ユーチューバー、新しく生まれた人気職業【社会】

ユーチューバー、新しく生まれた人気職業


 【時代とともに変わる、子どもの職業観】
 子どもや若者が憧れる職業は、時代の変化や技術の革新によって変化していきます。近年では、ユーチューバー(YouTuber)が、子どもの「将来なりたい職業」の上位にランクされるようになってきました。ユーチューバーは、2010年頃に生まれた新しい職業です。子どもや若者が憧れる職業が、どのように変化していったのか。これから先、ユーチューバーのような新しい職業がさらに生まれてくるのかについて考えてみました。

ユーチューバー、新しく生まれた人気職業 【職業ランキングに見る子供たちの将来像】

- 将来の職業としてユーチューバーが人気 -
 ユーチューバーが、日本FP協会が実施する「小学生の『将来なりたい職業』ランキング」の男子児童の部で、第11回(2017年度)、第12回(2018年度)と2年続けて6位にランクされました。ソニー生命の「中高生が思い描く将来についての意識調査2017」の「将来なりたい職業」のランキングでも、「YouTuberなどの動画投稿者」が、男子中学生の部で3位に、女子中学生の部で10位にランクインし、男子高校生の部でも10位に入りました。2010年頃から社会に認知されはじめたユーチューバーが、今や子どもや若者の人気職業になったことを、社会は驚きつつも注目しています。

- 時代とともに変わる子どもの将来の夢 -
 子どもたちの職業観の変化は、ユーチューバーの登場以外にもあります。男子、女子に分けて集計をはじめた第3回(2009年度)と、直近の第12回(2018年度)の「小学生の『将来なりたい職業』ランキング」を見比べてみました。
 男子児童の部のランキングでは、第3回と第12回は、ともに1位と2位が同じで、野球選手関連とサッカー選手関連でした。「医師」、「ゲーム制作関連」、「教師」、「科学者・研究者」も両方にランクインしており、ベストテンのうち6つまでが同じ職業でした。しかし、第12回には、これまでベストテンに入ったことのない「会社員・事務員」が5位に入っていました。具体的な職業や仕事内容ではなく、「企業や組織で働く」ことを「将来なりたい職業」として挙げる男子児童が多くなっています。
 一方、女子児童の部は、男子児童の部より顕著な変化がありました。第3回のランキングでは、「デザイナー各種(5位)」、「小説家・作家(7位)」、「漫画家(同7位)」、「歌手・ミュージシャンなど(10位)」と、クリエイティブな仕事が多く見られました。しかし、第12回になると、クリエイティブな仕事は8位の「ファッションデザイナー」のみとなり、他は「看護師(2位)」、「医師(3位)」、「保育士(4位)」など、すべて資格が必要な職業があがっています。女子児童の志向は、より堅実な方向に変わってきたことが伺えます。
ユーチューバー、新しく生まれた人気職業 - 将来について考える子どもが増加 -
 ソニー生命が、2011年に中学生を対象に実施した『将来に関するアンケート調査』で、「自分の10年後を具体的に考えているか」と質問したところ、「具体的に考えている」と答えた生徒は7・3%でした。同社が17年に行った「中高生が思い描く将来についての意識調査2017」で同様の質問をしたところ、「具体的に考えている」と答えた生徒は25・5%となり、わずか7年で3倍以上に増えました。
 同じく「中高生が思い描く将来についての意識調査2017」で、中学生に「10年後の日本に明るい見通しを持っているか」と質問したところ、「明るい」と答えた生徒は全体の19%にとどまり、「どちらかといえば明るい」を足しても38・5%にすぎません。
 自分自身の将来について具体的に考え、なおかつ将来への見通しが暗いと感じる若者が増えたことも、堅実な仕事や、これまでにない新しい仕事に興味を持つ若者が増えたことと関係していると考えられます。

