読解力を身につけよう【文化】

読解力を身につけよう


【文章を読み解く力で思考力、表現力を高める】
 2018年に実施された経済協力開発機構(OECD)の国際学習到達度調査(PISA)で、日本の高校生の読解力が数学や科学的応用力に比べて低下していることが分かりました。読解力はさまざまな分野の学習を進めるための「基礎体力」のようなものです。
 そもそも読解力とはどういう能力なのでしょうか。また読解力を高めるにはどうすればいいのでしょうか。今後教育現場でパソコンなどのデジタル機器の利用が増えていきますが、改めて読解力について考えてみました。

読解力を身につけよう - 日本は読解力で順位が8位から15位へ低下 -
 OECDが2000年から3年ごとに実施している15歳児の学習到達調査(PISA)は、知識や技能が実生活の様々な場面で、直面する課題にどの程度活用できるかを調査するものです。
 2018年は79カ国・地域から約60万人が参加し、日本では全国の高校1年生約6100人が調査対象となりました。出題分野は、「読解力」をはじめ、さまざまな場面で数学を活用する「数学的応用力」、科学的な考えをもって問題に関与する「科学的応用力」の3分野です。
 この調査で日本は読解力で、順位が前回(2015年)の8位から過去最低の15位に低下しました。数学的応用力も5位から6位、科学的応用力も2位から6位に下がりました。
 ちなみに3分野とも1位は中国(北京・上海・江蘇省・浙江省)で、2位はシンガポール、3位がマカオです。
読解力を身につけよう - 文章を理解し、熟考し、意見を論じる力を -
 昨今、「読解力の低い人が増えている」、「現代人の語彙力が低下している」という言葉をよく見聞きします。
 PISAの調査でも日本の高校生は理数系の問題では全体的に上位の成績を維持する一方、読解力の問題で弱点が見られました。そもそも読解力とはどういう能力でしょうか。
 OECDが実施しているPISAでは読解力を、「自らの目標を達成し、自らの知識と可能性を発展させ、効果的に社会に参加するために、書かれたテキストを理解し、利用し熟考する能力」と定義しています。
 PISAではテキストから情報を読み取るだけでなく、テキストに基づいて自分の意見を論じる能力を求めています。文章能力のみならず、図・グラフ・表などを読解する力も要求しています。
 つまり読解力とは、①テキストを読み正しく理解できる力②テキストの意味を熟考できる力③テキストに基づいて自分の意見を論じられる力ということになります。

- 危ぶまれる語彙力の低下と想像力の欠如 -
 日本人の読解力低下には、スマホの普及によるSNSの利用頻度が増えたことが原因の一つに挙げられています。ブログやツイッターなど短い文章をやり取りするSNSでは、独自の新しい言葉や短縮言葉が生まれており、日常生活での利用が進むと「語彙力の低下」を招くと専門家の多くが指摘しています。
 その結果、従来の正しい日本語が「わからない」ということになってしまいます。こうなると正しい日本語を使って行われる学校のテスト問題などでも、問題の意味を正確に理解できなくなり、適切な答えを返すことが難しくなって成績の低下を招くことになりかねません。
 皆さんは机に向かって文章を考えながら、手紙や日記を書くということはほとんどないのではないでしょうか。
 また、VR(仮想現実)やAR(拡張現実)に象徴されるように、人工的にビジュアル化が進んで「現代人の想像力が欠如している」ことも読解力低下につながっているといわれます。

- 読解力はコミュニケーション形成に必要な能力 -
 一般に読解力は「文章の言わんとするところを正確に理解する能力」といわれます。読解力が身についていないと本や文章の内容が頭に入ってこない、また他人の話している内容が正しく理解できないことになります。  
 読解力は学校や家族、友人など身近な人たちと良好な人間関係を築く際にも役立ちます。テストの中で文章から答えを導き出す問題や、字数制限の下で記述式の答えを求められる場合に、欠くことのできない能力と言えます。
 さらに、会話中に言葉として表われない相手の本心を読み取る力や、その場の雰囲気を読んでコミュニケーションを築くのに必要な能力といえます。自分の主張や提案したことに対して相手から質問されたとき、分かりやすく説明する場合にも読解力は欠かせません。
読解力を身につけよう - 要約力と思考力の向上が読解力を高める鍵 -
 すぐに実践できる読解力の鍛錬は、新聞や雑誌、小説、教科書などの文章を丁寧に読む習慣を身に付けることです。
 さらに長い文章を限られた字数で要約する練習が有効です。長い文章を短く要約するには、単語の意味や筆者の主張を正しく理解し、言葉を別の言葉に置き換えることが求められます。
 要約の際には、「筆者は何について述べているのか」、「結局どのようなことが言いたいのか」に着目すること。そして「主語と述語を正しく読み解くこと」が読解力の基本と言えます。
 要約力と並んで読解力を高めるのに欠かせないのが「思考力」です。思考力によって文章からイメージした内容と、自分の知識や経験とを比較して、意見を作り出したりします。文章を読み取って頭の中でイメージすることで、初めて「理解した」といえます。
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