人口減社会と地域再生を考える【社会】
【「地方創生」で人口減少は克服できるか?】
日本の人口は2008年をピークに減少を続け、2060年には8674万人まで落ち込むと見られています。とくに地方の人口減少は深刻で、2040年の時点で全国約1800市町村の半数近くが消滅する可能性があるといわれます。安倍政権は昨年11月に「まち・ひと・しごと創生法」(地方創生法)を成立させ、地域の活性化を目指した「地方創生」の長期ビジョンと総合戦略を打ち出しました。人口減少と地域再生の問題を考えて見ましょう。
- 人口減少が進み2060年には2・5人に1人が老人 -
第二次大戦が終わった1945年に約7200万人だった日本の人口は、戦後の第1次ベビーブームで爆発的に伸び、67年に1億人を突破しました。しかし2008年の1億2800万人をピークに人口は減少を始め、このまま減少が続けば日本の人口は2050年に1億人を切り、60年には8674万人になるといわれます。
人口減少は出生率の低下によるものですが、一方で平均寿命が伸びて高齢者が増え、人口全体に占める子供の割合が減る少子高齢社会が一段と進んでいます。
国立社会保険・人口問題研究所の推計によりますと、65歳以上の割合を示す高齢化率は現在の約25%から60年には40%に跳ね上がり、2・5人に1人が老人という超高齢社会が到来します。
- 出生数が死亡数を下回る自然減が年々拡大 -
今年1月1日の時点で20歳の新成人は126万人でした。総人口に占める新成人の割合は0・99%で、5年連続で1%を割り込んでいます。
新成人が最も多かったのは70年の246万人で、その後減少に転じて80年代から94年度まで上昇し、その後20年間減少を続けています。
厚生労働省の推計によりますと、昨年国内で生まれた日本人の赤ちゃんは前年より2万9000人少ない100万1000人で、統計の残る1899年以降最少を更新しました。
一方、昨年の死亡者は戦後最多の126万9000人で、出生数が死亡数を下回る「自然減」は26万8000人で過去最大となりました。
婚姻件数も2014年は前年より1万2000組少ない64万9000組で戦後最少を更新しています。
第二次大戦が終わった1945年に約7200万人だった日本の人口は、戦後の第1次ベビーブームで爆発的に伸び、67年に1億人を突破しました。しかし2008年の1億2800万人をピークに人口は減少を始め、このまま減少が続けば日本の人口は2050年に1億人を切り、60年には8674万人になるといわれます。
人口減少は出生率の低下によるものですが、一方で平均寿命が伸びて高齢者が増え、人口全体に占める子供の割合が減る少子高齢社会が一段と進んでいます。
国立社会保険・人口問題研究所の推計によりますと、65歳以上の割合を示す高齢化率は現在の約25%から60年には40%に跳ね上がり、2・5人に1人が老人という超高齢社会が到来します。
- 出生数が死亡数を下回る自然減が年々拡大 -
今年1月1日の時点で20歳の新成人は126万人でした。総人口に占める新成人の割合は0・99%で、5年連続で1%を割り込んでいます。
新成人が最も多かったのは70年の246万人で、その後減少に転じて80年代から94年度まで上昇し、その後20年間減少を続けています。
厚生労働省の推計によりますと、昨年国内で生まれた日本人の赤ちゃんは前年より2万9000人少ない100万1000人で、統計の残る1899年以降最少を更新しました。
一方、昨年の死亡者は戦後最多の126万9000人で、出生数が死亡数を下回る「自然減」は26万8000人で過去最大となりました。
婚姻件数も2014年は前年より1万2000組少ない64万9000組で戦後最少を更新しています。
- 人口減少は将来国家の維持が危ぶまれる事態に -
日本の人口は2005年に初めて自然減に転じて以来8年連続で減少となりましたが、07年以降減少幅は拡大し、10年は10万人、11年には20万人を突破しました。このまま人口が減少して高齢化が進むとどうなるのでしょうか。
まず日本経済を支える労働者不足が深刻になり、経済規模が縮小して生活水準が低下します。経済活動の担い手である15歳から64歳までの生産年齢人口は現在の7901万人から2060年には4418万人に減少すると予測されています。
人口が減少して経済が縮小すれば税収が減少し、さまざまな公共サービスや社会保障も今までの様に維持することが難しくなります。商業施設や病院、学校なども減少して働く場所も減っていきます。
