猛暑、豪雨、竜巻etc 今後も異常気象に見舞われるのか【環境】

猛暑、豪雨、竜巻etc 今後も異常気象に見舞われるのか


 日本はこのところ毎年のように猛暑やゲリラ豪雨、竜巻などの自然災害に襲われ、大きな被害が生じています。昨年夏は、全国的に猛暑となり高知の四万十市では、統計を開始した1946年以降で最高となる41.0℃を記録しました。また、7月に山口・島根豪雨、8月には秋田・岩手豪雨、9月には埼玉・千葉が竜巻に見舞われ、10月には台風26号に伴う豪雨で伊豆大島に土石流が発生し甚大な被害を受けました。
 2013年は、日本列島が「異常気象」に見舞われた一年でしたが、こうした自然の猛威は今後も続くのでしょうか。

猛暑、豪雨、竜巻etc 今後も異常気象に見舞われるのか - 「異常気象」と「極端気象」 -
 異常気象(unusual weather)とは、どのような気象状況を示しているのでしょう。一般には、過去の経験から大きく外れた現象で、人が一生の間でまれにしか経験しない現象をさします。大雨や強風などの激しい数時間の現象から、数カ月も続く干ばつ、極端な冷夏・暖冬なども含まれます。
 気象庁では「気温や降水量などの異常を判断する場合、原則として『ある場所(地域)・ある時期(週・月・季節)において、30年間に1回以下の頻度で発生する現象』」を異常気象と定義しています。
 しかし、近年では30年に1度どころか、毎年のように何らかの異常気象を経験するようになっています。このため、30年に1回という基準に限らず、社会的影響が大きい現象を「極端気象」と呼ぶこともあります。

- 猛烈な豪雨をよぶバックビルディング現象 -
 限られた狭い範囲に1時間で50㎜を超える大雨を集中豪雨と呼んでいます。
 昨年7月の山口・島根豪雨では、島根県津和野町で24時間の降水量がこの地点での観測史上1位となる381㎜に達しました。また、秋田・岩手豪雨では、秋田県角館市で観測史上最多となる1時間に108.5㎜の豪雨となり、気象庁は「直ちに命を守る行動を取って欲しい」と呼びかけました。
 気象庁は、このような猛烈な豪雨となったのは、積乱雲が連続して発生する「バックビルディング現象」が原因だと発表しました。通常、温かく湿った積乱雲は上昇し、冷たい下降気流と打ち消し合って激しい雨を降らせてやがて消えてしまいます。しかし、バックビルディング現象が起こると、雨を降らせて消えるはずの積乱雲が次々に押し寄せ、記録的な大雨につながります。
 丁度、ビルの背後に別のビルが並ぶように積乱雲が一列に並ぶため「バックビルディング現象」と呼んでいます。

猛暑、豪雨、竜巻etc 今後も異常気象に見舞われるのか - 伊豆大島では豪雨による土石流 -
 昨年11月の台風26号の影響で、伊豆大島では24時間雨量は824㎜にも達し、観測史上1位となる降水量を記録しました。一日で平年の10月の降水量の2倍を超える雨が降ったのです。このため、大規模な土石流が発生し、死者・行方不明合わせて39名という大きな被害を出しました。実は、気象庁は8月に甚大な被害を防ぐために「特別警報」の運用を開始しましたが、これが発令されず被害を大きくしたともいわれました。 昨年の異常気象は、さまざまな要因が複雑に絡み合って起こったと考えられています。しかし、最大の要因は地球温暖化にあるといえます。

- 地球温暖化と台風の関係 -
 地球温暖化と台風の関係は、現在のところ明確にはなっていません。 しかし、気象庁気象研究所や地球科学技術総合推進機構を中心とした研究グループは、21世紀末頃を想定した温暖化予測実験によると、熱帯低気圧の発生数は減少するものの、最大風速が45m/sを超えるような非常に強い熱帯低気圧の出現は、地球温暖化によって増加すると予測しています。

猛暑、豪雨、竜巻etc 今後も異常気象に見舞われるのか - ゲリラ豪雨や竜巻も積乱雲の仕業 -
 都市の中心部の温度が、郊外に比べて異常に高くなるヒートアイランド現象でもゲリラ豪雨が起こります。ゲリラ豪雨というのは正式な気象用語ではありませんが、局所的に大雨を降らす雨をさしています。
 ヒートアイランド現象とは、都市の中心部の地表がアスファルトやコンクリートで覆われ、しかも樹木も少ないために熱が逃げることなく、都市部の上空に放出されて局所的に気温の上昇を招く現象です。気温の等値線を記入すると、都市の上空に島のような形状が現れることからヒートアイランドと呼んでいます。都市部と周辺部との温度差は2~5℃以上あることもあります。
 通常、低気圧の接近による雨は、徐々に雲行きが怪しくなって降りますが、都市部を中心としたゲリラ豪雨は、短時間に集中して大雨となるのが特徴です。このため、予報が遅れることがあります。
 竜巻も、同様に積乱雲が原因です。竜巻が温かい都市部と冷たい周辺部の境に多く起こるのは、その気温差によって積乱雲が発生しやすいからです。そして「スーパーセル」という大きな積乱雲が渦を巻くことで竜巻が起こります。
 昨年、埼玉県越谷市や千葉県野田市を襲った竜巻は、突風の強さを示す藤田スケールで、上から4番目の「F2」(約7秒間の平均風速50~69m/s)に相当する強烈なもので、移動距離は観測史上6位の約19㎞にも及びました。 ちなみに、日本最大級の竜巻は一昨年5月に茨城県つくば市などで発生した「F3」で、移動距離は歴代3位の約21㎞にも達しました。