【子どもたちが憧れる、新しい職業】

- 広告で収入を得るユーチューバー -
 ユーチューバーは、職業として知られるようになって、まだ10年も経たない新しい職業です。ユーチューバーは、インターネット上にある動画共有サービス「ユーチューブ(YouTube)」に自身のユーチューブチャンネルを開設して、独自の動画を配信する人たちです。
 ユーチューブは、2005年にサービスが始まり、今では全世界に10億人以上のユーザーがおり、1日に40億回以上の動画が再生される巨大な市場を形成しています。ユーチューバーの主な収入は、このユーチューブ上での広告収入です。ユーチューバーが配信した動画には、ユーチューブを運営するグーグルのプログラム「グーグルアドセンス」によって、配信した動画の最初や途中に広告が表示されます。視聴者がこの広告をクリックしたり最後まで視聴したりすると、広告収入を得ることができます。
 グーグルは、広告費について公表していませんが、一般的には「動画再生回数×0・1円」が目安とされています。そのため、月10万円を稼ぐには、月間100万回再生をめざす必要があります。
 ユーチューブへの動画配信は、グーグルアカウントさえあれば誰でも簡単に行うことができます。以前は、ユーチューブのガイドラインに従って動画配信を行えば、すぐに広告が配信されました。しかし、17年4月からは「動画再生回数1万回以上」という条件がつき、18年1月からは「過去12ヵ月間の総再生時間が4000時間以上」「チャンネル登録者が1000人以上」という条件が加わりました。これらの条件を達しないと広告配信がされません。ユーチューバーとして収入を得るには、まずこの条件に達するまで良質な動画を投稿し続けなくてはいけません。
ユーチューバー、新しく生まれた人気職業 - 収入、好感度ともに高いトップユーチューバー -
 日本のユーチューバーの草分け的な存在であり、今もトップレベルの人気を誇るのがHIKAKIN(ヒカキン)です。ヒカキンは自身の動画を集めた「ユーチューブチャンネル」を4つ開設しており、チャンネル登録者数を合算すると1400万人以上にのぼります。動画の再生回数が年間およそ50億回で、広告収入だけで7~8億円と推測されています。ここに企業とのタイアップ広告や、役員を務めるユーチューバーのマネジメント業務を行う株式会社UUUM(うーむ)の報酬を合わせると、10億円を超える年収があると推測されています。つまり、常に見てもらえる動画の工夫はもちろん、それを生かした新たな仕事の創出をしているわけです。
 また、ヒカキンは、新潟日報が小学校1~6年生を対象に行った「友達になりたい有名人」ランキングで、芸能人やマンガのキャラクターを差し置いて全学年で1位となりました。このようなトップユーチューバーへの憧れや人気が、ユーチューバーをめざす子どもや若者を増やす要因になっています。

- 新たな人気職業として注目されるプロゲーマー -
 プロゲーマーもまた、近年、日本社会に認知されるようになってきた新しい職業です。プロゲーマーは、ゲーム会社が主催する大会に出場して賞金を稼いだり、ゲーム会社とスポンサー契約を結んでゲームのプロモーションに関わったりすることで報酬を得ます。
 日本ではじめてプロゲーマーになったのは、2D型格闘ゲームのプレイヤーとして世界的に有名な梅原大吾です。梅原は2010年にゲーム周辺機器メーカーのマッドキャッツ株式会社とスポンサー契約を結び、プロプレイヤーになりました。
 日本FP協会の「小学生の『将来なりたい職業』ランキング」では、第10回(2016年度)の女子児童の部ではじめて118位にプロゲーマーが登場しました。その後、第11回(2017年度)の男子児童の部で99位に、第12回(2018年度)で45位に登場し、じわじわと順位を上げてきています。
 日本でのプロゲーマーは、やっと人気が出はじめたところですが、欧米や中国、韓国ではすでに人気職業として定着しています。とくに韓国では、子どもが就きたい職業ランキングで1位、2位を争う職業です。また、プロゲーマーが対象とするゲームは「eスポーツ(エレクトロニック・スポーツ)」と呼ばれ、2022年のアジアオリンピック(アジア競技大会)で正式種目に選ばれるなど、着実に地位を築きつつあります。
ユーチューバー、新しく生まれた人気職業 - 日本でもできつつあるプロゲーマー活躍の土壌 -
 海外では高額な賞金を得られるゲーム大会が頻繁に開催されています。中国で開催される「Leagueof LegendsWorld Championship」の賞金総額は約5億円、アメリカで開催される「ELEAGUE」は約1億円です。最大のゲーム大会となるのが、毎年8月にアメリカで開催される「The International」です。これはDota2というパソコンゲームの大会で、賞金総額はおよそ27億円にのぼります。
 eスポーツの世界市場は「ファミ通ゲーム白書2017」によると、2017年段階で700・9億円、オーディエンスは3億3500万人でした。日本は同年段階で、市場規模が5億円未満、オーディエンスは158万人と、世界から見ると未だ発展途上の段階です。しかし、18年に一般社団法人日本eスポーツ連合(JeSU)が発足し、プロライセンス制度をはじめるなど、プロゲーマーが活躍できる土壌が整備されつつあります。
ユーチューバー、新しく生まれた人気職業 【技術の発展とともに職業も変化】

- およそ半分の仕事をAIやロボットが代替 -
 株式会社野村総合研究所と、オックスフォード大学のマイケル・A・オズボーン准教授およびカール・ベネディクト・フレイ博士との共同研究によると、10~20年後、日本の労働人口のうち約49%が就労している職業が、AI(人工知能)やロボットに代替可能だという予測結果が出ました。子どもたちが大人になる頃には、今ある多くの職業がAIやロボットに代わっているかもしれません。
 一方、AIやロボットが発展することによって、新しい仕事が生まれてくる可能性もあります。アメリカのITサービス大手「コグニザント」の報告書『21JobsoftheFuture:AGuidetoGetting andStayingEmployed overtheNext10Year』には、今後、生まれると思われる21の職業について解説しています。
 紹介されている職業の多くは、今の私たちの生活からは想像もつかないものです。しかし、今、ユーチューバーやプロゲーマーといった、ひと昔前なら想像できなかった職業が人気を集めています。同様に、近未来に誕生する新しい職業が、これからの子どもの心をつかむ可能性は十分にあり得ます。10年後の「将来なりたい職業」は、今とはまったく異なるものになっているのかもしれません。
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