「マイナンバー制度」がスタート【社会】

「マイナンバー制度」がスタート


 マイナンバー(社会保障・税番号)制度が今年1月からスタートしました。マイナンバー制度とは、国民すべてに12桁の番号を割り振り、各人の税金や社会保障などに関する情報をまとめて管理する制度です。
 政府はマイナンバー制度の導入で、各種行政サービスの効率化や国民の利便性の向上、公平・公正な社会の実現を目指します。その一方、個人情報の流出による「なりすまし」などの犯罪が心配されています。

「マイナンバー制度」がスタート - マイナンバー導入に至る経緯 -
【40年以上前から導入を検討】
 共通番号制度の導入は40年以上も前から議論されてきました。当時の佐藤内閣は、1968年に個人コード連絡研究会議を設置し、「国民総背番号制」の導入を検討しました。しかし、国家による個人情報の管理やプライバシーの侵害など、導入に反対する声が高まり途中で頓挫しました。その後、共通番号制度の必要性が議論されましたが、政府は慎重に対処するという態度でこの問題を先送りしてきました。
 こうした中、2007年の第1次安倍内閣の時に年金納付記録問題、いわゆる「消えた年金」問題が発覚しました。当時、財政赤字が拡大する中、「団塊の世代」が定年退職の時期を迎えていました。団塊の世代の老後を支える年金管理のずさんさが浮き彫りになり、共通番号制度導入の議論が本格化しました。

【2013年にマイナンバー法が成立】
 民主党は、2009年の総選挙のマニフェストに「税と社会保障制度共通の番号制度の導入」を掲げました。菅直人内閣は2011年に「社会保障・税番号大綱」を閣議決定し、翌年に関連法案を国会に提出しましたが、衆議院の解散で一旦は廃案になりました。
 しかし、政権交代後の第2次安倍内閣は、民主党案をベースに「社会保障・税番号制度」を再度国会に提出し、2013年5月にマイナンバーに関する法案が成立しました。
 このマイナンバー制度が今年1月からスタートしたのです。ちなみに、「マイナンバー」という名称は、国民からの公募で選ばれたものです。また、キャラクターの「マイナちゃん」も公募で選ばれたキャラクターです。
「マイナンバー制度」がスタート - マイナンバー制度の仕組み -
【通知された「マイナンバー」】
昨年10月から12桁のマイナンバーの通知が始まり、昨年中に簡易書留で住民票を持つ全ての国民に通知されました。生まれたばかりの赤ちゃんでも、出生届けを出して住民票が作成されるとマイナンバーが通知されます。外国籍であっても住民票のある人は対象になります。ただ、日本国籍のある人でも海外に在住し、住民票のない人には通知されません。
 通知された12桁のマイナンバーは、番号の漏えいや不正使用の恐れがある場合を除き、原則として一生変更されません。番号が気に入らないからといって、途中で変更することはできません。

【「個人番号カード」とは何のこと?】
通知カードは全ての人に通知されましたが、身分証明や各種行政サービスを受けるには顔写真が入った証明書が必要になります。
 マイナンバー制度の大きな特徴は、希望者にICチップと写真が付いた「個人番号カード」が発行されることです。個人番号カードを必要とする人は、市町村に申請すれば無料で公布されます。個人番号カードを取得すれば、本人確認はもとよりe-Tax(納税システム)や印鑑登録書など、ネットを利用したさまざまな手続きや公的電子証明書として利用できます。
 マイナンバー制度導入後は、就職、転職、出産、病気、年金、災害など多くの場面で個人番号の提示が必要になります。その際、通知カードだけだと、別に運転免許証や旅券などの本人確認書類が必要になりますが、個人番号カードがあれば一枚で番号確認と本人確認が可能になります。
 個人番号カードには有効期限があります。カードに付いている顔写真に容姿の変化があるため、20歳以上は10回目の誕生日まで、20歳未満は5回目の誕生日までが有効期限となっています。もちろんマイナンバーが変わることはありません。

【社会保障・税・災害対策からスタート】
マイナンバー制度は、社会保障・税・災害対策の三分野からスタートしました。
 社会保障分野では、年金や雇用保険の資格取得や給付、ハローワークでの事務手続きなどで利用されます。また、医療保険の給付の請求、児童福祉手当や生活保護など福祉分野の給付や手続きなど各種行政サービスでマイナンバーが必要になります。
 税制分野では、税務署に提出する支払い調書や源泉徴収票、確定申告書など税に関する各種書類に利用されるほか、税務署の内部事務にも利用されます。
 災害対策分野では、被災者生活再建支援金の支給などの事務手続き、被災者台帳の作成事務にも利用されます。
 国民がこの三分野に関係する手続きを行う場合、申請書などにマイナンバーの記載が求められます。税や社会保険の手続きでは、事業主や保険会社などが個人に代わって手続きを行う場合があります。この場合は、勤務先や保険会社などにもマイナンバーの提出が求められます。

