「会社」って、一体何なのだろう?【社会】

「会社」って、一体何なのだろう?


【会社で働くことの意味を考える】
 私たちの周りにはたくさんの会社があり、多くの人がそこで働いて生計を維持しています。近い将来、多くの皆さんが会社で働くことになると思います。ところで、〝会社って一体何なのだろう〟と考えたことがありませんか? 漠然としたイメージは湧くものの、正確に答えることはなかなか困難です。分かっているようで、分からない部分が多い会社について考えてみました。


●会社ができたのはいつ?

「会社」って、一体何なのだろう? - 会社の起源は「東インド会社」 -
 会社とは、会社法によって設立された営利を目的とする社団法人です。分かりやすく言えば、お金を儲けるという共通の目的を持つ人たちの集合体で、得られた利益は構成員に配分するというものです。
 株式会社の起源は、1602年に設立されたオランダの「東インド会社」にまで遡ります。当時のヨーロッパは大航海時代を迎え、オランダやイギリスを始めとするヨーロッパ各国は、アジアの物産である香辛料、絹、綿などを求めて東方交易に乗り出します。
 しかし、アジアへの航海は莫大な費用がかかります。このため、何人かの人が費用を出し合うことで東方交易を可能にし、航海から持ち帰った香辛料などで得られた利益をその都度出資者に分配していました。そして、利益の分配を永続的に続ける方法として、現在の株による配当の仕組みを作り上げました。
「会社」って、一体何なのだろう? - 日本初の会社は「第一国立銀行」 -
 日本で最初に誕生した株式会社は、日本資本主義の父ともいわれる渋沢栄一らによって1873年に設立された「第一国立銀行(現在のみずほ銀行)」とされています。
 第一国立銀行は、国立銀行条例に基づいて設立されましたが、一般会社の法規である「商法」に基づいて最初に設立されたのが「日本郵船」です。このため、実質的には日本郵船が日本初の株式会社といえるかも知れません。





●会社という組織について考える
「会社」って、一体何なのだろう? - 新会社法が2006年に制定 -
 これまで、会社の形態として株式会社、有限会社、合資会社、合名会社の4種類がありました。2006年にスタートした新会社法では、株式会社と有限会社が株式会社に統一され、合名会社と合資会社も合資会社に一本化されました。そして、新たに生協のような合同会社(LLC)の新設が認められました。
 従来、株式会社は1000万円、有限会社では300万円の資本金が必要でしたが、新会社法では1円でも会社を作れます。さらに、株式会社では3人以上の取締役が必要でしたが、新会社法では1人でよくなりました。
 つまり新会社法には「起業」を後押しする要素が多く取り入れられ、会社を作りやすくなったのです。

- 会社という組織の仕組み -
 「東インド会社」の所でも触れましたが、現在でも、基本的には当時と同じシステムで会社は機能しています。株主がお金を出して株を買うことで、株式会社は存在します。つまり、株を持っている人が会社の所有者であることから、会社で一番偉いのは株主ということになります。多くの人が株を持っている場合、その比率分だけ会社を所有しているということになります。
 中小企業などでは、自分一人で資金をだして株式会社を作ることがあります。その株式を公開しなければ、会社の株は全て自分のものなので、社長であり会社の所有者でもあります。

- 取締役会は最高意思決定機関 -
 株主が株主総会で取締役を選び、この取締役が取締役会を開いて代表取締役、つまり社長を選びます。社長は取締役会を指揮して会社を運営していきます。 会社が順調に機能していけば問題ありませんが、業績が悪化したりすると取締役会から退任が申し渡されます。この取締役を選任するのが株主ですから、株主の力がいかに大きいかがわかります。このため、取締役会を構成する取締役は、株主の立場に立って仕事をするのが本来の姿です。
 取締役になるといったん会社を退職し、経営者として会社経営にあたります。しかし、取締役はそこの会社に社員として就職し、そこで育ってきた人が大半です。このため、どうしても社員や自分のことに目を向けがちになり、株主との意思疎通が不十分になる可能性があります。こうなると株主に不都合が生じることが考えられます。
 そこで誕生したのが社外取締役です。近年、自動車のリコール隠しや食品の偽装問題などが相次いでいます。そのため、株主が会社とは関係しない人を社外取締役として選任し、異なった視点で客観的に会社の経営をチェックしてもらうというものです。
 取締役は不祥事を防止し、株主にも社員にも迷惑をかけず、社会に必要とされる会社にするために非常に大きな責任を負っています。

●日本経済を支えてきた日本的経営

- 日本的経営の特徴 -
 戦後、長年にわたって日本の会社を支えてきたのは、終身雇用、年功序列、企業内組合といった日本的経営です。
 会社に採用されれば、不祥事などを起こさない限り解雇される心配がなく、定年まで安心して働けるのが終身雇用です。また、年功序列とは、年齢を重ねるにつれて給料が増え、社内におけるランクも係長、課長、部長と上がっていきます。労働組合も欧米などの産業別組合とは異なり、会社ごとに組合が設けられ、自分の会社の労働環境の向上を第一に考えます。
 日本的経営は、社員に愛社精神を沸き立たせ、会社に忠誠心を誓う構造になっています。この結果、社員は会社のためならと身を粉にして頑張ってきたのです。戦後の日本の目覚ましい発展は、こうした日本的経営に支えられてきたといえるでしょう。

