「和食」がユネスコの無形文化遺産に【文化】

「和食」がユネスコの無形文化遺産に


【日本食の風評被害からの回復に加速】
「和食」がユネスコ(国連教育科学文化機関)の無形文化遺産に登録されました。
国内での無形文化遺産は能楽、歌舞伎、雅楽、京都祇園祭の山鉾行事などに次いで22件目の登録となります。
ユネスコの無形文化遺産とはどのような遺産を指すのでしょうか。
そして和食が登録された理由などを考えてみました。

「和食」がユネスコの無形文化遺産に - ユネスコの無形文化遺産とは -
 1972年にユネスコ総会で採択された「世界の文化遺産及び自然遺産の保護に関する条約」、いわゆる世界遺産は、遺跡や景観、建築物などの有形の文化財の保護と継承を目的としています。
昨年、富士山(富士山‐信仰の対象と芸術の源泉)が、日本で17件目の世界遺産として登録されたことはよく知られています。
 これに対して口承による伝統及び表現、芸能、社会的慣習、祭礼行事、伝統工芸技術など形のない文化遺産は、従来の枠組みで保護することは困難です。
このため、2003年にユネスコの第32回総会で「無形文化遺産の保護に関する条約」を採択し、2006年に条約が発効し、現在の締約国は155カ国に達しています。
 無形文化遺産保護条約は、無形文化遺産の保護はもちろん、緊急に保護する必要がある無形文化遺産の一覧表の作成、無形文化遺産基金による国際援助などを目的にしています。
その中に、人類の無形文化遺産の代表的な一覧表の作成があり、この一覧表に日本では22件目となる和食が登録されました。
 一昨年までに世界で257件が登録され、食に関する無形文化遺産としては2010年のフランス料理、メキシコの伝統料理など4件が登録されています。
「和食」がユネスコの無形文化遺産に -「和食;日本人の伝統的な食文化」として申請 -
 和食を無形文化遺産に登録しようという機運が盛り上がったのは、フランス料理などが無形文化財に登録されたことや、福島第一原発事故で風評被害を受けた日本の食材に対する信頼回復、東日本大震災からの復興をアピールする狙いもありました。
 2012年3月、有識者などがさまざまな角度から日本の食文化を検討し、「和食;日本人の伝統的な食文化」と題してユネスコに登録申請しました。
その骨子となるのは、「自然の尊重」という日本人の精神を体現した食に関する社会的習慣などで、これをさまざまな角度から紹介しています。
-「和食」は優れた日本の伝統的な食文化 -
 和食を無形文化遺産に登録しようという機運が盛り上がったのは、フランス料理などが無形文化財に登録されたことや、
福島第一原発事故で風評被害を受けた日本の食材に対する信頼回復、東日本大震災からの復興をアピールする狙いもありました。
 2012年3月、有識者などがさまざまな角度から日本の食文化を検討し、「和食;日本人の伝統的な食文化」と題してユネスコに登録申請しました。
その骨子となるのは、「自然の尊重」という日本人の精神を体現した食に関する社会的習慣などで、これをさまざまな角度から紹介しています。
●和食の多様性
 日本は南北に長く、四季折々の気候も異なります。このため、地域ごとに採取できる食材が異なり、調理法も大きく変化していきます。日本の多様な風土が、食材各々の持ち味を上手く引き出した地域色豊かな和食を生み出します。その代表が正月に食べるお雑煮です。地域ごとに餅の形状が丸か角かで異なり、焼くか煮るかでも大きな違いを見せます。
出汁の味付けや中に入れる具なども地域ごとに特色がみられます。和食は異なる食材の持ち味を最大限に尊重しています。

●健康的な食生活
 日本料理は動物性油脂を多用せず、米を主食に魚や野菜などを上手く利用しています。
味付けも味噌や醤油など発酵食品を使用し、全体としてバランスのとれた食生活を維持してきました。和食が長寿国日本を支えてきたともいえるでしょう。

●食の中に自然の美
 和食の魅力に盛り付けがあげられます。和食には料理に季節の草花があしらわれ、美しく盛り付けるといった表現法を磨いてきました。
さらに、季節にあった食器の使用や部屋のしつらえなどで、自然の美しさや季節の移ろいなども表現しています。

●和食の社会性
 日本人は古くから豊作大漁を願い、収穫の喜びを感謝の祭りとして祝ってきました。
祭りに振舞われる和食は、食の恵みをもたらす自然を尊重し、感謝するという精神性を育んできたのです。
家族全員で囲む食卓、町や村などの行事で振舞われる和食は、社会や家族の絆を深める役割も果たしています。
 先人が育んできた和食の素晴らしさは高く評価され、世界的に日本食ブームを引き起こしています。
和食が無形文化遺産として認められ、保護されるのは当然といえるでしょう。
- 「和食」が危なくなってきた -
 この和食が、国内の社会環境の変化や、海外からの影響などで将来を危惧する声が大きくなっています。
 第二次大戦後、高度成長期を迎えると日本人の食生活は急速に変化しました。
米に変わってパン食が増加し、肉や乳製品などの消費量も増えていきました。
この結果、輸入食糧が急増し、現在の日本の食料自給率は40%程度に落ち込んでいるのです。
 さらに、1970年以降、急速にファーストフード店、ファミレス、コンビニなどが全国展開し、何時でも好きな料理を口にすることができるようになりました。
また、四季折々の食材を提供してきた日本料理店も、冷凍技術や物流の発展であらゆる食材が一年中手に入ることから、料理に季節感が薄れてきたと指摘する声も聞かれます。
 和食の素晴らしさは、バランスのとれた健康食というだけではありません。
日本の伝統的な食文化、つまり自然の恵みである四季折々の食材を美しい容器に盛り、感謝しながら家族や仲間と共に味わうことの素晴らしさを、今回の無形文化遺産への登録を期にもう一度見直してみたいものです。
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