【公正・公平を目指して利用範囲拡大】
マイナンバー制度は三分野からスタートしましたが、政府は利便性や利用範囲の拡大を目指しています。昨年9月、改正マイナンバー法が成立して利用範囲が拡大しました。
 法改正によって、金融機関は2018年1月から預金者の同意があれば、口座番号とマイナンバーを結びつけることが可能になります。これにより、政府は個人の所得だけでなく預金など金融資産を把握することができます。この結果、税務署による税務調査などの際、預金残高が分かりやすくなり、脱税や年金の不正受給の防止につなげることができます。
 医療分野では、来年から特定健診(メタボ献身)の履歴に加え、予防接種の履歴もマイナンバーと結びます。これは医療保険者の転職や居住地の変更があった場合、過去と現在の情報をスムーズに継承するためです。健康に関する情報を管理することで、生活習慣病の予防や医療費削減を目指しています。
 また、地方公共団体の要望を受け、公営住宅や特定優良賃貸住宅の管理にもマイナンバーを導入して行きます。このように来年以降、マイナンバーの利用範囲が拡大していきます。
「マイナンバー制度」がスタート 【企業にもマイナンバーが必要に】
企業は社員やパートやアルバイトなどへの給与支払い明細書に個人番号の記載が必要になります。また、源泉徴収票などにも個人番号が記載されるので、企業は従業員やその扶養家族、パートやアルバイト、個人委託している外注先などのマイナンバーを収集しておかなければなりません。法人間での商取引は、13桁からなる法人番号を利用します。
 企業がマイナンバーを収集するのは、税務署や年金事務所、健康保険組合などに提出する書類に今年からマイナンバーの記載欄が設けられているからです。これによって、公正な税制や社会保障の実現を目指しています。
 今後、就職時やアルバイトなどに就く場合、マイナンバーの提示が求められます。会社から使用目的や管理・保管方法などの説明を受けた上で提示してください。これは法律で決められた義務となっています。
「マイナンバー制度」がスタート - 心配される個人情報の流出 -
【個人も企業も厳しい管理・保管】
 今後、マイナンバー制度が浸透し、ICチップ付きの個人番号カードが普及していくと、利便性が高まるとともに利用範囲も拡大していきます。身近なものでは、運転免許証、パスポート、健康保険証、キャッシュカード、さらにコンビニでの公的証明書の交付などへの利用が考えられます。
 今後、さらに貴重な情報がマイナンバーに書き加えられると予測されます。このため、いったん情報が流出すると多大な被害、時には危険にさらされる可能性があります。個人情報が書き込まれたマイナンバーは、情報が蓄積されて行くにつれて個々人の全的存在となっていくからです。

【警戒したい情報流出や不正利用】
政府は、2017年1月から「マイナポータル(情報提供等記録開示システム)」を実施します。マイナポータルとは、自分専用のサイトです。個人番号カードを使って自分専用のサイトに入り、これまでの情報のやり取りの確認や、このサイトから各種社会保険料の支払い、引っ越し時に発生する各種の行政手続きが一括してできます。高齢者やパソコンのない人は、公的機関に端末が設置されるパソコンを利用することができます。情報を電子化・一元化することで利便性は一層高まります。
 しかし、近年サイバー攻撃やハッカーによる不正アクセスが頻発しています。政府機関でもサイバー攻撃を受ける今日、マイナポータル内にある個人情報が覗かれる危険性があります。すでにマイナンバー制度に便乗した詐欺事件が起こっています。日本に先行してマイナンバーを導入している国では、番号が盗用されて知らない間にローンが組まれる「なりすまし」や、ショッピングで勝手に使用される事件などが数多く報告されています。
 このため、政府は特定個人情報保護委員会を設置し、マイナンバーを取り扱う行政機関や地方公共団体、民間事業者を監視・監督や、罰則の強化を図っています。しかし、これで心配がゼロになるわけではありません。個々人が情報の厳しい管理・保管を図り、情報流出に備えたいものです。

- マイナンバー制度を導入している国 -
【マイナンバー制度では日本は後発国】
世界は数多くの国でマイナンバー制度を導入しています。名称や用途は国ごとに異なりますが、基本は共通番号を導入していることです。アメリカでは1936年に「社会保障番号」、イギリスは1948年に「国民保険番号」、イタリアは1977年に「税務番号」をはじめ、ドイツ、オーストラリア、オランダ、カナダ、中国、韓国など数多くの国が導入しています。先進国の中で、日本の導入は遅かったといえます。このため、日本のマイナンバー制度は、各国の制度の優れた点を取り入れる形で制度設計されたといわれています。
 早くから導入したアメリカは、銀行口座やクレジットカード作成、納税や医療分野などで使用されています。スウェーデンではアメリカ以上に幅広い分野で使われ、オーストラリアでは日本と同様に利用範囲が限定されています。
 このように共通番号制度は世界に普及していますが、各国が抱える共通の課題は情報の流失による犯罪の多発です。遅れてスタートした日本が、この難問にどう対処していくか見守って行きたいものです。
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