18歳成人について考える【社会】

18歳成人について考える


 政府は成人年齢を20歳から18歳に引き下げる民法改正案を今通常国会に提出し、法案成立後早ければ2020年にも18歳成人が実現します。高校生で成人を迎えることになりますが、成人になるとはどういうことでしょうか。社会生活を送る上で、成人の権利を持つことの責任とリスクについて考えてみました。

18歳成人について考える - 18歳成人のきっかけは国民投票法 -
 日本では長く20歳を成人としてきました。20歳成人は1876年(明治9年)の太政官布告で、課税や兵役の基準年齢を20歳としたことに由来し、1896年(明治29年)に制定された民法で「満20歳をもって成年とす」と規定されました。以来100年以上を経て20歳成人が定着してきましたが、2007年5月に成立した日本国憲法の改正手続きに関する法律(国民投票法)をきっかけに、成人年齢の引き下げの動きが加速しました。  国民投票法の附則第3条第1項で、公職選挙法や民法などの規定に検討を加え、選挙権年齢や成人年齢の引き下げに向けた必要な法制上の措置を講ずることが明記されました。

- 早ければ2020年にも18歳成人へ -
 国民投票法は2010年5月に施行され、同年6月に公職選挙法が改正されて「18歳選挙権」が実現しました。昨年7月の参議院選挙で初めて18歳から国政選挙の投票が行われました。「18歳選挙権」に続いて「18歳成人」が早ければ3年後に迫ってきましたが、それは様々な側面で成人としての権利を持つと共に、成人としての責任やさまざまなリスクを負うことにもなります。例えば成人になれば18歳でも親の同意なしにローンやクレジットカードの契約ができるようになります。しかし、悪質な業者による不当な契約被害に遭った場合、未成年なら親の同意のない契約を取り消すことができますが、成人になれば不用意に高額な買い物をしても契約を取り消せないことになります。

- 契約被害や労働被害に注意 -
 また、アルバイトなどの労働契約が未成年者に不利であると認められた場合、親などが労働基準法に基づく解除権によって労働契約を解除することができます。しかし18歳成人になると18歳、19歳が解除権の対象から外される可能性が高くなります。このためブラック企業、ブラックバイトなどによる労働被害の拡大が懸念されます。一方、結婚が可能な年齢は現在男性が18歳、女性が16歳ですが、18歳成人によって男女とも18歳からとなる見通しです。

- 注目集める少年法の適用年齢 -
 民法の成人年齢の引き下げで関心が集まっているのが、飲酒や喫煙などの解禁年齢と少年法の適用年齢への影響です。20歳未満の飲酒、喫煙は未成年者飲酒禁止法、未成年者喫煙禁止法で禁じられています。それぞれ法改正しなければ18、19歳には認められません。飲酒・喫煙を巡っては日本医師会が、健康上の理由を挙げて解禁年齢の引き下げに反対しています。今後すべての世代を対象にした健康政策の一環として慎重な議論が望まれます。少年法では20歳未満を「少年」とし、罪を犯した未成年の保護や更生を主眼に置いて、成人とは異なる刑事手続きを定めています。18歳成人が実現して少年法の適用年齢が引き下げられると、18歳、19歳の人に対する家庭環境などを考慮した再非行防止のための、教育的働きかけや保護支援を受ける機会が奪われることになります。このため再犯リスクを高めるのではという懸念があります。

- 世界の潮流は18歳成人 -
 世界各国の成人年齢はここ数十年で続々と18歳成人に変更されました。法務省が2008年に調査したデータによりますと、世界187カ国・地域のうち成人年齢を20歳以上としているのは43カ国で全体の23%です。ほとんどの国が18歳成人となっています。欧米先進国を中心としたOECD(経済開発協力機構)に加盟する30カ国の中でも、20歳を成人とするのは日本だけで、韓国が19歳、他は18歳を成人としています。欧州の主要国であるイギリスやドイツ、フランスなどは1960年代から70年代にかけて成人年齢を21歳から18歳に引き下げました。いずれも学生運動をきっかけに、「僕たちにも選挙権を与えろ」「私たちも大人として認めて欲しい」という若者層の政治意識の高まりから、選挙権年齢とともに成人年齢が引き下げられた経緯があります。 イギリスは69年、ドイツとフランスは74年、イタリアは75年に18歳成人に変更されました。日本では政府が一方的に決めるだけで、若者層から成人年齢引き下げを求める声はほとんど聞かれません。

- 「成人年齢の歴史」 -
成人に備えて必要な知識を蓄えよう
 江戸時代の武士社会では数えで15歳になれば「元服」を行い成人となりました。この風習は奈良時代から行われ、庶民の間でも男子は12歳から16歳の時期に行われていたようです。女性の場合も元服とは別の「髪上げ」が、12歳から15歳の間に女性の成人の儀式として存在しました。  元服、髪上げの時までは子供ですが、その後は大人としての権利と責任(義務)が発生します。大人と子供の間の「青春期」はかつて存在しませんでしたが、社会構造が高度化、複雑化するにつれて、大人への準備期間としての青春期が生まれ、その期間は伸びてきたようです。高校生の皆さんは大人への助走期間として、間近に迫った成人に備えて、社会生活の中で自分の身を守るために必要な知識を蓄えることが大切です。
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