- 増える成果主義の導入 -
 バブル崩壊以降、日本経済は長い不況に陥ります。昨年12月の衆議院選挙で大きな論点になったのは、日本の経済政策の在り方だったことは周知の通りです。
 会社も長い不況下にあってさまざまな対策を模索し、その中でアメリカ式の成果主義が注目され、導入を目指す会社が増えてきました。日本的経営は、ともすれば会社への甘えが生じ、生産性の向上には繋がらないと考える経営者が増えてきたのです。成果主義の導入で、一生懸命に働いて成果を上げた社員への報酬を高め、他の社員と差をつけることで競争意識を高め、働く意欲を全社的に盛り上げようというものです。
 しかし、成果主義には多くの問題点があります。明確な評価の基準を示せるのか、成果が見えにくい部署の評価は、本社と地方との関係、さらに評価を意識するあまり社内全体が萎縮してしまう可能性も考えられます。
 成果主義の導入は、成果を追いかけ過酷な労働を強いるブラック企業の出現、退職を迫る追い出し部屋の設置、非正規労働者の増加などといった深刻な労働問題と無関係とはいえないでしょう。

●会社に就職するということ
「会社」って、一体何なのだろう? - 会社を見極めるためには -
 会社は営利を目的とする法人であるため、利益を出し続けて行かなければなりません。会社の業績が上がれば、社員の待遇も向上し、採用の増加も見込めます。社員の収入が増加することで商品の売れ行きが上がり、国に納める税金も増えます。このように会社の業績は、会社を構成する人たちだけでなく多くの人に影響を与えます。つまり、会社は社会的存在として機能しているのです。
 こうした循環をきちんと維持している会社がいい会社だといえます。しかし、これまで税金逃れをして摘発された会社は数えきれません。利益を最優先するあまり、環境破壊を引き起こした会社もありました。重大な事故を起こしても、不適切な対応に終始した会社もありました。
 就職にあたっては、会社の知名度や規模の大小だけでなく、社会的責任を果たしている会社かどうかを見極めることが大切です。

- 会社と学生は選び、選ばれる関係 -
 会社への就職を考えている皆さんは、近い将来には採用試験に臨むことになります。その時、前記のような良い会社、自分の適性に見合った会社、将来の可能性を秘めた会社、先輩などから聞く社風などを考えて応募すると思います。
 学生に会社は選ばれているのです。実際、多くの学生が押し寄せる会社と応募者が少なくて人材確保に頭を悩ませている会社が数多くあります。前者は大企業、後者は中小企業との間でよくみられる現象ですが、それ以外にも知名度や業種などによっても起こります。
 つまり、会社と学生との関係は、選び、選ばれる関係にあるわけです。会社は応募者を様々な角度から評価します。一方、学生は面接時に感じる会社の雰囲気から自分に相応しい会社かを詳細に判断できます。このため、面接時にはあるがままの自分を表現し、会社に判断を委ねましょう。もし不採用となっても、互いに求めるものが異なったわけで、落ち込む必要はありません。

- 会社と契約を結んで社員に -
 会社に採用されると、会社が作成した就業規則が渡されます。就業規則とは、社員間で不平等が生じないように給与、労働時間、休日などの労働条件をまとめて明文化したものです。社員はこれを守る義務があり、違反すると懲罰を受け、最悪の場合はクビという厳しい処分が待っています。
 会社も、就業規則に沿って社員の労働に報いなければなりません。よく問題になるのが残業代の支払いです。残業代が規則通りに支払われている会社は案外少ないものです。社員が残業代を請求しにくい雰囲気がある会社もあるようです。上司や先輩との関係で、サービス残業を余儀なくされるケースもあります。何れも就業規則に反しているためきちんと断るべきです。就業規則を順守する会社こそ良い会社なのですから。
 会社とは、漠然と考えている以上に複雑な組織です。将来、自分が会社で働くという立場で今から会社を観察すれば、きっと新しい発見があると思います。

「会社」って、一体何なのだろう? 【会社と個人】- 青色LEDの開発は誰のもの -
 昨年、青色発光ダイオード(青色LED)を開発した赤崎勇氏、天野浩氏、中村修二氏の三氏がノーベル物理学賞に選ばれました。赤崎氏と天野氏は名古屋大学で研究を進め、徳島県の日亜化学工業に勤務していた中村氏は、青色LEDの開発・実用化に大きく貢献しました。
 この結果、日亜化学工業は莫大な利益を得ましたが、社員としての中村氏には2万円が支払われたに過ぎません。失望した中村氏は、会社を退職してアメリカのカリフォルニア大学サンタバーバラ校へ転職し、2004年に発明の対価として200億円の支払いを求める裁判を起こしました。
 東京地方裁判所では、発明の対価を約600億円と算定。日亜化学工業に200億円の支払いを命じました。二審の東京高裁は和解を勧告し、結局中村氏に8億4000万円を支払うことで和解が成立しました。
 この裁判を契機に、「発明は誰のもの」という議論が沸き起こりました。日本的経営という立場では、会社の支援なしでは発明は困難だという主張が重きをなします。一方、成果主義では、発明の当事者に然るべき対価を支払うべきだということになります。日本的経営と成果主義の問題が話題になっていますが、皆さんは青色LEDの発明を巡る一連の動きについてどう考えますか?
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