防災や衛生、医療、福祉、治安など社会生活のあらゆる面で大きな影響を受けることになり、最終的には国家の維持が危ぶまれる恐れが出てきます。
- 2040年には全国の市町村の半分が消滅の危機 -
有識者でつくる日本創成会議が、昨年5月に日本の将来人口を独自に算出して公表したリポートによりますと、2040年には全国の自治体の49・8%にあたる896の市町村で20~30歳の女性が5割以上減り、うち523市町村は人口が1万人未満になるといいます。
こうした自治体では人口の維持が難しく、人口減少が加速して消滅する可能性があると指摘しています。
人口が減少するのは生まれる子供の数が少ないためですが、日本の出生率は世界で最も低い水準にあります。
日本の人口は2005年に初めて自然減に転じて以来8年連続で減少となりましたが、07年以降減少幅は拡大し、10年は10万人、11年には20万人を突破しました。このまま人口が減少して高齢化が進むとどうなるのでしょうか。
まず日本経済を支える労働者不足が深刻になり、経済規模が縮小して生活水準が低下します。経済活動の担い手である15歳から64歳までの生産年齢人口は現在の7901万人から2060年には4418万人に減少すると予測されています。
人口が減少して経済が縮小すれば税収が減少し、さまざまな公共サービスや社会保障も今までの様に維持することが難しくなります。商業施設や病院、学校なども減少して働く場所も減っていきます。
防災や衛生、医療、福祉、治安など社会生活のあらゆる面で大きな影響を受けることになり、最終的には国家の維持が危ぶまれる恐れが出てきます。
- 2040年には全国の市町村の半分が消滅の危機 -
有識者でつくる日本創成会議が、昨年5月に日本の将来人口を独自に算出して公表したリポートによりますと、2040年には全国の自治体の49・8%にあたる896の市町村で20~30歳の女性が5割以上減り、うち523市町村は人口が1万人未満になるといいます。
こうした自治体では人口の維持が難しく、人口減少が加速して消滅する可能性があると指摘しています。
人口が減少するのは生まれる子供の数が少ないためですが、日本の出生率は世界で最も低い水準にあります。
- 欧米先進国の中でも低い日本の出生率 -
1人の女性が生涯に産む子供の平均的な数を合計特殊出生率と言いますが、2013年時点の日本の合計特殊出生率は1・43です。これはアメリカの2・1、フランスの2・0、イギリスの1・9、オランダの1・8、カナダの1・7など他の先進国と比べてもかなり低いことが分かります。
戦前日本の合計特殊出生率は4~5で、戦後の第1次ベビーブームが始まった1947年は4・5でした。70年代に入ってほぼ2・1で推移していましたが、2・1を切った75年以降は出生率の低下が続いています。
- 人口減少対策は21世紀日本の最大の課題 -
日本の出生率が低い原因の一つには、女性の社会的進出が進んで晩婚化傾向が強まり、平均初産年齢(第1子を出産する年齢)が30歳を超えて高くなったことがあげられます。
長時間労働する女性の割合が増え、子育てにかかる経済的、時間的負担などを考えて2人目の子供をあきらめる人が増えていることも影響しています。
21世紀の日本の最大の課題は人口減少対策だといえます。日本の人口は2050年までに、首都圏のすべての住民に相当する3000万人以上の人がいなくなる勘定です。
経済規模を示す国内総生産(GDP)を維持しつつ、いかにして出生率を高めて人口減少に対応していくかが大きなテーマとなっています。
人口減少をどう克服していくのか。それは人類史上でもかつて経験したことのない難問だといわれます。
1人の女性が生涯に産む子供の平均的な数を合計特殊出生率と言いますが、2013年時点の日本の合計特殊出生率は1・43です。これはアメリカの2・1、フランスの2・0、イギリスの1・9、オランダの1・8、カナダの1・7など他の先進国と比べてもかなり低いことが分かります。
戦前日本の合計特殊出生率は4~5で、戦後の第1次ベビーブームが始まった1947年は4・5でした。70年代に入ってほぼ2・1で推移していましたが、2・1を切った75年以降は出生率の低下が続いています。
- 人口減少対策は21世紀日本の最大の課題 -
日本の出生率が低い原因の一つには、女性の社会的進出が進んで晩婚化傾向が強まり、平均初産年齢(第1子を出産する年齢)が30歳を超えて高くなったことがあげられます。
長時間労働する女性の割合が増え、子育てにかかる経済的、時間的負担などを考えて2人目の子供をあきらめる人が増えていることも影響しています。