- 大気の移動で気象の変化 -
 地球では、太陽に近い赤道付近が一番熱く、離れた北極や南極では熱があまり当たらないため寒くなっています。このままでは赤道付近は暑くなり続け、北極や南極では気温が下がる一方です。
 しかし、現実には赤道付近は35℃程度、北極や南極ではマイナス30℃前後に保たれています。これは、大気が移動して熱のやり取りを行って地球全体のバランスを保っているからです。この大気の移動、つまり熱交換によって気象が変化しているのです。
 温暖化が進むとこのバランスが崩れ、気温の変動差が大きくなります。この結果、熱交換時に温度の差が大きくなり、予期しない要素が働いて異常気象が起こると考えられています。

- 地球温暖化は地球規模の問題 -
 地球温暖化は、自然災害を引き起こすだけでなく、生態系にも大きな影響を及ぼします。
 多くの動物は、居住地の移動などである程度は気温の上昇に順応できますが、植物は移動することができません。温度の上昇に耐えられなくなった植物は枯れてしまい、そこに寄生していた微生物なども死滅してしまいます。また、温暖化で北極や南極の氷が解け、海面が上昇することで海岸線の生態系も激変することが予測されます。
 地球温暖化は、異常気象といった気象状況の変化だけでなく、地球全体の生態系などさまざまな分野に大きな影響を及ぼします。昨年、世界気象機関と国連環境計画が設置した「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」は、世界中で相次ぐ干ばつや猛暑、豪雨、竜巻などは温暖化がもたらす異変である、と気候変動の危機を強く訴えています。


【地球の自然現象を監視する気象庁】
猛暑、豪雨、竜巻etc 今後も異常気象に見舞われるのか - 気象予報以外にもさまざまな任務 -
 気象庁は、1875年(明治8年)に東京気象台として発足以来、現在まで1世紀以上にわたって自然を監視・予測することで、国民の生命や財産を自然災害から守ってきました。現在は、国土交通省の外局として、全国で約5400人の職員が自然現象を正確に把握するため、24時間体制で気象の観測を行っています。
 気象庁の任務は、毎日の天気予報のほか、台風や大雨、地震火山、気候変動などを正確に把握することです。このため、地上気象観測、衛星観測、高層気象観測、レーダー観測、海洋気象観測などを行っています。これらのデータは、世界各国のデータとともにスーパーコンピュータに納められ、気象の解析・予測などを行っています。
 私たちが日常生活の中で、一番関心があるのが天気予報です。全国各地に設置した観測装置などで集められたデータをスーパーコンピュータが計算し、その結果をもとに予報官が日々の天気予報や警報・注意報などの防災気象情報を発表しています。台風や大雨、地震火山活動の予報も、集められたデータを解析し、防災情報を発表しています。

猛暑、豪雨、竜巻etc 今後も異常気象に見舞われるのか - 気象庁幹部職員を養成する気象大学校 -
 気象大学校は大正11年、中央気象台(現気象庁)附属測候技術官養成所として設立されました。現在、国土交通省所管の省庁大学校として、気象庁の幹部候補生を養成しています。 学生は気象に関する専門知識、技術などについて4年間学び、卒業後は学士(理学)の学位が授与され、気象庁や全国各地の気象台で研究、観測、調査、予報などの気象業務につきます。 
 気象大学校の定員は15名程度で、毎年10倍前後の高い競争率となっています。気象大学校への入学は、気象庁職員(国家公務員)として採用されるため、入学金や授業料は必要なく、給与や諸手当が支給されます。

- 「気象予報士」になるためには -
 気象予報士制度は、1993年の気象業務法の改正によって導入されました。
 近年、国民生活の多様化や情報通信時代の到来などによって、気象情報に対する国民の期待やニーズが高まっています。これらすべてに気象庁が対応することは困難です。このため気象庁から提供される数値予報資料など高度な予想データを、的確に利用できる技術者の確保を目ざして創設されました。この結果、気象予報を行う事業者は、気象予報士に気象予報を行わせることが義務付けられました。
 気象予報士になるには、国家試験として一般財団法人気象業務支援センターが年2回実施する「気象予報士試験」に合格し、気象庁長官の登録を受けることが必要です。気象予報士試験では、技術革新に対応できる気象学の基礎的知識、各種データを的確に処理し、科学的に予測を行う能力などが問われます。
 1994年の第1回の試験以来、昨年1月までに39回の気象予報士試験が実施され、8993人の合格者が出ています。そして、昨年の6月現在、8774人が気象予報士として登録されています。
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