太陽の爆発現象「太陽フレア」【環境】

太陽の爆発現象「太陽フレア」


【GPS誤差や停電など地球に多大な影響】
 太陽の表面で起こる爆発は太陽フレアと呼ばれ、太陽の黒点のあたりで起こる現象です。昨年9月には、太陽フレアの規模を示す5段階の等級で最大級の「Xクラス」の爆発が起き、地球への影響が心配されました。太陽フレアとはどういう現象なのか、地球にどのような影響を与えるのでしょうか。

太陽の爆発現象「太陽フレア」 - 太陽フレアはどのように起こる? -
 太陽フレアとは、太陽の表面で起きる爆発現象のことで、その形がフレア(火炎)に似ていることから太陽フレアと名付けられています。太陽フレアの仕組みはまだ完全に解明されていませんが、太陽が活動中に蓄えた磁気エネルギーが、いくつかの条件下で熱エネルギーや運動エネルギーに変換されて起こるという説が有力視されています。
 太陽フレアは、強い磁力を持つ黒点の活動と大きく関係しています。太陽の表面温度が約6000℃なのに対し、黒点の温度は約4000℃と周りの温度より低いために黒く見えます。この比較的温度が低い黒点付近で急激に温度が上昇し、爆発して明るく輝く現象が太陽フレアです。爆発後、数分で最も明るくなり、その後ゆっくりと暗くなります。明るく輝く時間は短いもので数分、長いものでは数時間続きます。大規模なフレアでは、白色光でも観測されることがあり、これを白色フレアと呼んでいます。
 太陽の活動は11年周期で増減し、太陽の活動が活発になれば黒点数も増えて行きます。太陽の黒点周期の最大期には、大黒点や黒点群の近くで毎日のようにフレアが起こっています。フレアは小規模なものから大規模なものまでさまざまで、小規模なものは1日3回程度起きています。
太陽の爆発現象「太陽フレア」 - 太陽フレアが地球に及ぼす影響 -
 太陽フレアで放出されるエネルギーは、広島に投下された原爆の約1億から1000億倍もの莫大なものです。この莫大なエネルギーは、太陽が活動中に蓄えた磁気エネルギーが解放されて生じたと考えられています。
 太陽フレアが発生すると、強力なX線や紫外線のほか、「コロナガス(主としてプラズマ)」と呼ばれる電気を帯びた高エネルギー粒子を放出します。太陽フレアで発生したX線や高エネルギー粒子は、8分から1~2日後に地球に到着し、電離層や地磁気を乱して通信障害などが起こります。この現象を1935年にアメリカの物理学者J.デリンジャーが発見したため、「デリンジャー現象」と呼んでいます。また、極域の電離圏が乱されることでオーロラの活動が活発になります。フレアの規模が大きい場合は、北海道の北部でもオーロラが観測されることがあります。
 このように太陽フレアが発生すると、各種通信機器やGPS(全地球測位システム)の誤差の拡大、人工衛星搭載機器の故障、送電線への影響による大規模停電などのトラブルが心配されています。

- 昨年9月のフレアの規模は「Xクラス」 -
 情報通信研究機構は昨年9月7日、太陽フレアが6日に発生したと発表しました。太陽フレアの規模は、放出するX線の強度により5段階(小さい方からA、B、C、M、X)に分類されます。9月6日のフレアは5段階の等級で最大級の「Xクラス」で、2006年12月以来の大規模なフレアでした。アメリカの気象衛星は、フレアによって通常の1000倍以上のX線を観測しました。また、2日後の8日には磁気を帯びた高エネルギー粒子も地球に到達しました。
 9月7日にも再び「Xクラス」のフレアを観測しました。しかし、X線の強さは6日のフレアの7分の1程度でした。これらのフレアによって通信機器などへの影響が心配されましたが、大きなトラブルは報告されていません。
 しかし、過去には太陽フレアで大きな被害が発生しています。1989年3月に発生した大規模な太陽フレアで、カナダのケベック電力公社の電力網が破壊され、9時間にわたる停電で600万人以上の人が影響を受けました。アメリカでは気象衛星との通信が途絶え、NASAでも200以上の電子部品に異常が起こりました。テキサス州やフロリダ州などの低緯度地域でもオーロラが観測されました。こうした事態を受け、アメリカでは巨大なフレアが発生した場合の対応や被害後の復旧手順などを策定しています。
 日本でも2000年7月、宇宙X線観測衛星「あすか」が太陽フレアの影響で制御不能になり、翌年3月に大気圏に突入して消滅しました。
太陽の爆発現象「太陽フレア」 - 太陽フレアに対する対策 -
 2006年に打ち上げられた日本の太陽観測衛星「ひので」は、世界最高レベルの3つの望遠鏡を備え、太陽の磁場や温度などの変化を高い精度で観測しています。昨年9月のフレアも、「ひので」のX線観測によって爆発の瞬間を捉え、その時の動画が公開されています。日本の人工衛星も太陽の活動を観測し続けることで、太陽フレアの仕組みの解明に取り組んでいます。
 地球上では、地球が磁場や大気によって守られているため、人体への影響は殆どありません。ただ、大きな太陽フレアが起こると、磁場が乱されるなど地球のバリアが弱まり、すでに紹介したような通信障害、発電所の被害で起こる停電、人工衛星の故障によるGPSの機能停止などが考えられます。
 人間の力で太陽フレアを防ぐことは出来ません。私たちが出来る対策としては、パソコンで作業中のデータの保存や作業の停止、GPSを使用しなければならない所への移動を控えることなどです。しかし、太陽フレアの仕組みやフレアが及ぼす影響について理解していると、太陽フレアが起こっても慌てることなく復旧するまで冷静に待機することができるでしょう。
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