深刻化する環境問題 - 日本の現状は - 【環境】

深刻化する環境問題 - 日本の現状は - 


 環境問題は20世紀後半から深刻化し、21世紀に入ってから地球規模の問題として人類の前に立ちはだかっています。このため、先進国首脳会議(サミット)はもとより、数々の国際会議で環境問題が取り上げられ、環境負荷の軽減に向けて世界中の人々が英知を結集しています。
 こうした中、環境省から日本の環境問題を考える上で貴重な原稿が寄せられました。日本が直面している環境問題の現状認識、問題解決のための資料として大いに活用して下さい。

深刻化する環境問題 - 日本の現状は -  - 人口の増加と環境 -
 私たちの行う生産・消費活動は、資源採取、温室効果ガスや廃棄物の排出などを通じて、環境に負荷を与えています。一般に、人口の増加に伴って生産・消費活動は増加し、環境に与える影響もこれに伴って増加していくものと考えられます。したがって、人口動向を地域別に見ていくことで、今後、どの地域で環境への影響が増大していくと見込まれるのかを推測するてがかりが得られます。
 2009年の世界人口は約68億人とされています。また今後、世界人口は、2011年には70億人に達し、2050年には90億人を突破すると見込まれています(図1)。人口を地域別に見ると、アジア地域が他地域に比べて大きな人口を占めており、特に、インドを含む南中央アジア地域と中国を含む東アジア地域の二地域が大きな人口を占めています(図2)。
 人口の成長率について見ると、これら二地域の人口動向には大きな違いが見られます。南中央アジアは今後も大きく人口が増える見込みですが、東アジアでは人口が2030年頃から減少に転じると予測されています(図2)。このことから、アジア地域においては、全般に環境への負荷の増加が懸念されますが、特に、南中央アジアにおいて、より長期にわたってそうした懸念が続くと考えられます。
 一方、日本の総人口は今後一貫して減少傾向を示すものと予測されており、平成17年の約1億2777万人をピークに減少率を高めながら年々減少し、2050年までに、総人口が1億人を割り込むと予測されています(図3)。人口の増減という観点から見れば、日本の総人口の減少は、一面では、環境への負荷を和らげる効果があると考えられますが、環境への影響については、生産・消費形態や産業構造、少子・高齢化の進展による生活パターンや生活水準の変化などさまざまな側面からとらえていく必要があります。
深刻化する環境問題 - 日本の現状は -  - 経済活動と環境 -
 人間が行う経済活動は、エネルギーの消費や資源の利用、温室効果ガスや廃棄物の排出など、さまざまな環境への負荷を伴いながら行われます。経済活動の大きさをみることで、どの地域で環境への負荷が強まっているかを把握するてがかりが得られます。
 各国の経済活動の規模を表す「国内総生産(GDP)」という指標によって世界の地域の経済活動を見てみると、アジア途上国において経済活動が増加してきている状況が見られます。アジア途上国の経済活動の規模は、2008年ごろにヨーロッパのEUを追い抜いたものと見られており、また、アメリカや日本といった主要な先進7カ国(G7)の経済活動の規模に接近してきています(図4)。
 これまでの経済発展が環境に負荷をかけつつ行われてきたことを考えると、こうした活発な経済成長を遂げるアジア途上国での環境対策の必要性は、今後より一層高まるものと言えます。
深刻化する環境問題 - 日本の現状は -  - 食料需要と環境への影響 -
 人間の生存を支える穀物の需要は、人口の増加に伴って高まります。穀物の需要は、近年の人口の増加に比例した需要増加、所得の向上に伴う畜産物などの需要増加を背景として1970年から2007年にかけて1.8倍に増加しました。 
 穀物の生産は、おおむね食料の需要に応じる形で増えてきています。農産物の生産量は、過去50年、収穫面積がほぼ横ばいとなっている一方で、単位面積当たりの収穫量(単収)を大幅に伸ばすことで、需要の増加に対応してきています。しかし、近年、単収が伸び悩む中で、主要穀物の主産地における干ばつや不作などの影響も加わり、生産量も伸び悩んでいます。穀物収穫面積の大幅な拡大が見込まれない中で、穀物単収の伸びの鈍化、地球温暖化や砂漠化の進行が今後の食料生産に影響を及ぼすことが懸念されます。
 魚介類の需要も世界的に増加しています。1人当たり需要量の増加に人口の増加が相まって、世界の魚介類の需要量は、1970年から2003年にかけて2倍に増加しており、特に中国では、405万トンから4756万トンへと11.7倍に増大しています。また、世界の年間1人当たり食用魚介類の需要量は、1970年の11.1kgから2003年の16.1kgへと1.5倍に増加しています。主要国・地域別同期間における同需要量をみると、アメリカでは1.4倍、EUでは1.3倍、中国では5.7倍に、それぞれ増加しています。
 水産資源の利用について、国際機関の調査によると、約半分が満限利用、4分の1が乱獲などによる過剰漁獲の状況にあります(図5)。今後、漁業は漁獲量の停滞が続くと見込まれることから、生産量の増加は、養殖業に頼らざるを得ない状況になると考えられます。一方で、世界の生産量の約4割を占め、世界最大の魚介類生産国である中国では、養殖のため、干潟の開発・転用などを伴う内水面養殖が増加していることにも留意が必要です。
深刻化する環境問題 - 日本の現状は -  - エネルギー利用と環境 -
 エネルギーの消費は、二酸化炭素の排出等を通じて環境への負荷に大きく関係しています。
 世界のエネルギー消費量(一次エネルギー)は、1971年から2007年の40年弱の間に2倍以上に増加しています(図6)。
 今後も新興国を中心に経済発展が見込まれる中で、エネルギー消費量の増加傾向は続くと考えられます。こうした増加傾向の中、石炭の需要が発電用需要の増大に牽引され今後大きく伸びていくと予想されています。石炭は、ほかのエネルギー源と比較して二酸化炭素排出量が大きいことを併せ考えると、化石燃料の利用の高度化等の取組が世界規模で積極的にされない場合、環境負荷が一層増大することが懸念されます。
 世界全体のエネルギー消費量が今後も増加していくことが見込まれる中、化石燃料に比べ二酸化炭素の排出が少ない再生可能エネルギーの重要性は増しています。世界の国々では、エネルギーの消費量や供給量に占める再生可能エネルギーの割合について目標を掲げ、同エネルギーの積極的な導入に向けた動きが出てきています。

- まとめ -
 人口の増加や経済活動の増加に伴って、食料の生産や消費、エネルギーの消費も進み、それにより環境への負荷が高まるという状況があることがわかりました。
 この他にも、人口増加に伴う食料需要の増加は、土地資源や水資源の需要増大につながります。また、途上国で顕著に見られる人口増加は都市への人口集中を加速させ、さまざまな環境問題を引き起こし、深刻化させるとともに開発に伴う生物多様性の損失も懸念されます。
 現在、日本や世界で行われている環境問題への取り組みは、これまで述べたような人間活動がもたらす環境への負荷に対して、人類がいかに環境を保全しながら発展することができるのかを追求する取り組みであるといえます。
(環境省企画調査室)
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