猫の引き取り義務があった自治体は、今回の法改正で場合によっては引き取りを拒否できるようになりました。昨年9月の法改正以降、引き取りがどのように推移しているか注目されますが、動物愛護センターに保護される野良犬や野良猫が急激に減少するとは考えられません。
 殺処分ゼロをめざすには、ペットの放棄をなくすことが一番大切ですが、保護されたペットを新しい飼い主に譲渡するシステム作りも急がれます。動物愛護センターや保健所の殺処分ではなく、譲渡に対する取り組み強化に期待するとともに、各地でNPOとして活躍する動物愛護団体や他の各種団体などが一体となった取り組みが求められています。

動物の所有者に「終生飼養」を義務付け 特定動物や特定外来生物を飼うには
 動物愛護管理法では、人の生命や財産などに害を与える恐れのあるトラ、タカ、ワニ、マムシなど約650種を特定動物として指定し、それを飼う場合は都道府県知事の許可が必要です。許可を得るためには、動物が逃げ出さないための強固な施設を確保するとともに、万一飼えなくなった時の譲渡先の確保が求められています。
 特定外来生物とは、海外から持ち込まれた外来種のうち、日本の生態系などに被害を及ぼす生物のことで、輸入・飼養などは規制され、野外へ放つことは禁止されています。特定外来生物には北米原産のアライグマや東南アジア原産のガビチョウ、北米原産のミドリガメなど107種類が指定されています。なかでも、野外で繁殖したアライグマは、農作物被害や家屋侵入のほか、日本の生態系にも悪影響を及ぼしています。こうした被害を防ぐため、無許可で特定外来生物を飼養したり野外へ放った場合、個人で懲役3年以下または300万円以下の罰金、法人で1億円以下の罰金が科せられます。
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