21世紀の日本の最大の課題は人口減少対策だといえます。日本の人口は2050年までに、首都圏のすべての住民に相当する3000万人以上の人がいなくなる勘定です。
経済規模を示す国内総生産(GDP)を維持しつつ、いかにして出生率を高めて人口減少に対応していくかが大きなテーマとなっています。
人口減少をどう克服していくのか。それは人類史上でもかつて経験したことのない難問だといわれます。
- 昨年11月に「地方創生法」が成立 -
出生率を向上させるうえで、今最も急がれるのが子育て環境の整備です。保育所の充実や企業が子育てしやすい職場環境を整えること。さらに若年層の安定した雇用を確保し、安心して子育てができる経済的に安定した暮らしができる社会の形成です。
安心して出産し子育てできる社会を構築することは、国の最重要課題なのです。
安倍政権は昨年9月に「まち・ひと・しごと創生本部」を内閣府に設置し、2015年度から人口減少対策に国と地方が一体で取り組む方針です。
さらに昨年11月に、政府の施策を実行するための「まち・ひと・しごと創生法」(地方創生法)が成立し、12月に「まち・ひと・しごと創生長期ビジョン」と今後5年間の具体策を示した「総合戦略」が打ち出されました。
- 2060年に人口1億人の維持目指す -
地方創生の長期ビジョンでは、2060年に1億人程度の人口を維持することを目標にしています。このため合計特殊出生率を、2020年に1・6程度、2030年に1・8程度を目指します。
2040年に人口が一定になる2・07を達成すれば、1億人の人口維持が可能だと試算しています。
また2015年度から19年度までの5カ年計画の総合戦略では、全国の3割の人口が集中している東京一極集中の是正を打ち出しています。
東京圏は毎年約10万人の人口が転入超(純増)となっていますが、2020年までに他府県から東京圏への転入を年間6万人減らし、東京圏から地方への転出を4万人増やして東京圏への人口集中に歯止めをかける計画です。
- 地方へ新しい人の流れをつくる -
このほか総合戦略では、国や自治体が結婚から出産、子育て、就学までの期間を切れ目なく支援すると共に、約30万人の若者の雇用を地方で確保するとしています。
地方に安定した雇用を創出して人口の受け皿とし、地方への新しい人の流れをつくって人口の地方還流を促進しようというものです。
研究所など政府機関を地方に誘致し、地元大学への進学率を高めるとともに、女性の就業率を2013年の70・8%から20年に73%に引き上げる方針です。
- 雇用の拡大と安心して子育てができる環境整備を -
具体的には1次産業の農林水産業を、加工や流通、販売を含めた「6次産業化」によって新たに5万人の雇用を生みだし、市場規模を現在の約2兆円から10兆円に拡大を目指すとしています。
また、企業の地方拠点強化や地域の中堅企業支援などの経済活性化策で11万人、サービス産業のIT化、生産性の向上で6万人、観光産業の振興で8万人の新たな雇用を創出していく方針です。
若者の就業率を現在の75%から78%に、地方の新卒者の地元就職率を72%から80%に、第1子出産前後に女性が継続して就業する率を38%から55%にそれぞれ引き上げるとしています。
●日本の人口の推移
明治以降の140年で人口は4倍に
稲作の普及と国家の形成によって日本の人口は急速に拡大しました。歴史人口学者の鬼頭宏博士の研究によりますと、1800年前の弥生時代に60万人弱だった人口は奈良時代には450万から500万人を数えたといいます。
平安時代は農民一人ひとりに公地を割り当てた戸籍、班田収授制の崩壊や西日本を中心とした異常気象による干ばつ、天然痘の蔓延などの影響で人口の伸びは頭打ちとなり、平安時代中期から鎌倉時代の約300年間、人口は600万〜700万人程度の低迷期が続きました。
室町時代から戦国時代は、二毛作や牛馬の活用、灌漑施設の整備などで農業の生産性が向上し、戦国大名が意欲的な開発領主として土地の開墾に力を注ぎ、領国の統合などで人口が大きく増えました。
室町幕府成立時(1338年)に約800万人だった人口は、戦国時代を経て江戸幕府が開かれた1603年頃には約1200万人となりました。
江戸時代に入って、名主的な有力農家の下で隷属関係にあった農民が小農として自立が進み、生産性の高い労働集約的な家族経営主体の近世農家へ変革を遂げて人口はさらに拡大しました。
明治維新の頃には人口は3300万人を数え、さらに近代国家になった日本は高い出生率と死亡率の低下で人口爆発をもたらし、太平洋戦争前後には約7200万人となりました。
戦後の復興と高度経済成長と共に人口はさらに急増を続け、ピークの2008年には1億2800万人を数え、明治維新から数えて140年で日本の人口は約4倍に増えました。
出生率を向上させるうえで、今最も急がれるのが子育て環境の整備です。保育所の充実や企業が子育てしやすい職場環境を整えること。さらに若年層の安定した雇用を確保し、安心して子育てができる経済的に安定した暮らしができる社会の形成です。
安心して出産し子育てできる社会を構築することは、国の最重要課題なのです。
安倍政権は昨年9月に「まち・ひと・しごと創生本部」を内閣府に設置し、2015年度から人口減少対策に国と地方が一体で取り組む方針です。
さらに昨年11月に、政府の施策を実行するための「まち・ひと・しごと創生法」(地方創生法)が成立し、12月に「まち・ひと・しごと創生長期ビジョン」と今後5年間の具体策を示した「総合戦略」が打ち出されました。
- 2060年に人口1億人の維持目指す -
地方創生の長期ビジョンでは、2060年に1億人程度の人口を維持することを目標にしています。このため合計特殊出生率を、2020年に1・6程度、2030年に1・8程度を目指します。
2040年に人口が一定になる2・07を達成すれば、1億人の人口維持が可能だと試算しています。
また2015年度から19年度までの5カ年計画の総合戦略では、全国の3割の人口が集中している東京一極集中の是正を打ち出しています。
東京圏は毎年約10万人の人口が転入超(純増)となっていますが、2020年までに他府県から東京圏への転入を年間6万人減らし、東京圏から地方への転出を4万人増やして東京圏への人口集中に歯止めをかける計画です。
- 地方へ新しい人の流れをつくる -
このほか総合戦略では、国や自治体が結婚から出産、子育て、就学までの期間を切れ目なく支援すると共に、約30万人の若者の雇用を地方で確保するとしています。
地方に安定した雇用を創出して人口の受け皿とし、地方への新しい人の流れをつくって人口の地方還流を促進しようというものです。
研究所など政府機関を地方に誘致し、地元大学への進学率を高めるとともに、女性の就業率を2013年の70・8%から20年に73%に引き上げる方針です。
- 雇用の拡大と安心して子育てができる環境整備を -
具体的には1次産業の農林水産業を、加工や流通、販売を含めた「6次産業化」によって新たに5万人の雇用を生みだし、市場規模を現在の約2兆円から10兆円に拡大を目指すとしています。
また、企業の地方拠点強化や地域の中堅企業支援などの経済活性化策で11万人、サービス産業のIT化、生産性の向上で6万人、観光産業の振興で8万人の新たな雇用を創出していく方針です。
若者の就業率を現在の75%から78%に、地方の新卒者の地元就職率を72%から80%に、第1子出産前後に女性が継続して就業する率を38%から55%にそれぞれ引き上げるとしています。
●日本の人口の推移
明治以降の140年で人口は4倍に
稲作の普及と国家の形成によって日本の人口は急速に拡大しました。歴史人口学者の鬼頭宏博士の研究によりますと、1800年前の弥生時代に60万人弱だった人口は奈良時代には450万から500万人を数えたといいます。
平安時代は農民一人ひとりに公地を割り当てた戸籍、班田収授制の崩壊や西日本を中心とした異常気象による干ばつ、天然痘の蔓延などの影響で人口の伸びは頭打ちとなり、平安時代中期から鎌倉時代の約300年間、人口は600万〜700万人程度の低迷期が続きました。
室町時代から戦国時代は、二毛作や牛馬の活用、灌漑施設の整備などで農業の生産性が向上し、戦国大名が意欲的な開発領主として土地の開墾に力を注ぎ、領国の統合などで人口が大きく増えました。
室町幕府成立時(1338年)に約800万人だった人口は、戦国時代を経て江戸幕府が開かれた1603年頃には約1200万人となりました。
江戸時代に入って、名主的な有力農家の下で隷属関係にあった農民が小農として自立が進み、生産性の高い労働集約的な家族経営主体の近世農家へ変革を遂げて人口はさらに拡大しました。
明治維新の頃には人口は3300万人を数え、さらに近代国家になった日本は高い出生率と死亡率の低下で人口爆発をもたらし、太平洋戦争前後には約7200万人となりました。
戦後の復興と高度経済成長と共に人口はさらに急増を続け、ピークの2008年には1億2800万人を数え、明治維新から数えて140年で日本の人口は約4倍に増えました。